宮藤官九郎は劇作家としても活躍

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 今冬クールの連続ドラマの“書き手”に、今までにない特徴があるという。それは劇作家が多く起用されていることだ。いったい今なぜ、劇作家なのか──。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 2月に入ってようやくすべての冬ドラマが出そろいました。刑事、弁護士、営業ウーマン、派遣社員、塾講師など、さまざまな職業の一話完結ドラマが大半を占める中、明らかに異色の作品がいくつか見られます。

 なかでも注目は、特撮オタクの悲喜こもごもを描いた『トクサツガガガ』(NHK)、番組制作会社の新人ADが“妖精のおじさん”と遭遇する『私のおじさん〜WATAOJI〜』(テレビ朝日系)、ゾンビがきっかけとなって人間の本質があぶり出される『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(NHK)、ゲーマー男女のルームシェア生活を描く『ゆうべはお楽しみでしたね』(TBS系)の4作。

◆劇作家の脚本で“新感覚ドラマ”に

 いずれもコメディなのですが、特筆すべきは劇作家が脚本を手掛けていること。

『トクサツガガガ』は劇団「ロリータ男爵」主宰の田辺茂範さん(44歳)、『私のおじさん』は演劇ユニット「艶∞ポリス」主宰の岸本鮎佳さん(34歳)、『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』は劇団「MCR」主宰の櫻井智也さん(45歳)、『ゆうべはお楽しみでしたね』は劇団「ポップンマッシュルームチキン野郎」主宰の吹原幸太さん(36歳)。ふだん劇作家の起用は1クール1〜2人程度だけに、制作サイドの狙いが見えるのです。

 劇作家の主な強みは、「会話劇が得意」「キャラクターの描き分けが巧み」「発想が脚本家とは異なる」「笑いの手数が多く種類も豊富」「演出も手掛けている人が多い」こと。連ドラや映画が主戦場の脚本家が手がける作品と差別化しやすく、いわゆる“新感覚ドラマ”になりやすいところがあります。

 たとえば、『トクサツガガガ』はヒロイン・仲村叶(小芝風花)の突き抜けた特撮オタクぶり、『私のおじさん』は“妖精のおじさん”(遠藤憲一)のバカバカしさ、『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』はユーチューバー・尾崎乏しい(川島潤哉)によるゾンビリポート、『ゆうべはお楽しみでしたね』はおかもとみやこ(本田翼)とさつきたくみ(岡山天音)のやり取りから漂う脱力感。前述したように、職業モノの一話完結ドラマが大半を占める中、4作が際立ってユニークに見えるのは、彼ら劇作家の腕によるところが大きいのです。

◆「20〜30代の若手劇作家を発掘しよう」の動き

 今冬スタートのドラマで「劇作家」と言えば、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK)の脚本を手掛ける宮藤官九郎さん(48歳)を思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。宮藤さんは、現在こそ映像作品を手掛ける脚本家のイメージが強いものの、もともとは所属先の劇団「大人計画」を筆頭に多くの舞台を手掛ける劇作家です。

 現在ドラマの脚本家は50〜60代のベテランが中心で、たびたび高齢化が叫ばれていますが、各局に若手をじっくり育成する余裕はなく、「実力派の劇作家を発掘したい」のが本音。今回の4人は実績もセンスも十分だけに、宮藤さんのように国民的ドラマの脚本を手掛ける可能性を秘めています。

 ただ、劇作家と脚本家には、それぞれ長所と短所があり、上下や優劣はありません。一般的には「より多くの人々に見てもらえてお金が稼げる脚本家のほうが上ではないか」と思われがちですが、「自分のやりたいものを作・演出できる演劇のほうがいい」「局やプロデューサーの意向に基づいて書くドラマは物足りない」という劇作家も少なくないのです。

 2017年に放送されたドラマ『下北沢ダイハード』(テレビ東京系)は、「11人の劇作家が1話ずつ脚本を担当する」という斬新な試みで大きな注目を集め、ドラマ業界での評判も上々でした。その他でも、「20〜30代の若手劇作家を発掘しよう」という動きがいくつか見られるだけに、今冬の4人はもちろん今後も劇作家の起用は続いていくでしょう。

 数年後、ドラマの脚本家として宮藤さんと比べられるほどの劇作家が誕生していても不思議ではないのです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。