はじめまして。銭湯歴17年目、もりです。

銭湯」は、僕にとってかけがえのない場所です。田舎から一人上京し、この17年間友人や地元の方々、時には旅人とあたたかく充実した時間に浸かってきました。

今回は、そんな銭湯に危機が迫っていることを知り、筆を取ることにしました。

 

“今世紀最強”の台風が近畿地方を襲った日

台風21号(チェービー)が、大阪を襲ったのは2018年9月のこと。最大瞬間風速58.1mを観測した台風は「今世紀最強」と報道され、大きな被害をもたらしました。

風を真横に受けたトラックが横転する様子や、家屋の屋根が簡単に吹き飛ばされてしまう映像は、見る人々に台風の脅威と恐怖を与えたはずです。

そんな台風21号が大阪に上陸したあの日から、約4カ月が経過しました。

▼台風21号(チェービー)の主な被害
・関西国際空港冠水、大型タンカーの連絡橋衝突
・自動車やトラックの横転
・大規模停電
・多くの建物や公共設備の破損

関西国際空港では、空港と陸を結ぶ連絡橋に大型のタンカーが衝突。通行止めとなった影響で利用客などおよそ3000人が孤立し、交通インフラにも大きな影響を及ぼしました。

すこしずつ復旧が進んでいる大阪の街。一方で、台風被害の影響から今も抜け出せていないものの一つには、「銭湯」があります。

大阪にある銭湯の約7割にあたる300軒が今回の台風21号によって被害を受け、すでに廃業を決意された銭湯のほかにも、休業中の銭湯が増えているという情報も。今後の廃業スピードが加速する事が懸念されています。
 

提供:大阪府公衆浴場組合|写真協力:長瀬温泉(休業中)

廃業に追い込まれる理由とは

ある銭湯では強い風の影響で煙突が倒れ、屋根が倒壊し、休業を余儀なくされました。
浴室の壁や浴槽の補修など、経営者自ら作業できる箇所はよいものの、屋根や外壁、配管設備やボイラー設備といった大きな部分を修理するには、多額の費用がかかります。

助成金などがあった場合でも、設備の維持や修繕のためにローンを組んで営業をしている銭湯は多く、今回の台風被害によってさらに修繕費がかかるとなると、二重、三重ローンを組むことになってしまうのです。

また一部では、経営者の高齢化も重なり、今回の被災を機に心理的なショックから廃業を決意される場合も珍しくありません。まさに現在休業を余儀なくされている銭湯は、廃業へ向かう可能性も高いと考えられます。
台風被害を受けた銭湯の多くはこのように費用面での負担に加え、精神的な支えが必要な状況に立たされています。

 

なぜ今、街の銭湯が重要なのか

提供:大阪府公衆浴場組合|写真協力:長瀬温泉(休業中)

台風21号が発生するすこし前、2018年6月に起こった大阪府北部地震では、大阪の銭湯は地域コミュニティとしての役目をしっかりと果たしていました。
ガスの復旧を待つ間、すこしでも被災者の方に安らいでもらおうと、大阪の有志銭湯57店が被災者を対象に無料解放するなど、地域の危機を支えていたのです。

悔しいことに、そうして地震災害の時には人々を支えた大阪の銭湯たちが今、最大の危機に立たされています。
生涯をかけて、地域のために銭湯の存続を図る経営者の方々を、少しでも支えることができないものか――。
多くの家庭にお風呂が普及して久しい時代ではありますが、“近所の大きなお風呂にみんなで入る”といった銭湯文化は、僕自身が支えられたように、今までも、そしてこれからも、地域コミュニティを支える大きな役割を果たしてくれると感じています。
僕の取材では、現在も大阪府公衆浴場組合では被害状況の調査を続けておられます。
今後、この場を借りて被害状況や復旧の様子をお伝えするとともに、銭湯好きの一人として、僕にできる支援を考えていきたいと思っています。