日本代表は、17日のウズベキスタン戦に2-1と勝利しグループリーグ3連勝F組を1位で突破した【写真:©AFC 】

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3連勝でF組を1位通過、ウズベキスタン戦の勝利に長友も手応え 「2011年とかぶるものがある」

 2大会ぶりのアジアカップ制覇を狙う日本代表は、17日のウズベキスタン戦に2-1と勝利しグループリーグ3連勝、F組を1位で突破。

 決勝トーナメント1回戦の相手は、E組2位のサウジアラビアに決定した。「グループステージに全勝して1位で突破し、決勝トーナメントに行くということ。選手たちがチームとしての目標に結果で示してくれた」と森保一監督は語る。

 3連勝と言ってもすべてが1点差で楽な戦いではなかったが、それぞれ違った試合展開の中で勝機を見出した結果だ。連係面や状況に応じたゲームコントロールなど、チームとして高められる部分はまだあるが、3試合目で大幅にメンバーを入れ替えチャンスを得た選手たちが、グループリーグ最大のライバルと見られたウズベキスタン相手に勝利をつかんだことは“総力戦”という意味でも大きい。長友佑都は、優勝した2011年大会に重ね合わせる。

「ホントに流れとしては締まってきてるなと思います。2011年の時もそうですし、やっぱ試合に出てない選手が出た時にホント活躍して、チームの士気を上げてくれるっていうのは、2011年とかぶるものがあるなと。またチームが一つになれる」

 3試合の戦いを振り返ると、トルクメニスタン戦(3-2)は大会初戦ということもあり、手探りのなかで入ったところから相手の健闘もあり苦戦を強いられた。前半27分に、堂安律が右サイドでボールを奪われたところからカウンターで一気にボールを運ばれ、アルスラン・アマノフに無回転ミドルを決められた。

 その後も攻めあぐんでいた日本は、後半にサイドハーフが開いて攻撃の幅を取ると、同11分に左の原口元気を起点に大迫勇也の技ありゴールで追いつく。さらに4分後、吉田麻也のロングパスを起点に原口が中に折り返すと、インサイドから飛び出していた長友が寄せてきたディフェンスと上手く入れ替わり、相手GKを越えるボールを入れると、中で大迫が流し込み2-1と逆転した。

 トルクメニスタンの反撃に耐えながら効果的な攻撃を仕掛ける日本は同26分、ボランチの柴崎岳からの縦パスがブロックされたこぼれ球を大迫が拾い、南野拓実がつないでペナルティーエリア内の左に流れていた堂安へ。レフティーMFは反転しながら左足を振り抜くと、ボールは相手DFの足に当たってゴールに吸い込まれた。そこから逃げ切りを図った日本だが、南野との交代で入った北川航也が浅い位置でボールロストしてしまいカウンターを受けると、GK権田修一がエリア内で相手を倒してPK。これを決められ1点差とされたが、その後の反撃をしのいで初勝利をつかんだ。

“総力戦”を成し遂げるうえで大きなウズベキスタン戦の逆転勝利

 オマーン戦(1-0)は右でん部の痛みが再発した大迫に代わり北川が、トルクメニスタン戦ではボランチで出ていた冨安健洋がセンターバックに下がり、ボランチに風邪から回復した遠藤航が柴崎とともに入った。トルクメニスタン戦の反省を踏まえてカウンター対策をしていたはずだったが、前半20分に南野のところでボールを奪われたカウンターで、相手の2枚にセンターバック2枚で対応するシーンを作られるも、なんとか失点を免れた。

 しかし、吉田の縦パスなどから高い位置に起点を作った日本は、前半26分に原口、堂安、南野の素早いパスワークでディフェンスをかいくぐり、南野のシュートはGKに阻まれるもセカンドボールに反応した原口がアフメド・アル・マハイジリに倒されると、ペナルティーエリア内のファウルと判定されてPKに。原口が右足で左隅に決めて先制する。

 その後、セカンドボールから相手が放ったシュートがペナルティーエリア内でブロックに入った長友の手に当たったもののノーファウル。後半はボランチを2人とも低めにして、攻撃はサイドからのカウンターに徹するなど安全策で逃げ切り、2連勝で決勝トーナメント進出を確定させた。

