龍フェルケル氏のロシアW杯写真集『No hands 2』は、写真、詩、イラストで構成されている。

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 カメラマン・写真家という職業の方々には、一般的に見ると“変わり者”が多かったりする。独自のこだわりや視点があったほうが、オリジナリティーのある写真が撮れるのは自明の理。だからなのしれない。
 
 その中でも、少なくとも自分が一緒に仕事をさせてもらった方々において、とりわけ異彩を放っているのが、ベルリン在住の龍フェルケル氏だ。
 
 日本とドイツのクォーター、世界各国での在住経験(日本、香港、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ)、脱サラして写真家に、奥様はフランス人というバックグランドだけでも一線を画しているが、とにかく言動が面白く、何より写真自体が斬新すぎるほど個性的だ。
 
 そんな龍さんは、昨年のロシアW杯も現地取材。そしてこの度、その模様をまとめた写真集『No hands 2』を発売した。クアウドファンディングで資金を募り、独特の視点とスタイルによって撮影・セレクタされ、さらに「W杯決勝を蹴る」というまさかの選択をして製作されたこのフォトブックについて、話を聞いた。
 
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
 
――まず、『No hands』は2014年のブラジルW杯に続いて2回目の写真集です。1回目との違いは?
 
「前回は写真を大きく使えなかったので、少し悔いがあったんです。だから今回は、できるだけページいっぱいに大きく使うことを心掛けました。見開きでドーンって見せたりとか」
 
――なるほど。前回は自分の写真だけでフォトブックを作っていましたが、今回は詩人(『ガーディアン』や『NYタイムズ』など有名紙で執筆するムサ・オコンガ氏)、イラストレーター(ナイキ、ブンデスリーガ、マンチェスター・C、ユベントスなどと仕事をするダン・レイドン氏)とコラボレーションしていますよね?
 
「そうですね。2回目だからやっぱり変化が欲しいなと。そのクリエイターからも色々と刺激がもらえますしね」
 
――詩人とイラストレーターは元々の知り合いだったんですか?
 
「詩人はベルリンで草サッカーチームのチームメイトで、意気投合して仕事を頼みました。イラストレーターはインスタグラムでお互いをフォローしていたのがキッカケですね」
 
――SNSでの繋がりから新たなクリエイティブが生まれるというのは、いかにも現代っぽいですね。
 
「そう思います。今は実際に会ったことがない人ともコラボができる時代です。イラストレーターはアイルランドの山奥に住んでいて、しかもそこからあまり出てこないので(笑)、簡単に会えないんですよ。でも、仕事を通じて連絡を繰り返していたので、もう友人みたいなものですね。ただ、いつか会いたいです(笑)」
 
――今回も前回に続いてクラウドファンディングで資金を集めたようですが、どれくらい人数でどれくらいの金額が集まったんですか?
 
「286人に方々に賛同いただき、総額2万5000ユーロ(約325万円)が集まりました」
 
――すごい!! 投資してくれた方々は、友人、カメラマン、ライターなどですか?
 
「あとは私のファンの方々ですね。インスタグラムをフォローしてくれているみなさんです」
 
――そのあたりも実に今っぽいですよね。
 
「間違いないですね。本当にありがたいです。投資してくれた方々にも、こんな高い写真集を買ってくれた方々にも、すごく感謝しています。嬉しいですね」
 
――『No hands 2』は日本円だと約6000円です。たしかに写真集としてはかなり高めです。
 
「高いですよね(笑)。でも、それ相応のものができたと思っています」