2018年8月に値上げに踏み切ったリンガーハットだが、さまざまなコストアップで収益性は悪化している(記者撮影)

人気の飲食チェーンが収益性を改善できずに足踏みしている――。

長崎ちゃんぽんの店を主力業態とするリンガーハットは1月11日、今2019年2月期の第3四半期(2018年3〜11月期)実績を発表した。売上高は350億円(前年同期比3.6%増)と増収ながら、営業利益は15.6億円(同21.4%減)と大幅減益で着地した。

リンガーハットは、既存店売り上げについては健闘している。野菜の価格高騰などを理由に、同社は2018年8月に13品目で平均3.3%の値上げを実施。名物の「長崎ちゃんぽん」は東日本では626円から637円へ、西日本では583円から604円へと値上げした(いずれも税込み価格)。

リンガーハットの小田昌広取締役は、「値上げの影響による顧客離れを感じていない。第3四半期が始まったころは暖冬の影響を受けたが、12月後半に寒くなってからは売り上げが上向いている」と話す。

人件費の増加が重荷に

実際、既存店売り上げは2018年10月が前年同月比1.9%減、11月が同1.3%減だったが、12月は同0.5%増と少し持ち直した。2018年3月〜12月の累計では、リンガーハット全社で既存店売り上げは0.1%減でとどまっている。「野菜はすべて国産を使用している。また、今回は野菜の量を減らさずに値上げに踏み切ったが、それをきちんと告知したので顧客の支持を得ているのではないか」(小田取締役)。


リンガーハットの定番商品の1つである「長崎ちゃんぽん」(写真:リンガーハット)

既存店売り上げが堅調であるにもかかわらず、営業利益は前年同月期に比べて大幅に減少した。光熱費や物流費に加えて、人手不足を背景に人件費が膨らみ、これらがコスト圧迫要因となったためだ。

少人数で店舗を運営できるため、リンガーハットはGMS(総合スーパー)やショッピングセンター内のフードコートへの出店を強化している。フードコート内店舗であれば、顧客に料理を提供する人員が不要だ。

テナント側も顧客を呼び寄せようと、改装時に飲食店を積極誘致している。そのため、店舗数は全体で2014年2月期末545店から2018年11月末681店へと増加したが、そのうち郊外型のロードサイド店が278店から221店に減少する一方、フードコートへの出店は200店から376店へと拡大した。


2018年2月末から2018年11月までの9カ月間でも、ロードサイド店が6店減少し、フードコート店は22店増加している。主力のリンガーハットだけでなく、「とんかつ大學」というとんかつ業態のフードコート用新業態の出店も強化中だ。

ところが、このようなローコストオペレーションを図っても、コストアップ要因をはね返すことができなかった。

当初の計画では今第3四半期の売上高に占める人件費率を32.6%に抑える計画だった(前年同時期の実績は33.0%)。しかし、人件費が想定以上に増加したため、結果は33.1%と前年同期と同水準の高さだった。「人件費の上昇が、構造改革の効果を上回ってしまった」と、小田取締役はうなだれる。

セルフレジ導入や配送効率化を進めるが…

会社側は今2019年2月期の通期業績について、売上高480億円(前期比5.1%増)、営業利益28.6億円(同1.2%増)と、若干の営業増益での着地を見通す。だが、足元の状況を考慮すると、営業減益へと下振れる可能性は十分にある。

来2020年2月期以降についても、「これから2020年の東京オリンピックに向け人手が必要とされるため、首都圏の求人が逼迫する懸念がある」と、小田取締役。すでに外食業界全体で人手不足が大きな問題となっており、この状況が急に好転することはなさそうだ。

人件費の上昇に対応するため、リンガーハットはフードコート店舗のいっそうの出店や、セルフレジ導入による店舗ローコストオペレーションの強化、そして自社工場と各店舗間での配送の効率化などを実施する。

いっそうのコストアップ要因に耐えられる収益体質を作れるのか。リンガーハットは難しい課題に直面している。