日本代表「オマーン戦出場13人」を金田喜稔が5段階評価 「プライドを感じた」と絶賛したのは?
2連勝でグループリーグ突破も、オマーン相手に1-0と辛勝
日本代表は13日にUAEで開催されているアジアカップのグループリーグ第2戦に臨み、オマーンに1-0と勝利した。
2011年以来2大会ぶり5度目の優勝を狙うなか、初戦でFIFAランク127位の格下トルクメニスタンに3-2と予想外の接戦を演じたが、この日も同82位のオマーン相手に苦戦を強いられた。
序盤から再三にわたって決定機をつかむも決めきれず。前半28分にMF原口元気(ハノーファー)が自ら獲得したPKを決め、結局これが決勝点に。2連勝で決勝トーナメント進出を決めたとはいえ、流れのなかからゴールを奪えず、微妙な判定にも救われるなど日本にとっては消化不良な一戦となった。
そんな1-0という緊迫した試合展開で、勝利に貢献するパフォーマンスを見せたのは誰だったのか。1970年代から80年代にかけて「天才ドリブラー」としてその名を轟かせ、日本代表としても活躍した金田喜稔氏が、プロフェッショナルな視点でオマーン戦に出場した全13選手を5段階で評価(5つ星が最高、1つ星が最低)。前半の攻勢を生み、守備の貢献度も高かったMF南野拓実(ザルツブルク)に最高点を与え、中盤の守備を引き締めたMF遠藤航(シント=トロイデン)ら守備陣も総じて高い評価となった。
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<FW>
■北川航也(清水エスパルス/→後半12分OUT)=★★★
南野へのパスコースを生む動き出しなど、相手DFを引きつけるサポート役としての仕事はこなしていたが、最前線に位置する選手としては、それだけでは困る。得点を取る、あるいはアシストでゴールに直接絡む仕事を求めたいし、これまで多くのチャンスを森保監督から与えられながら、その部分での物足りなさを感じてしまう。前線からの追い込みなどディフェンス面では、先発に抜擢されたことへの覚悟を感じただけに、ストライカーとしての“結果”が欲しかった。
<MF>
■堂安 律(フローニンゲン/→後半39分OUT)=★★★★
森保ジャパンではこれまで、左サイドの選手が攻撃の起点となっていた。今大会は負傷離脱となった中島(翔哉/ポルティモネンセ)が足もとにボールを収めて、左サイドバックの長友と連動しながらリズムを作る。逆サイドの堂安は左が攻撃の起点となるため、自分の好きなタイミングで裏へ走ったり、ダイアゴナルに動いてボールを受けていた。それは第1戦のトルクメニスタン戦の後半に原口と長友が左でリズムを作った時も同様だったが、今回の試合では、開始早々に堂安がドリブルでサイドを切り崩すなど、ゲーム全体で右から攻撃の形を作るシーンが増えていた。堂安は攻撃のスイッチ役として機能しており、左右のバランス、バリエーションの増加という意味で今後の戦いに向けたプラス材料となった。
柴崎が取り戻した“雰囲気”「悪い状態は脱した印象だ」
■南野拓実(ザルツブルク)=★★★★★
確かに再三の決定機を決めきれなかったというマイナス部分はある。だが、オマーン戦の90分を通して、最も日本のサッカーにリズムを与えていたのは、間違いなく南野だった。相手の背後へ何回飛び出し、何本足もとでボールを受けたのか。シュートへの意欲を誰よりも示し、自分が最も欲しいタイミングとパスコースをチームメートに要求。そして守備面でも高い位置からプレスに行き、中盤にも戻って体を張り、ゲーム終盤にはドリブルをしながらボールをキープして時間を稼いだ。第1戦では消えていたが、短期間でここまでパフォーマンスを上げてきたところに、強いメンタリティーとプライドを感じた。決定力に課題は残したが、間違いなくこの試合のMVPだった。
■原口元気(ハノーファー)=★★★★
微妙な判定でPKをもらい、その1点が決勝点になった。一方、1試合を通じては、チームに影響力を与えられるプレーができなかった。試合直後にはチーム全体への不甲斐なさを口にしていたが、きっとそれはワールドカップ(W杯)経験者でありながら攻撃のリズムを作り出せなかった自分自身に向けられたものだろう。確実に1ゴールを奪ったことを加味して4つ星評価としたが、第1戦に比べると物足りないパフォーマンスだった。
■遠藤 航(シント=トロイデン)=★★★★
限りなく5つ星評価に近いパフォーマンス。コンディション不良から第1戦を欠場したが、持ち味である危機察知力や球際の強さはオマーンを相手に1試合を通して発揮してくれた。的確にスペースをカバーし、南野に出したシーンのような奪った後の好パスも披露。柴崎とのコンビネーションもスムーズで、期待どおりのことを淡々とこなした。ボランチの軸となる選手の復調ぶりに、森保監督もひと安心したはずだ。
