全州の韓屋マウルなどで行われているビビンパ調理実習の完成品

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ここ数年、韓国の南西部にある全羅北道(チョルラプッド)を何度か旅する機会に恵まれた。

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全羅北道という地名にピンと来なくても、その道庁所在地・全州(チョンジュ)なら聞き覚えがあるのではないだろうか?

そう、去年の春放送された『孤独のグルメ』韓国出張編で、五郎さんが最初に食事した街だ。

日本からの旅行者の多くが首都ソウルや、西日本からアクセスのよい第2の都市・釜山をリピートしているが、全州はこの2都市以外で初めて日本人旅行者の誘致に成功した地方都市といってよい。

これには、ソウルと全州を往復する外国人専用無料シャトルバス(現在は有料)を走らせたり、ビビンパやマッコリといった特徴的な飲食をアピールしたりしたことが背景にあるそうだ。

地方旅行デビューにうってつけの全州を中心とした全羅北道の魅力を、今回から数回に渡ってお伝えしていこう。

全州入門は韓屋マウル(伝統家屋街)散歩から

まだ日のあるうちに全州に着いたら、韓屋(ハノン)マウルを目指そう。

昔ながらの伝統家屋が残っているエリアだが、飲食店や民泊などにリノベーションされた建物が多い。

日本で言えば、金沢市のひがし茶屋街、倉敷市の美観地区、川越市の蔵造りの街並みなどの韓国版だと思えばよい。

韓国の地方都市の観光スポットのなかでももっとも集客に成功したところで、土日は大変混むのでできれば平日に訪問したい。

気に入ったデザインのカフェやレストランがあったら、ふらっと入っても楽しいが、それではものたりないという人は、文化体験スポットを利用するといい。

ビビンパやマッコリづくり体験、伝統工芸体験などメニューは多彩だが、いちばん気軽でおすすめなのは『韓方文化館』の体質診断だ。

PC画面の設問に答えるだけで、四象と呼ばれる4体質(太陽人、太陰人、少陽人、少陰人)のうち、自分がどれに当たるか教えてくれる。

診断後は、それぞれの体質に合った韓方(漢方)薬剤の入った足湯が利用できる。

料金はPC四象診断+足湯で10000ウォン(約1000ウォン)。

全羅北道全州市完山区豊南洞3街57
月〜金9:30〜19:00、土日祝9:00〜22:00 無休 TEL:065 226 1080

南部市場の屋上にある“こだわり”商店街

韓屋マウルの西寄りにある慶基殿(キョンギジョン)と殿洞聖堂(ジョンドンソンダン)の間の道を西へ5分ほど進むと、全州のシンボルである豊南門(プンナンムン)が見えてくる。その南側にあるのが南部市場だ。

日本の地方都市にシャッター商店街が多いように、韓国の地方市場もさびれているところが少なくないのだが、この市場は全州が観光地として成功していることもあり、活気があるほうだ。土日ともなると、人気飲食店には長い行列ができるという。

市場の雑居ビル屋上にある『青年モール』は、そこにさらに若者を呼び込もうと、2012年にオープンした商業施設。

アクセサリーショップやカフェ、バーなどがざっと30軒並んでいる。いずれも大量生産品は扱わず、手づくり感のあるクラフト商品や、親環境(環境にやさしい)商品を扱っているこだわりの店ばかりだ。

『孤独のグルメ』で五郎さんが食べた定食

全羅道は韓国有数の穀倉地帯と西側の海が産する豊かな食材を使った料理が発達したところで、その北側(全羅北道)の中心都市・全州はビビンパの故郷として知られている。

『孤独のグルメ』韓国出張編に登場した『土房(トバン)』は、そんな全州の食の豊かさをたったの1万ウォン(約1000円)で確かめられる店だ。

この日頼んだのは、9000ウォンのテジプルコギ・ペクパン(豚焼肉定食/注文は2人前から)。もちろん、五郎さんが食べたセルフビビンパ(ボウルに入ったごはんに、副菜の総菜をのせて混ぜて食べる)も体験できるし、運がよければ韓国式納豆汁チョングッジャン(日替わりでキムチチゲのときも)も味わえる。

『土房』のチョングッジャン(韓国式納豆汁)は、韓国人に言わせればあっさり味だとか

驚かされるのはその品数の多さ。

豚焼肉定食という言葉から日本人がイメージするのは、豚肉とキャベツ、ごはんと汁物に小鉢の漬物くらいだが、この店では豚焼肉とごはん以外に、汁物(チョングッジャン)、3種のナムル、白菜キムチ、白キムチ(唐辛子を使わない白菜漬け)、目玉焼き、オデン(魚のすり身の煮物)、サンチュなどの葉野菜、生ニンニクなどが並び、どれが主菜なのかわからなくなるほどだった。

おまけに食後には口直しのヌルンジ(おこげの着いた鍋にお湯を注ぎ、お茶のように飲む)も出てくる。

コチュジャン系のタレで炒められた豚焼肉は絶妙な甘辛さで、これだけでもごはんが進む。韓国の人のようにセルフビビンパにしなくても、サンチュに豚焼肉をのせ、好きなキムチやナムルや味噌を加えて巻けば、いくとおりもの味の変化が楽しめる。

同席した韓国の人の話によれば、1万ウォンでこれくらいの総菜が並ぶのは、韓国、とくに全州では珍しくないとのこと。全羅北道の食、恐るべしである。

なお、『孤独のグルメ』で五郎さんが食べていたのは6000ウォンのカジョンシク・ペクパン(家庭料理風日替わり定食)。テジプルコギ・ペクパンをコンパクトにしたものだが、全州であれこれ食べ歩きしたい人には、これくらいのボリュームでちょうどいいかもしれない。

番組登場以来、日本からの団体観光客がたびたびやってくるので、予約は当面受け付けていないそうだが、午前の開店まもなくの時間や夕方の開始時間前に少し並ぶ覚悟で行けば、利用できる可能性は高そうだ。

全州市完山区平和洞1街727-1
10:00〜15:00、17:00〜21:30 日曜定休 TEL:065 226 1080