終末期や介護についてどのように考えていますか?(写真:Mills/PIXTA)

長寿化が進み、「人生100年時代」を目前に控えた今日、親や自分の介護・終末期について考える機会も増えているのではないでしょうか。本稿では、明治安田生活福祉研究所の「人生100年時代に向けた意識調査」から、40〜64歳の男女が抱く介護(認知症)と終末期についての意識と実態を紹介します。

人生100年時代の不安は何か

人生を100年とすると、その半ばを迎えた人はこの先、何に不安を感じているのでしょうか。40〜64歳の男女に、今後、長い人生を生きていくうえでの不安をたずねたところ、「老後の生活資金の確保」と「健康の維持」に強い不安を感じていることがわかりました。

最も多かった回答は「老後の生活資金の確保」で、男性約6割・女性6割強〜7割強となっています。次に不安と感じているのは「健康の維持」で、男女ともに年齢が上がるにつれてその割合が増加しています(男性40代前半42.8%・60代前半64.0%、女性40代前半47.9%・60代前半72.4%)。

そこで、40〜64歳の男女に、何歳まで介護サービスを利用せず、日常を特に制限なく生活できると思うかをたずねたところ、配偶者がいる人は男女ともに「75〜79歳」の割合が最も高く、3割弱を占めています。配偶者がいない人は男女ともに「69歳まで」「70〜74歳」「75〜79歳」が同水準でそれぞれ2割強〜3割弱となっており、「69歳まで」の割合が配偶者のいる人よりも高くなっています。

なお、2018年3月に厚生労働省から発表された「健康寿命」(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、男性72.14年・女性74.79年でしたが、今回の当研究所の調査によれば、5割強〜6割強の人が75歳以上でも制限なく生活できると考えています。


2012年時点の推計によれば、認知症の人は462万人で65歳以上人口の15%にあたります。また、正常と認知症の間に位置し認知症の前段階と考えられている「軽度認知障害」の人は約400万人で、65歳以上人口の13%となっています(出所:内閣府政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」)。高齢化の進展とともに認知症の人の割合は今後さらに高くなるともいわれています。

40〜64歳の男女に、自分が認知症になる不安がどの程度あるかを親への介護経験(本調査では、自分自身が主に身体介助している〈したことがある〉経験としています)の有無別にたずねたところ、介護経験の有無に関係なく、女性のほうが男性より不安に思う割合(「かなり不安がある」+「どちらかと言えば不安がある」)は高くなっています。

介護が身近かどうかによる違い

不安に思う割合は「介護が必要な親を介護している(していた)」が男性69.0%・女性76.1%で、「介護が必要な親がいる(いた)が、介護した経験はない」の場合と男女ともに同水準で、不安を感じることに介護経験による差はほとんどありません。

一方、「介護が必要な親がいない(いなかった)ため、介護した経験はない」では男性54.8%・女性67.1%でした。介護が必要な親がいる(いた)場合のほうが介護を身近に感じているためか、いない(いなかった)場合よりも不安が高いことがわかります。


認知症になることへの不安を感じている人は多いですが、それでは認知症になった時に自分の介護をいったい誰に期待しているのでしょうか。40〜64歳の男女に、自分が認知症になった場合、家族・親族のうちで誰が自分を介護してくれると思うかをたずねたところ、既婚者では、男女ともに「配偶者」が最も高くなっています(子どもがいる既婚男性65.3%・既婚女性50.3%、子どもがいない既婚男性72.5%・既婚女性64.2%)。

子どもの有無にかかわらず、男性のほうが女性より「配偶者」からの介護を期待する割合が高く、女性では、子どもがいない場合(64.2%)のほうが子どものいる場合(50.3%)よりも「配偶者」を頼りにしている傾向が高くなっています。

