アメリカの有名声優に日本アニメの人気や声優事情を聞いた

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アメリカのテネシー州にあるピジョン・フォージに行ってきました。ピジョン・フォージをはじめて耳にした方も多いと思います。それもそのはずで、アメリカ人にもあまり知られていない田舎の観光街です。

なぜそんな街を訪れたかというと、日本のアニメ・ゲームを中心としたイベント「Yamacon 山コン」に参加する、アメリカの有名声優に会いに行くため。



その声優がこちらの写真の、ジョニー・ヨング・ボッシュ(Johnny Yong Bosch)さん。アメリカのアニメだけでなく、日本のアニメやゲームの英語版の声を吹き込んでいる声優です。

代表作は『AKIRA』の金田正太郎、『BLEACH』の黒崎一護、『コードギアス』のルルーシュ、『妖怪ウォッチ』のケータ、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオルガ・イツカなど。

どれも主役級の役柄ばかりで、2019年3月発売予定の『デビルメイクライ5』の主人公のひとりネロ役では声優にくわえ、モーションキャプチャーを使った演技も担当しています。ちなみに、声優をはじめる前はアメリカのヒーロー戦隊『パワーレンジャー』のブラック役でもありました。


ジョニーさんが演じたキャラクターの一部。

そんなジョニーさんに、日本のアニメやマンガの人気、アメリカでの声優という職業のポジションや、どうやって仕事をえるのかなど、アメリカの声優事情を聞きました。

アメリカ人は誰が声を演じているかに興味がない

──色々な国の作品に出演されているジョニーさんからみて、日本のアニメやマンガはどれくらい人気なのでしょうか? アメリカのアニメやマンガ、ほかの国のアニメやマンガなどと比較して教えていただけますか。

あくまで個人の主観になりますが、

・アメリカのカートゥーン(子ども向けアニメ、ディズニーやMarvelを含む)
・アメリカのコミック
・日本のアニメ
・日本のマンガ
・ほかの国のマンガやアニメ

という順番になると思います。

──ほかの国に比べると日本のアニメやマンガは人気なんですね。どういった作品がとくに人気なのでしょうか? 

流行りではなく、長いあいだ人気が高い作品を挙げると、『ドラゴンボール』、『NARUTO - ナルト - 』、『ポケットモンスター』、『ガンダム』、『幽☆遊☆白書』、『AKIRA』、『BLEACH』、『ONE PIECE』、あたりでしょうか。

──日本では、声優は憧れの職業になってきたり、声優以外の活動も注目されていてアイドルのような人気があります。Yamaconでのジョニーさんのサイン会は、200人を超える行列ができていました。アメリカでも声優は人気なのでしょうか?

Yamaconのようなアニメコンベンションでは、日本みたいな人気になることもありますが、普段の生活でちやほやされるようなことはありません。日本はアニメやゲームのキャラクターを誰が演じているかをリサーチしたり、どの声優が出演するかで見るアニメを決めたりする文化がありますよね。でも、アメリカでは、キャラクターはキャラクターという考え方のため、誰が声を演じているかについては大半の人は興味がないんです。

──何か理由があるのでしょうか?

アメリカのアニメが、基本的に子ども向けのカートゥーンだからだと思います。日本のアニメは大人向けのものも多いですよね。この違いが大きいと思います。日本の大人向けアニメが好きな人たちは、日本人のように声優にも興味を持っている人が多いです。

最近では声優に興味を持ってくれる人も増えてきて、アニメコンベンションの時に限った話ではありますが、『スター・ウォーズ』に出演している有名な俳優より声優のほうがサイン会の列が長くなることもあります。

──なるほど。声優の人気は徐々にあがってきているんですね。

日本に比べればまだまだですけどね。とはいえ、アニメ系のコンベンションは週に1回はアメリカのどこかで開催されているくらい人気がありますし、私自身も、日本の人気作品のキャラクターを演じさせてもらっていることを光栄に思っています。
 
 日本のアニメ・マンガファンは増え続けている
 
──声優にはどうやってなるのでしょうか? 日本には専門学校がありますが、アメリカにも専門学校があるのでしょうか?

俳優志望者が成り行きで声優になるケースが多いと思います。私も俳優の仕事でスタジオに入っていたら、たまたま「声優が足りないからちょっと来て」と呼ばれたことが声優になったキッカケです。ここ最近は、俳優になるための学校に声優コースが用意されているところもありますが、声優に特化した学校はまだないと思います。

──声優はどうやって仕事がくるのか教えてください。

アメリカの声優や俳優の仕事は、「ユニオン(労働組合)の仕事」と「ノン・ユニオン(ユニオンではない仕事)」という2つの形態があります。ユニオンからくる仕事のほうがお金がよく、メジャーな作品に出演するチャンスがあります。

また、一部の例外を除いてどちらかの仕事しか受けることはできません。新人の声優や俳優は、ユニオンに入っていない状態で、且つ、支払いのあまりよくない仕事からスタートします。ノン・ユニオンの仕事は、お金はよくないのですが仕事の数は多いです。

──皆さん、最終的にユニオンに入るのでしょうか?

そうですね。有名になってくると「ユニオンに入りなさい」と声がかかります。

──加入費や年間費みたいなものは?

年間3000ドル〜5000ドルくらい払います。ユニオンが持っている仕事の数が少ないので入ったら入ったで大変です。しかも、ユニオンは州ごとにあり、どこに住んでいるかで振られる仕事も変わります。

それに、人気の作品に出演するためにはオーディションに勝ち残らないといけません。ですので、ユニオンに入ったからといって安泰なわけではないです。あまりにも仕事がない人は、「ユニオン以外の仕事もしたい」と申し出て、ノン・ユニオンの仕事をすることもあります。

──ちなみに、アメリカの作品と日本の作品、どちらがギャラがよいですか?

それはプロジェクトによりけりですね。声優の仕事をはじめた頃は、アメリカの作品のほうがギャラはよかったです。最近では日本の作品のほうが支払いがよいこともたまにあります。

──声優からみて、日本のアニメやマンガのアメリカでの可能性を教えてください。

私が声優をはじめた2000年は、日本のアニメの人気がちょうど出始めた頃です。それから、アニメのコンベンションがはじまって、Anime ExpoやYamaconなど日本のアニメやマンガを中心としたコンベンションも登場し、さらに人気は加速していきました。

そして、ネットフリックス、Hulu、アマゾンプライムなどのストリーミングサービスが始まり、日本のアニメやマンガはより身近なものとなったと思います。

ですが、ストリーミングサービスなどの影響で、特典映像やグッズをつけたりしないとDVDが売れないという側面もあります。アニメの会社が利益を得るための手段が少なくなっており、消えてしまった会社もあります。

日本のアニメやマンガのファンは減少することなく、今でも増え続けているので、うまくプロモーションをしながら利益を出すかが重要になってくると思います。

なかなか知られていないコトに焦点を当てる取材を



コラム連載第1回目はアメリカの人気声優に、日本のアニメやマンガの人気やアメリカの声優事情について話を聞きました。この連載では、ジャンルを問わずなかなか知られていないであろうコトに焦点を当てた取材をしていきたいと思います。

最後に、今回のジョニーさんへの取材は、写真左下に写っているポロ・ヤザキさんの協力により実現しました。

ポロさんは、ジョニーさんがヴォーカルを務めるバンド「Where Giants Fall」(https://www.instagram.com/wheregiantsfallband/)でギタリストをしており、ジョニーさんへの取材セッティングや現地でのアテンドなどでお世話になりました。この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。