テレビ東京の1月クール木ドラ25枠(毎週木曜深夜1時)にてスタートした、光石研主演「デザイナー 渋井直人の休日」。俳優生活40年にして、今作が連続ドラマ単独初主演となる光石が、主人公の中年デザイナー・渋井直人を可笑しくもキュートに演じている。

原作は渋谷直角の最新作で、「otona MUSE」(宝島社)にて連載中の同名コミックを実写化したもの。渋井直人はおしゃれな日常を過ごしながらも、次々に現れるヒロインたちに振り回されたり仕事でも怒鳴られたりと、冴えない場面が多く、ちょっぴりイタくて、でもすこぶる愛らしい中年おじさんだ。

おしゃれなBGM、こだわりのインテリア、黒いダッフルコートに赤いマフラーを巻いて軽やかに散歩にでかける渋井(光石)。行きつけの古書店兼カフェでマスターと高尚なおしゃべり。しかし気取ったところもなく、人懐っこく、周りの人にも気を遣う。その実、女の子が自分のことを「特別な存在」なんて言った日には、会う前にフリスクをむせるほど一気食い。そんな主人公に何の違和感もなく溶け込んだ等身大の光石の演技は、自然で愛嬌たっぷり。そして「先週と今日の自分、殺してぇ〜」などと、時折挟まれる心の声がクスクス笑えて愛らしい。このドラマ、見ていてとにかく心地がよい。

また、渋井の新人アシスタント・杉浦ヒロシを演じる岡山天音とのやりとりも楽しい。杉浦の役柄は、どこか間の抜けたイマドキの若者といったところ。でも素直。ある意味空気を読まない正直な発言と、それにドギマギする光石との絶妙の間でのやりとりは、何とも言えないテンポ感で流れていく。放送前の会見でも、光石が「岡山くんとはすごくやりやすい。」と発言していたように、2人の相性はバッチリだ。(以下ネタバレあり)


25日放送の第2話では、杉浦(岡山天音)と編集担当の高田(夏帆)、ライターの甲本(柳英里紗)との飲みの席で、杉浦から料理がうまいと褒められ、まんざらでもない渋井。後日自宅で手料理を振る舞うことに。「大したもんできないよ、ほんっと普通だから」と言いながら、アクアパッツァにオックステール煮込み、タルトショコラまで、朝4時から仕込みを頑張っちゃうのだ。JAZZのレコードをかけ、ベッドのシーツまで替えて準備万端。と、そこに高田から電話が。飼い猫が逃げ出したので行けない。「猫なんて放っとけば帰ってくんだろう!」と半べそをかくのだった。

そんな傷心の渋井は、テレビから流れてきた欅坂46『アンビバレント』が妙に心に響く。次の日、CDショップで渡辺梨加のポップを見て「へぇ〜こんな可愛い子いるんだ」「へぇ〜!LARMEとRayのモデルもやってる!」と目をつけ、「僕は今日から欅坂と渡辺梨加の隠れファンになろうっと」と決心。さらに渡辺梨加の写真集を発見し、「饒舌な眼差し…、ほんっと饒舌だな〜。あぁー、見たいっ!きっと中、もっと饒舌なんだろうな〜」と心躍らせる。関連書籍をすべて買い込もうとしているところを、編集部の高田(夏帆)と仁藤(里々佳)に目撃され、「資料!資料、資料…」と言い訳がましく20回以上も連呼し、怪しい目で見られてしまう。しかし、そんなふうにファンであることをごまかすのは「渡辺梨加に失礼じゃないか」と思い直し、「本当は僕、僕純粋に、欅坂のこと、渡辺梨加のこと、好きになっちゃったんです」とわざわざ説明。ドン引きされた渋井は「完全に説明の仕方間違えた、死にてぇ〜〜」と嘆くのだった。

渡辺梨加は、「欅坂46がドラマに取り上げられるなんてとても嬉しいです。」とコメントしている。そして、本人役で本ドラマへの出演が発表されており、今後登場するとみられる。「個人でドラマに出させて頂くのは初めてなので、とても緊張しています。自分の役をやるのも不思議な気分ですが、精一杯頑張ります!」と意気込むが、果たしてどんな風に登場するのか今から楽しみでならない。

31日深夜放送の第3話では、資料や仕事の道具を探しに買い物にでた渋井が、路上で職務質問をされてしまう。“自称”デザイナーに、出てくるナイフや人体模型、欅坂46のグッズなど…渋井の怪しさは増すばかり…。落ち込む渋井にさらに追い打ちをかけるように、以前仕事を担当したシンガーソングライター・京川夢子(池田エライザ)のアルバムジャケットデザインのパクリ疑惑が浮上する、という内容。

SNS上では、「このドラマ!笑い死にしそう」「渋井直人の休日、声出して笑ったわ」「30分があっという間」と、軒並み「面白い」という意見がズラリ。「女の子にフラれた勢いでアイドルの写真集買っちゃうとか…わかります」「妙に共感できる」「渋井直人が面白すぎる 自分を見てるようで(笑)」と共感する声も多数上がっている。

今後も豪華ヒロインたちが登場しながら、光石研を振り回してゆく。岡山が光石のことを「とにかく引き出しがすごい」と話すように、褒められて調子にのる渋井、張り切る渋井、窮地に立たされる渋井、玉砕して嘆く渋井、恥ずかしさにいたたまれない渋井・・・光石が見せる表情だけでも見ていて楽しい気持ちにさせてくれる「デザイナー 渋井直人の休日」。構えずに、ふらっと渋井直人の休日を覗いてみてはいかがだろうか。

ⓒ渋谷直角/宝島社  ⓒ「デザイナー 渋井直人の休日」製作委員会