IT企業「ショーケース・ティービー」に入社した谷田成吾さん【写真:編集部】

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ドラフト指名漏れで引退、IT企業「ショーケース・ティービー」に入社

 昨秋のプロ野球ドラフト会議で指名漏れし、野球を引退した前四国IL徳島の谷田成吾さんが“ITマン”に転身したことが分かった。東京・六本木に本社を置くIT企業「ショーケース・ティービー」に1月から入社。現役時代は「由伸2世」の異名で脚光を浴びたスラッガーは「次の世界では『谷田成吾』として認知してもらえるように」と第二の人生の決意を語った。

 神宮の杜を沸かせたスラッガーが、六本木から第二の人生をスタートさせた。谷田さんは今月からITサービスの構築を手掛ける「ショーケース・ティービー」に入社。スーツにネクタイを締め、仕事に取り組んでいるが、数字と格闘することが多い。「今は覚えることだらけ。打率以上の計算はする機会がなかったので……。でも、充実して仕事させていただいています」と冗談めかして笑った。

「指名がなければ引退」と決めた昨秋ドラフト会議で名前を呼ばれず、潔くユニホームを脱いだ。就職活動を始めると、知名度も手伝い、20社以上から話をもらった。保険、マスコミ、メーカー……。活動を進める中、知人を介して慶応高、慶大の先輩で甲子園出場経験もある同社執行役員の福山敦士さんと出会い、「一番早く挑戦できる環境がある」と魅力を感じ、入社を決めた。

 挑戦を続けた野球人生をビジネスに生かす。慶応高、慶大、JX-ENEOSと全てのカテゴリーで日本代表に選ばれ、東京六大学通算15本塁打を放った大学時代はドラフトでまさかの指名漏れ。2年後のプロ入りを目指した社会人でも声がかからず、3年目の昨年は正社員の待遇を捨て、名門JX-ENEOSを退社。クラウドファンディングの力も借り、米マイナーのトライアウトに挑戦した。

 夢が叶いはしなかったが、「プロ野球選手になる」という目標に最大限の情熱を注ぎ、時には批判も受けながら、誰よりも努力してきた自負がある。「最後までプロ野球を目指して、主体的にやり抜いてきた。目標を立てて、課題を認識し、練習に取り組み、チェックするというPDCAのサイクルは野球にも近い。その経験をビジネスに活かして、会社に貢献したい」と思い描いた。

目指すは「由伸2世」との“決別”「“プロビジネスマン”として活躍を」

 慶大時代の恩師だった大久保秀昭監督からは「自分で決めた道。しっかりと頑張れ」とエールを受け、同級生だった山本泰寛(現巨人)、横尾俊建(現日本ハム)を始め、かつて一緒にプレーした旧友たちにはプロ野球の世界で頑張っている。「彼らが高い位置にいてくれることで自分たちも頑張ろうと思える。追いつけ追い越せでやってきたい」と存在を刺激に変えるつもりだ。

 野球と出会ってから、初めて迎えたバットを振らない1月。しかし、気持ちはもう社会人に切り替わっている。「野球で言えば自主練と一緒」と10時の始業の2時間近く前から出社し、自主的に勉強している。現役時代は「由伸2世」と呼ばれ、必要以上の注目を浴びた。その名前で声を社内で声をかけてもらうこともあるというが、目指すのは一日も早い「由伸2世」との“決別”だ。

「まずは野球をしている間、応援していただいた方に『今まで応援してきて良かった』と思われるような人間になりたい。そのためにもビジネスで成功し、名の通る人間にならないと。次の世界では『由伸2世』ではなく『谷田成吾』として認知してもらえるように。野球をやっていたことが忘れられ、上書きされるくらいに“プロビジネスマン”の活躍していきたいと思っています」

 20代で起業し、ビジネス界で成果を出してきた福山さんは人事担当も務めており、将来的な独立も視野に一流のビジネスマンになるための薫陶を受けている。常に「ドラフト候補」として注目を浴び、近年のアマ球界では「日本一有名なアマ野球選手」だったと言っても過言ではない、かつての背番号24。ビジネスという新たなバッターボックスに立ち、唯一無二のアーチを描く。(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)