堂安律(撮影:佐野美樹/PICSPORT)

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サウジアラビア戦の日本のファウル数は27。今回のアジアカップでの最多数を記録した。ラフシャン・イルマトフ主審のジャッジは、はたして「中東の笛」と呼ばれる、中東のチームに有利な笛だったのだろうか。

日本の審判関係者の中にもいくつかの判定に疑問を呈する声はあった。「南野拓実のハンドリング」「塩谷司のショルダーチャージ」「堂安律のファウル」などについては違和感を感じるようだった。ただし、南野と塩谷の反則については、追加副審や副審が先に反応して、その後に主審が笛を吹いたようにも見える。これは主審の判断のミスと言うより、追加副審や副審のミスという面が大きいだろう。この3つの例ではジャッジに問題があったと言える。

だが、他の判定について主審の笛には一貫性はあった。そしてそれはルールの基準内でもあった。たとえば手を使うと厳しく反則とされていたが、この流れは2014年ワールドカップから継続している。ホールディングは「この程度なら」という強度で反則かどうか判断する反則ではなく、行為そのもので反則とされる。イルマトフ主審は忠実に笛を吹いていた。

また審判の考え方について指摘する審判関係者もいた。それは、「日本とサウジアラビアという優勝候補の戦いが荒れないように気を遣ったのではないか」というものだった。そのため、最初のファウルで厳しくその日の方針を示し、両者を諌めようとしたのではないかというのだ。

ところが日本はその基準にアジャストできず、同じようなプレーを続けてしまった。一方でサウジアラビアはその基準を有効に使って日本に攻め込もうとしていた。その差が「中東の笛」に見えたのではないか。

これを教訓として、今後の試合では審判の基準も見極めつつプレーしなければならない。「中東の笛」という抽象的な概念で問題の本質を覆ってしまうと、日本の進歩を止めてしまうことになる。

【文:森雅史/日本蹴球合同会社、撮影:佐野美樹/PICSPORT】