■柴崎 岳(ヘタフェ)=★★★★
W杯時の良い状態には達していないが、森保体制になって以降の悪い状態は脱した印象だ。チームとしてなかなか得点を決めきれないなか、中盤で遠藤とともにリズムを作っていた。第1戦の冨安とのコンビで露呈していたバランスの悪さは改善され、お互いのサポートも的確だった。チームとしては後半に入り、次第に攻撃のリズムを失ったが、柴崎自身は時間の経過とともに本来の“雰囲気”を見せていった。淡々とボールを引き出しながら、捌いていく。前を向いた時に躊躇することなく前線の選手を動かすようなパス出しは、ここ数試合はミスをしたくないという意識が強く鳴りを潜めていたが、オマーン戦の後半では「このタイミングで動けよ」というメッセージを込めたパス出しが増えており、復調ぶりを感じさせた。
冨安の「30〜40メートルのフィード能力は秀逸」
<DF>
■酒井宏樹(マルセイユ)=★★★★
大きなミスをしたわけではなく、無失点に抑えた点も踏まえて評価は「4」としたが、本来の酒井が見せるベストな状態とは言い難い。立ち上がりにはボールをワンバウンドさせ、相手に体を入れられてファウルとなるシーンがあった。場合によってはイエローカードを受けるシーンであり、フィジカル、判断力の両面で第1戦でも感じた心身のコンディションの悪さが気になった。
■冨安健洋(シント=トロイデン)=★★★★
DF陣の中では最も「5」に近い「4」だ。第1戦では不慣れなボランチで持ち味を発揮しきれなかったが、本来のセンターバックに戻り躍動。30〜40メートルのパスをピンポイントで合わせるフィード能力は秀逸で、前半から効果的なボールを前線に送っていた。相手のラインを下げるという意味において、南野ら背後に抜け出す選手への高精度パスはチームにとって大きな武器になる。この大会を通じてさらに成長してほしいし、対人能力や高さも含めて大きな期待を抱かせてくれる選手だ。
■吉田麻也(サウサンプトン)=★★★★
ひやりとするシーンもあったが、要所のエアバトルでは相手にきっちりと勝ち、リーダーとして最終ラインもしっかりと統率できていた。アジアでの戦いはトータルで見た時に、湿度や暑さ、芝の状況、そしてレフェリーのジャッジなど、吉田が普段戦うイングランドとは異なる部分での難しさがある。そうした環境下で、レフェリーのジャッジが不安定な部分も踏まえながら、意識的にプレーをセーブして相手FWに対応していた印象で、そのあたりの経験値はさすがと思わせるものだった。
■長友佑都(ガラタサライ)=★★★★
フィジカル的にもメンタル的にも安定感はチーム随一。試合ごとのプレーの波がほとんどなく、この試合でも左サイドバックとして淡々と攻守をこなしていた。ある意味、アジアレベルのゲームだと1対1での応対にも余裕を感じるくらいで、日本の左サイドに安定をもたらしていた。
<GK>
■権田修一(サガン鳥栖)=★★★★
東口のコンディションが良くないこともあるのだろうが、1戦目で簡単にミドルシュートを決められるなど、あまり良くなかった権田に対し、森保監督がもう一度先発のチャンスを与えたように見える試合だった。チーム全体の守備が機能し、オマーンにそこまで決定的なシーンを作られなかったこともあるが、手堅いプレーを見せた。
チグハグだった武藤に対し、伊東は「切り札としての地位を確立」
<途中出場>
■武藤嘉紀(ニューカッスル/FW/←後半12分IN)=★★★
約35分のプレー時間がありながら見せ場を作れず、全体的に少し力が入りすぎていた印象。やらなきゃいけないという気持ちがあまりにも出すぎており、チームの攻撃のリズムに乗り切れずチグハグだった。もともと個の力で打開するタイプであり、局面で良さを出せれば良かったが、それも発揮できず。個人的にはセンターフォワードの二番手として期待していただけに、物足りないパフォーマンスだった。
■伊東純也(柏レイソル/MF/←後半39分IN)=評価なし
出場時間が短いため評価はできないが、限られた時間のなかでも持ち味は十分に見せた。チームとしてスピードが武器である伊東の使い方が明確で、スペースがあればシンプルにパスを供給。伊東自身も迷うことなくプレーできており、森保ジャパンの攻撃の切り札として地位を確立し始めている。
[PROFILE]
金田喜稔(かねだ・のぶとし)
1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。(Football ZONE web編集部)