女性のほうが子どもに介護を期待する

また、子どもがいる既婚者では「娘」(男性19.0%・女性26.7%)、「息子」(男性12.9%・女性16.5%)が続き、女性のほうが男性より子ども(特に娘)に介護を期待する人の割合が高くなっています。

一方、既婚者でも、自分を介護してくれる人が「誰もいない」が1割弱〜2割弱、「わからない」が2割弱〜3割弱となっています。さらに未婚者や離別者などでは「誰もいない」の割合が最も高く、未婚の男性56.9%・女性54.3%、離別者などの男性47.3%・女性32.5%となっています。そして、男女ともに「わからない」が約3割で続きます。

未婚者や離別者などは、自分を介護してくれる家族・親族について、具体的なイメージを持っていないことがわかります。


ところで、介護を受ける場所としては自宅のほかにいろいろな施設がありますが、そもそもどういう場所での介護を希望しているのでしょうか。40〜64歳の男女に、自分に介護が必要となった場合、どこで介護を受けたいかをたずねました。

男性では「自宅」の割合が4割強〜5割強と最も高く、次に「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」が2割弱〜3割弱、「サービス付き高齢者向け住宅」が約1割と続きます。 女性も上位3項目は男性と同様ですが、最も割合が高い「自宅」は3割弱〜4割弱にとどまります。一方で、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」は2割強〜3割弱、「サービス付き高齢者向け住宅」は2割弱と、男性に比べて高い傾向にあります。

自分の終末期をどこで迎えたいか

それでは自分が終末期を迎えたい場所についてはどうでしょうか。厚生労働省の「平成29(2017)年 人口動態統計」によると、実際に終末期を迎えている場所として、医療機関(「病院」+「診療所」)が74.8%を占めていました。

当研究所の調査で、40〜64歳の男女に自分の終末期をどこで迎えたいかをたずねたところ、男女ともに「自宅」を希望する人の割合が最も高くなっています。男女別では、男性は6割弱〜7割弱に対し女性は約5割と、男性のほうが「自宅」で終末期を迎えたいと望んでいることがわかります。

特に男女ともに「介護が必要な親がいない(いなかった)ため、介護した経験はない」人のほうが、介護の必要な親がいる場合よりも「自宅」を希望する割合が高くなっており、これは介護の必要な親がいないために自宅で終末期を迎える際の家族・親族などの負担が想像しにくいからではないでしょうか。

次に割合が高いのは男女ともに「医療機関」で、「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「サービス付き高齢者向け住宅」と続きます。


これまで自分の介護を受けたい場所・終末期を迎えたい場所についてどのように考えているかをみてきましたが、親の終末期に関する意向について、親と相談をしている人はどのくらいいるのでしょうか。

存命中の親がいる50〜64歳の男女に、親が終末期を迎えたい場所や延命治療について、親と相談したことがあるかをたずねました。終末期の場所、延命治療の両方またはいずれかについてすでに相談した人の割合は、男性では50代前半13.2%・60代前半23.7%、女性では50代前半23.9%・60代前半32.4%と、年齢が上がるにつれて親と相談した人の割合が高くなっており、また女性のほうが男性より高いことがわかります。

相談の予定なしは男性で5割弱

一方、親が終末期を迎えたい場所と延命治療について「両方相談の予定なし」の割合は、男性で5割弱、女性で3割強〜4割弱となっています。


超高齢社会を迎え、自分が認知症になることへの不安を感じる人の割合は高く、配偶者がいない場合には認知症になった際に介護をしてもらいたい相手がいない・わからない人が多いのが現状です。また、終末期や延命治療について親と相談していない人も多いことがわかりました。

ただ、高齢になると脳血管疾患や骨折・転倒などから突然、介護状態になることも多く、また誰もがいずれは終末期を迎えます。ひとりで生きていく選択をした人や、家族とは疎遠になっている人はもちろんのこと、家族のいる人も、自分の介護や終末期の身のふり方について、早めに考えて準備しておくことが必要かもしれません。