財務省は18日、環太平洋連携協定(TPP)参加国からの1月上旬(1〜10日)の牛肉輸入量を発表した。オーストラリアやカナダなどから1万トンが輸入され、前年1月の1カ月分の半数に及ぶ高水準となった。輸入業者が関税が大きく下がるTPP発効を待って、輸入量を増やした形だ。「上旬の営業日は実質5日ほどのため、その期間での1万トンは多い」(商社)。2月1日には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効する。輸入攻勢がさらに強まる恐れがある。

 昨年12月30日にTPPが発効した国は日本に加え、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア。発効を受け、これまで1カ月遅れで公表していた牛肉輸入量を、財務省が毎月上・中・下旬ごとに、TPP参加国に限り発表する。

 1月上旬の輸入量は1万7トン。国別の公表はないが、シンガポール産牛肉の輸入は禁止しているため、同国以外の4カ国の輸入量となる。4カ国の前年同月は2万1152トン。今月上旬だけで同時期の47%に当たる。

 東京都内の輸入業者は「11、12月の通関を抑え、1月にまとめて通関を切った」と話す。関税が現行38・5%から27・5%に下がったカナダ産やニュージーランド産の輸入が増えているとみられる。4月1日に発効2年目となり、関税率が26・6%に下がる。輸入業者は「現在契約している荷は、4月の通関へ持ち越す」と話す。輸入商社は「3〜5月の需要期に向け、オーストラリア産冷蔵品の買い付けを増やす」と計画する。これまで経験したことのない関税削減の影響が、徐々に表面化している。

EPA 既にセール


 2月1日にはEUとのEPAが発効し、幅広い品目で海外からの攻勢は続く。

 発効に先駆け、小売業界で、輸入物の販売を強化する動きが出始めている。イオンは18日から本州・四国の約420店舗で、EU産ワインの値下げセールを行う。フランスやイタリアなど4カ国からの直輸入ワイン25種類を1〜3割安で販売する。「日欧EPA発効記念先取りセール」と銘打ち、2月28日までの期間限定で売り込む。

 EPA発効後、ワインの関税は即時撤廃となる。「関税撤廃された欧州ワインが入荷する前にいち早くお買い得価格で提供する」(同社)とし、消費者への認知を広め、販売を伸ばしたい考えだ。同社はワインの取り扱い構成比で、EU産の割合を6割から7割に高めた。

 飲料メーカーも相次いでワインの価格改定を行う。サントリーワインインターナショナルは2月1日出荷分から、メルシャンやサッポロビール、アサヒビールは3月1日出荷分から値下げする。サッポロビールは74商品を、参考小売価格ベースで2〜17%程度引き下げる。

 これらの動きは発効後にさらに強まる可能性がある。