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もくじ

ー スタイリングが魅力
ー 走りも見事 低速時が問題
ー パワートレインに不満
ー 正しい方向 大きな進歩
ー 気に入っている点/気に入らない点
ー テストデータ

スタイリングが魅力

数ヵ月にわたって日産マイクラを担当することになると知らされた時、思い出したのは若いころは好きになれなかった妙に丸っこいボディの退屈な印象のクルマだった。しかし、この5代目マイクラを一目見て、そんな考えは過去のものだと思い知らされた。

最新のマイクラはそのルックスでひとびとの注目を集めている。もちろん、外観の評価など主観的なものであり、旧マイクラが好きだったという人もいるには違いないが、個人的にこの新型のデザインを気に入っている。

そして、このルックスを気に入るかどうかは別にして、オプションのパワーブルーペイントとシルバートリムパックを選択したこのクルマは、長期テストのあいだ道行くひとびとの注目の的だった。


その魅力は室内にも及んでおり、硬質感のあるブラック樹脂とソフトタッチのマテリアルに、ブルーとクリームが組み合わされたインテリアは、キャビンの雰囲気を一段と素晴らしいものにしている。

標準でインフォテインメント・タッチスクリーンシステムを備え、オプションのBoseステレオシステムまで装備したマイクラのキャビンは、長く時間を過ごすことのできる居心地の良い場所だった。

スタイリングに関して言えば、マイクラをフォード・フィエスタやセアト・イビーザといったクラスリーダーたちの真のライバルとすべく、日産は全力を尽くしたようだ。充実した装備に加え、カスタマイズ可能なところなど、明らかに日産はこのクルマで若いドライバーを魅了しようとしている。

走りも見事 低速時が問題

それでも、OU17 LTEのナンバープレートを付けたこのクルマを6カ月担当するなかで、ひとつの疑問が頭から離れることはなかった。つまり、このクルマにはその野望を達成するだけの資質が備わっているかというものだ。

フィエスタと、そして最新のクラスリーダーであるイビーザが証明しているように、ルックスだけでは不十分であり、この2台は街中をゆっくり流したり、高速道路をクルージングしても素晴らしく、そして、一旦曲がりくねったB級路に出ればドライバーとの繋がりを感じさせてくれる。

では、マイクラはどうだろう? 同じようなスペックのフィエスタとイビーザより約100kg軽量な点は期待が持て、標準でトラクションコントロールも装備している。


実際、マイクラの走りは素晴らしい。ステアリングは低速ではやや軽すぎ、クラスリーダーの2台に比べればフィールも希薄だが、狭い場所でもマイクラをキビキビと走らせ、ドライバーの求めに応じてコーナーではダイレクトで正確な走りを味わわせてくれる。

日産のシャシー制御では各輪のブレーキをそれぞれコントロールすることでタイトなコーナリングを可能にしており、曲がりくねった道でも見事なバランスをみせる。

路上におけるこの小さな日産は基本的に安定しているものの、唯一とも言える問題は低速走行時の落ち着きのなさであり、それによって道路の継ぎ目やポットホールといったものの存在が強調されていた。

その原因はオプションの17インチホイールと低扁平のブリヂストン製タイヤにあったのかも知れない。大径ホイールはスタイリング上の利点かも知れないが、マイクラの乗り心地には思わぬ悪影響をもたらしていた。

パワートレインに不満

そんなマイクラだが、パワートレインの問題だけはどうにもならなかった。シフトの引っ掛かりには悩まされ、どれだけクラッチ操作を行う必要があったとしても、3速は出来るだけ使いたくなかった。だが、それも街中の混雑した道路でマイクラの扱い辛さの原因となっていた、この3気筒エンジンの狭いパワーバンドに比べれば大した問題ではないだろう。

シフトの問題は、クラッチのスレーブシリンダーに新品のリンケージロッドとサポートブラケットを取り付けることで解消することができた。ようやくスムースな動きで積極的にシフトを楽しみたくなるマイクラの5速マニュアルギアボックスを堪能することができるようになったが、お陰で素早いシフト操作によって、このクルマの狭いパワーバンドをカバーすることも可能になった。フィエスタほどの節度感はないが、それでも十分優れたギアボックスだと言えるだろう。


だが、フィールの希薄なクラッチペダルは褒められた出来ではなかった。ミートポイントを外さないためには、常に集中してクラッチ操作を行う必要があったほどだ。

さらに、問題だったのが898ccのエンジンだ。巡航速度では洗練された印象で、粛々と追い越し可能なパワーを紡ぎ出すが、低速ではパフォーマンス不足を感じさせ、静止状態からの加速では盛大なサウンドは響かせるものの、その狭いパワーバンドが足枷となり、滑らかな速度上昇など望むべくもなかった。

