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アイドルグループNGT48の山口真帆さんの自宅に押しかけた男性2人が逮捕された問題をめぐり、SNSで様々な不確実情報が拡散している。

SNSで事件への関与が疑われたメンバーの太野彩香さんと西潟茉莉奈さんは、ツイッターで関与を否定している。太野さんは「私と、私の家族、親戚までも身の危険を疑われる言葉も目にし、今もまだ生きてる心地がしません」と投稿している。

メンバーの中井りかさんは、「憶測であれこれ言われて、みんな傷ついています。証拠もないままに、ネットで餌食されています」と強く反発している。

この騒動をめぐっては、様々な噂がSNSなどで流れており、複数の男性ファンや太野さん、西潟さん、中井さんを含むメンバーの実名や顔写真が入った相関図も作られ、広がっている。

騒動は落ち着く気配を見せないが、一般のネットユーザーが、事実かどうか、確認の取れていない情報をSNSで拡散させることには、どのような法的な問題があるのか。清水陽平弁護士に聞いた。

●不確実情報のツイートは「名誉毀損」になりうる

「不確実な情報を流すことは、名誉毀損となり、違法とみなされる可能性があります」

どんな場合に名誉毀損になるのだろうか?

「今回の場合でいうと、無関係の人について『関与していた』と広めてしまうと、誤解を与え、社会的評価を低下させることになります。

一般論としては、他人の社会的評価を下げる表現であっても、(1)その発言が公共の利害に関するもので、(2)発言の目的が公益を図ることで、さらに(3)発言内容が真実であるか、真実だと誤信したことに相当の理由がある場合であれば、名誉毀損は成立しません。

しかし、一般のネットユーザーが無関係の人についての不確実情報を積極的に流すことは、(2)や(3)を満たしません。そのため、このような行為は、刑法の名誉毀損罪に該当し、民法上も不法行為に該当するでしょう」

もし事実だったとしても、結論は変わらないのか。

「仮に書き込んだ内容が本当であったとしたら、名誉毀損に問われない可能性は高くなります。もっとも、面白半分で情報を消費しているだけであり、結果として本当だったということにとどまるのであれば、(2)の公的目的を欠くとして名誉毀損を問われる可能性はないとはいえません」

●リツイートだけでも責任が生じる可能性はある

積極的に発信していなくても、SNSで流れてきた不確実情報をリツイートするなどして、「拡散」させてしまった人にも何らかの責任が生じるのだろうか。

「そうですね。そうしたツイートを拡散した人にも、一定の責任が生じます。

裁判例では、ネット掲示板に書き込まれた中傷を、別サイトに転載した行為が、名誉毀損にあたると判断されたケースもあります。

リツイートは、他人のツイートをコピーして転載する行為と考えることもできるため、もし裁判になったとしたら、おそらく『自分がツイートしたわけではない』という言い訳は通じないでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitter、Facebookに対する開示請求でともに日本第1号事案を担当し、2018年3月、Instagramに対する開示請求の日本第1号事案も担当。2016年12月12日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版(弘文堂)」、2017年1月18日「企業を守る ネット炎上対応の実務(学陽書房)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp