東京の年末風物詩、世界一の築地魚市場は大賑わい
2005年12月29日06時44分 / 提供:PJ
年の瀬が押し迫るほど、東京・築地は街全体に熱気がたちこめる。全国各地、さらには地球の裏側からも魚介類が築地魚市場に集まってくる。
12月28日の未明、魚市場の『場内市場』の広い構内にはトラックが所狭しとならんでいた。無秩序のような駐車だが、業者ごとに位置がほぼ決まっているらしい。運搬用の1人乗りターレットが、魚介類の発泡スチロールを乗せ、セリ場へと縦横無尽に荒っぽく走りまわる。
水産物の入荷品を取り扱う、東京都指定の卸売会社は7社ある。そのひとつ『第一水産』の営業第一部干魚課の圷(あくつ)さん(24歳)に、年末特有の多忙な早朝業務を語ってもらった。真夜中の12時に起きた圷さんは、午前1時に会社の事務所に入り、2時にはセリ場に出向く。そこには小揚げさん(荷受業務会社)の手で、魚がすでに入荷順にならんでいる。圷さんはまず魚介類の一つひとつが「いくらの価格が妥当であるか」と検収管理(下付け)をする。圷さんの担当はスルメ、煮干し、シラス、種類が豊富な珍味類である。年末となると、蒸しダコ、ボイルカニまで領域が広がってくる。一人で、通常月の3、4倍(金額ベース)の物量を扱うという。
すべてが〈セリ〉を通すわけでなく、買い手との間で、先に値段を決めてしまう、「相対の売買」が多いという。いずれにせよ、鐘が鳴らされてセリが始まる5時40分には、検収管理や相対の売買は終わらせなければならない。セリが終わると、年末ともなると、トラックに積み込む作業の人手はいくらあっても足りない。圷さんは小揚げさん任せにできず、みずからもターレットを運転し、販売先の仲卸業者のトラックに積み込む。完了するが7時まえ。事務所にもどった圷さんは、次の仕事として伝票の処理と、明日の集荷が始まるのだ。
築地魚市場の「場外市場」では7時頃ごろ、軒を連ねる仲卸業者の店頭に商品が豊富にならんでいる。一般消費者の買い出しが急激に増えはじめる。築地交差点から近い立地条件のよい『三宅水産』に、開店時間を聞いてみた。「年末は特別だから、電車がない時間だけど、早朝3時から店を開けてるよ」と答えてくれた松井さんは、家族連れに、活きて跳ねる車海老と、平台の中央にならぶ寒ブリを勧めているさなかだった。
「今年の値段は手ごろだよ。ブリは刺身でも、照り焼きでもおいしいよ」という威勢の良い説明を聞くのは、神奈川県・秦野市からきた井上さんだった。9歳、14歳、17歳の子ども連れの5人家族である。この日は午前5時20分発の電車に乗り、築地には7時に着いたという。ここ5、6年は家族の年末行事になっているらしい。井上夫人に、築地の魅力を聞いてみた。「品数が豊富で新鮮でしょ。自分の目で確かめながら、品選びできるのが楽しい」。この日の予算は3万円と教えてくれた。
マグロ専門店の国虎商店の「ひげのおじさん」で名高い山本店長に、上手な買い物のコツを聞いてみた。「一言で言えば、店のいうことを聞くことですよ。うちは本マグロが主力。予算と、何人で食べたい、と言ってもらえば、みつくろえます。3000円で5人といえば、中トロの冊(さく)を安くして上げる。やや筋が入っていれば、5人分で2000円。味にこだわる人は特上本マグロもあるよ」。
大田区の田園調布からきた、守屋さん夫婦は、おいしいもの探しが目的だという。昨年はじめてきて築地が気に入った。とくに玉子の厚焼きがおいしかったから、妹夫婦を誘ってきたのだという。予算は別段考えていない、と鷹揚に構えていた。
場外市場には庶民的な魚種から、プロ好みの高級魚、特上品を扱う店まで多々ある。築地には政界や財界人が利用する有名な料亭が多い。それら料亭が利用する乾物屋のひとつが、明治時代からの老舗『吹田商店』である。吹田(すいた)専務に、今年のお勧め品を聞いてみた。「コブ巻きには日高昆布、ダシ昆布は利尻昆布、オセチにはどんこ椎茸かな」と決めかねていた。スーパーやデパートよりも上質な品物をそろえているから、自分の目で確かめてもらったほうがいい、と老舗の自信のほどをみせていた。
『魚河岸横丁』にならぶすし屋、ラーメン屋などは魅力的で、強い集客力を持つ。大勢のひとがそれを目的のひとつとしてやってくる。それだけに場外市場が最も混む時間帯は昼食の前後である。年末は夕方4時まで営業している店舗が多い。
多忙を極めるのは業者だけではない。東京都市場衛生研究所では、朝4時から監視員が市場に入り、セリ前の有毒魚のチェックと排除をおこなう。午前8時からは仲卸業者の店頭にならんだ商品を調べる。検査業務の担当者は、採取してきたサンプルの理化学検査、生物学検査などをおこなう。木村業務係長は、有害不良食品を市場に「入れない、出さない、作らない」の3原則を強調する。年末販売商品が早いものは1カ月前から築地市場に入ってくるので、11月24日から12月30日までは、年末特別監視体制を取っていると説明してくれた。
築地市場の最大の人出は12月30日、31日である。外国人や観光バスの団体もくる。祭り気分で足をむけてみると、市場の活気を肌で感じ、新しい発見があって愉しいものだ。【了】
12月28日の未明、魚市場の『場内市場』の広い構内にはトラックが所狭しとならんでいた。無秩序のような駐車だが、業者ごとに位置がほぼ決まっているらしい。運搬用の1人乗りターレットが、魚介類の発泡スチロールを乗せ、セリ場へと縦横無尽に荒っぽく走りまわる。
水産物の入荷品を取り扱う、東京都指定の卸売会社は7社ある。そのひとつ『第一水産』の営業第一部干魚課の圷(あくつ)さん(24歳)に、年末特有の多忙な早朝業務を語ってもらった。真夜中の12時に起きた圷さんは、午前1時に会社の事務所に入り、2時にはセリ場に出向く。そこには小揚げさん(荷受業務会社)の手で、魚がすでに入荷順にならんでいる。圷さんはまず魚介類の一つひとつが「いくらの価格が妥当であるか」と検収管理(下付け)をする。圷さんの担当はスルメ、煮干し、シラス、種類が豊富な珍味類である。年末となると、蒸しダコ、ボイルカニまで領域が広がってくる。一人で、通常月の3、4倍(金額ベース)の物量を扱うという。
すべてが〈セリ〉を通すわけでなく、買い手との間で、先に値段を決めてしまう、「相対の売買」が多いという。いずれにせよ、鐘が鳴らされてセリが始まる5時40分には、検収管理や相対の売買は終わらせなければならない。セリが終わると、年末ともなると、トラックに積み込む作業の人手はいくらあっても足りない。圷さんは小揚げさん任せにできず、みずからもターレットを運転し、販売先の仲卸業者のトラックに積み込む。完了するが7時まえ。事務所にもどった圷さんは、次の仕事として伝票の処理と、明日の集荷が始まるのだ。
築地魚市場の「場外市場」では7時頃ごろ、軒を連ねる仲卸業者の店頭に商品が豊富にならんでいる。一般消費者の買い出しが急激に増えはじめる。築地交差点から近い立地条件のよい『三宅水産』に、開店時間を聞いてみた。「年末は特別だから、電車がない時間だけど、早朝3時から店を開けてるよ」と答えてくれた松井さんは、家族連れに、活きて跳ねる車海老と、平台の中央にならぶ寒ブリを勧めているさなかだった。
「今年の値段は手ごろだよ。ブリは刺身でも、照り焼きでもおいしいよ」という威勢の良い説明を聞くのは、神奈川県・秦野市からきた井上さんだった。9歳、14歳、17歳の子ども連れの5人家族である。この日は午前5時20分発の電車に乗り、築地には7時に着いたという。ここ5、6年は家族の年末行事になっているらしい。井上夫人に、築地の魅力を聞いてみた。「品数が豊富で新鮮でしょ。自分の目で確かめながら、品選びできるのが楽しい」。この日の予算は3万円と教えてくれた。
マグロ専門店の国虎商店の「ひげのおじさん」で名高い山本店長に、上手な買い物のコツを聞いてみた。「一言で言えば、店のいうことを聞くことですよ。うちは本マグロが主力。予算と、何人で食べたい、と言ってもらえば、みつくろえます。3000円で5人といえば、中トロの冊(さく)を安くして上げる。やや筋が入っていれば、5人分で2000円。味にこだわる人は特上本マグロもあるよ」。
大田区の田園調布からきた、守屋さん夫婦は、おいしいもの探しが目的だという。昨年はじめてきて築地が気に入った。とくに玉子の厚焼きがおいしかったから、妹夫婦を誘ってきたのだという。予算は別段考えていない、と鷹揚に構えていた。
場外市場には庶民的な魚種から、プロ好みの高級魚、特上品を扱う店まで多々ある。築地には政界や財界人が利用する有名な料亭が多い。それら料亭が利用する乾物屋のひとつが、明治時代からの老舗『吹田商店』である。吹田(すいた)専務に、今年のお勧め品を聞いてみた。「コブ巻きには日高昆布、ダシ昆布は利尻昆布、オセチにはどんこ椎茸かな」と決めかねていた。スーパーやデパートよりも上質な品物をそろえているから、自分の目で確かめてもらったほうがいい、と老舗の自信のほどをみせていた。
『魚河岸横丁』にならぶすし屋、ラーメン屋などは魅力的で、強い集客力を持つ。大勢のひとがそれを目的のひとつとしてやってくる。それだけに場外市場が最も混む時間帯は昼食の前後である。年末は夕方4時まで営業している店舗が多い。
多忙を極めるのは業者だけではない。東京都市場衛生研究所では、朝4時から監視員が市場に入り、セリ前の有毒魚のチェックと排除をおこなう。午前8時からは仲卸業者の店頭にならんだ商品を調べる。検査業務の担当者は、採取してきたサンプルの理化学検査、生物学検査などをおこなう。木村業務係長は、有害不良食品を市場に「入れない、出さない、作らない」の3原則を強調する。年末販売商品が早いものは1カ月前から築地市場に入ってくるので、11月24日から12月30日までは、年末特別監視体制を取っていると説明してくれた。
築地市場の最大の人出は12月30日、31日である。外国人や観光バスの団体もくる。祭り気分で足をむけてみると、市場の活気を肌で感じ、新しい発見があって愉しいものだ。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
パブリック・ジャーナリスト 穂高 健一
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