さらに、ドライバーが急加速を試みても、パワーが高まったかと思うと、このエンジンはすぐにパワーバンドを外してしまうのだ。

正しい方向 大きな進歩

決して悪いエンジンではないのだから、少し厳しすぎるように聞こえるかも知れないが、フィエスタやイビーザと比べれば、欠点のあるユニットだと言わざるを得ない。

この2台が積む1ℓユニットは回転上昇も早く、活気に溢れるとともに、バランスも上手く整えられている。マイクラではステアリングとクラッチペダルを通して盛大な振動を伝えて来るのだから、3気筒ユニットのバランスは重要な問題であり、こうした些細な点が大きな違いをもたらしている。

では、6カ月の長期テストを終え、マイクラをクラスリーダーたちのライバルだと認めることはできるだろうか?


答えはイエスであり、このクルマは素晴らしい仕上がりで、多くのモデルよりも運転を楽しむことのできる優れた小型モデルだと言える。

だが、多くのモデルより優れてはいるものの、すべてではない。イビーザやフィエスタと比較すればマイクラの欠点は明らかであり、5代目マイクラは正しい方向で大きな進歩を遂げてはいるものの、まだ、スーパーミニのなかでトップだとは言えない

セカンドオピニオン

初めて長期テスト車のマイクラを運転したとき、正直言えば少しガッカリした。この小排気量3気筒ターボを前に運転した時の印象は素晴らしいものだったが、テスト車のエンジンには滑らかさが足りず、記憶よりも力強さが不足していたのだ。だが、距離を重ねることで状況は大きく改善している。

気に入っている点/気に入らない点

気に入っている点

素晴らしいオーディオシステム


Boseオーディオシステムは妙な見た目をしているが、この小型車のキャビンに迫力あるサウンドをもたらしてくれる。

魅力的なルックス


シャープなラインの組み合わせが、このマイクラのデザインを旧モデルよりもはるかに素晴らしいものにしている。

機敏なハンドリング


運転が楽しいモデルであり、なぜ日産はこれまでこうしたハンドリングを隠していたのだろう?

気に入らない点

凡庸なエンジン


ダメなわけではないが、セアトやフォードのライバルに比べればまったく満足できない。

狭いリアスペース


下降線を描くルーフラインが示すとおり、後席は3人ではなくふたり用だ。

テストデータ

テスト開始日:2017年3月28日
テスト開始時走行距離:1368km
テスト終了時走行距離:9325km

価格

新車時価格:1万6135ポンド(227万円)
現行価格:1万6135ポンド(227万円)
テスト車両価格:1万9110ポンド(269万円)
ディーラー評価額:1万4420ポンド(203万円)
個人評価額:1万2690ポンド(179万円)
市場流通価格:1万1750ポンド(166万円)

オプション装備

ビジョンプラス・パック(インテリジェントアラウンドビューモニター、移動物検知、インテリジェントブラインドスポットモニター含む) 550ポンド(7万8000円)、エクステリアパック・プラス(17インチアルミホイール、クロームエクステリアパーツ含む) 800ポンド(11万3000円)、インテリアパーソナライゼーションパック・ブルー 350ポンド(4万9000円)、インテリジェントキー 200ポンド(2万8000円)、Boseパーソナルオーディオパック 500ポンド(7万円)、パワーブルーペイント 575ポンド(8万1000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:21.7km/ℓ(複合)
タンク容量:41ℓ
平均燃費:15.53km/ℓ
最高燃費:19.06km/ℓ
最低燃費:12.88km/ℓ
航続可能距離:636km

主要諸元

0-100km/h加速:12.1秒
最高速:175km/h
エンジン:898cc 直列3気筒
パワー:90ps/5500rpm
トルク:14.2kg-m/2250rpm
トランスミッション:5速マニュアル
トランク容量:300ℓ
ホイールサイズ:17 x 6.5J
タイヤ:205/45 R17 ブリヂストンTuranza
乾燥重量:1068kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:238ポンド(3万3600円)/月
CO2 排出量:104g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:485.07ポンド(6万8400円)
燃料含めたランニングコスト:485.07ポンド(6万8400円)
1マイル当りコスト:9ペンス(13円)
減価償却費:6420ポンド(90万5000円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:1.39ポンド(196円)
不具合:シフトのひっかかり