ベスト8進出を果たした日本。サウジアラビア戦では守備陣を中心に奮闘した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[アジアカップ・決勝トーナメント1回戦]日本 1-0 サウジアラビア/1月21日/シャルジャスタジアム

 日本“らしくない”戦い方だった。いや正確に言えば、アジア勢に対して日本が見せてきた従来のパフォーマンスとは大きく異なる戦い方だった。

 UAEで開催されているアジアカップの決勝トーナメント1回戦でサウジアラビアと対戦した日本は、「相手はポゼッションをしたがることは分かっていて、試合前にも握られるのは仕方ない、最終的な部分でしっかり身体を張って守れれば問題ないと確認していました」(長友佑都)と、守りに意識を傾けながらカウンターでの打開を図った。

 決勝点になったのも平均身長が低い相手の弱点を狙い、練習を繰り返してきたセットプレーからだった。柴崎岳の右からのCKに20歳の冨安健洋が代表初ゴールとなるヘッドで合わせてネットを揺らしたのだ。

 後半はサウジアラビアに自陣に押し込まれ、試合を通じてポゼッション率は23.7パーセントと76.3パーセントと、大きく水を開けられた。それでも守備陣は最後まで集中を切らさず、本来は攻撃が持ち味の原口元気、堂安律らもディフェンスに走り、1点を守り切った。
 
 ボランチでチームをコントロールした柴崎は、「カウンターでもう1点取れればベストだったが」と語りながら、チームの戦い方に対して手応えを口にした。

「結果が出たことがなによりで、勝つことに徹したという印象です。ある程度、ボールを握られるとの意識は統一できていましたし、チームがひとつの生き物のように戦えました。今までやってこなかったので精度を欠いた部分はありましたが、ただこういう戦い方はひとつのオプションとして今後日本代表の武器としても活かせると思います。ショートカウンターだけでなくロングカウンターも磨いていきたいです。僕はひとつの戦い方に固執する必要はないと思っているので」

 また長友も「これは成長だと思いますよ。今までの日本だったらボールを相手に握られると、ぼろが出て、やられているんですよ。今は皆、経験があって強くなっている。海外で厳しいなかでやっているので、メンタル的な余裕がある。握らしているんだぞと。最後のところで締めて集中しておけば問題はないと、メンタルが強くなりました」と評価する。
 
 方法論は間違っていなかったということだ。「成長することも大事だが、まずは勝利を目指したい」と森保一監督は前日会見で話していたが、発足から半年も経っていないチームを高みに導くためには、理に適ったゲームプランだったと言えるだろう。

 ただし、大きな不安を覚えたのは以前から指摘している攻撃面だ。この日は狙い通りセットプレーで点を取ることはできたが、その後のカウンターではチグハグさを露呈。ボールを奪ったとしてもフィニッシュまでつなげられず、守備の時間が続いた。

 悲しい話ではあるが、ライバルたちのレベルが上がっているなか、経験が浅い今の日本には横綱相撲で勝ち切る力はない。それでもアジアの覇権奪回を目指すとなれば、コンビネーションを含め、崩しの質、レパートリーを増やさなくては厳しい戦いが待っているのは間違いない。長友もその点を指摘する。

「攻撃の部分でもう少し、パスをつなげるところで精度を上げていかないと、強い相手になると難しくなると思います。守備はすごく良い形で集中できているので、良い守備から攻撃につなげていけるか。慌てずにボールを回すところは必要になってきます」
 
 この日は負傷明けの大迫勇也に代えてCFには武藤嘉紀を起用したが、彼の力を活かせたとは言えなかった。

「もっと彼(武藤)を活かせる方法はあると思います。そこは今日のビデオを見返して、皆で話し合って、もっと前線の選手がイキイキとできるようなサポートをしてあげなくてはいけません。武藤はこのチームでなかなかチャンスがなかったので、合わせていく必要があります」と長友は振り返る。

 次戦以降はエースの大迫が戦列復帰できる可能性がある。そうなれば、攻撃にも躍動感が蘇るかもしれない。しかし、ひとりの選手の力に大きく頼るだけでは、敵の守備を打開するのは困難だ。長友が語ったように、前線への密なサポートが攻撃を機能させるうえでの鍵になるだろう。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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