 グループ1位通過を懸けた対決になったウズベキスタン戦は日本がオマーン戦から北川を除く10人を入れ替え、ウズベキスタンもオディル・アフメドフなど中核の選手を外した。前半は慣れないメンバーで攻守ともに上手く噛み合わないなか、前半40分にスローインからの速攻でまんまと左サイドを崩され、カバーに入った槙野智章とサポートに来た三浦弦太が相手エースのエルドル・ショムロドフに突破されてゴールを決められた。

 しかし、わずか3分後に室屋成が鮮やかな個人技でサイドの1対1を制すると、ふわりと浮かせたマイナスクロスに武藤嘉紀が見事なヘッドで合わせて追いつく。そこから後半は日本のリズムが良くなり、伊東純也が右サイドのスペースに飛び込みクロスなど惜しいシーンが増えてくる。そして後半13分、右サイドから室屋が上げたクロスのセカンドボールから塩谷が左足を鋭く振り抜き、豪快なシュートを突き刺した。

「いやー、頭が真っ白になりましたね。チャンスがあれば今日、ボランチだったのでどうにかゴール前まで上がってミドルシュートを打ちたいと思っていたので、セットプレー崩れからでしたけど、自分の良さは一つ出せた」

 そう塩谷が振り返るゴールから、ウズベキスタンの放り込みの攻撃をセンターバックの三浦を中心に守る日本は、ダブロン・ハシモフの起死回生のシュートもGKシュミット・ダニエルが好セーブで阻んだ。3試合目にして初めて3枚の交代枠を使い切った森保監督が、大会のポイントに挙げる“総力戦”を成し遂げるうえで重要な勝利になった。

サウジアラビアに対し主力の体力面では有利か 勝利しても侮れない8強で待つ曲者

 F組1位になった日本は、ラウンド16でE組2位のサウジアラビアと対戦する。3試合目でカタールに0-2と敗れたサウジアラビアは、2連勝ですでにグループリーグ突破を決めていたが、そのカタール戦で日本ほどターンオーバーを使っていない。もし勝って1位突破となればそのままアブダビに残り、しかも1日休養できるメリットもあったが、それを達成できなかった。主力の体力面では、日本のほうに少し利があるかもしれない。

 それでもアルゼンチン人のフアン・アントニオ・ピッツィ監督は、4-1-4-1の中盤でタイトにプレッシャーをかけてボールを奪い、ポゼッションからでもカウンターからでも迫力ある攻撃を繰り出してくる。これまでの相手より日本が押し込まれる時間帯も出てきそうだが、苦しい時間をいかに耐えながら自分たちに流れを引き寄せるかが重要になる。森保監督の状況に応じた選手交代も、グループリーグのそれよりはるかにシビアになる。

 サウジアラビアに勝てればヨルダンとベトナムの勝者が準々決勝の相手になるが、比較的恵まれた相手と見られるチームが”落とし穴”を用意しているのは、アジアカップでは常識的だ。好調のヨルダンは典型的なカウンタースタイルのチーム。ウズベキスタンほど連動性はないが、その分も縦の推進力と鋭さがある。日本にとってはむしろやりにくいかもしれない。ベトナムは韓国人のパク・ハンソ監督がハードワークをベースとした強度の高いサッカーを植え付けており、その中でベトナム人アタッカーの個人技が発揮される。この2カ国より日本の力は上だが、特徴がある両チームだけに1つの心理的な隙が落とし穴になりうる。

 準決勝は順当ならイラン、決勝は韓国とオーストラリアが有力だが、中東の大会でもあるだけに、好調のカタールか開催国UAEなども可能性は十分にある。ウズベキスタンもベストメンバーで臨むオーストラリア戦では勝機があり、そこから決勝まで躍進してもおかしくない。

 2月1日にアブダビで行われる決勝まで、日本代表が勝ち残るためにはチームとしての大会中の成長が不可欠。準決勝の相手がイランとなれば、かなり厳しい戦いになることは間違いないが、まずはサウジアラビアに勝利して弾みをつけ、“総力戦”で駆け上がりたいところだ。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)