情報誌の持参が値引き額を引き下げる可能性アリ

 “お客様は神様”などともいわれているが、当然ながらお客だからといって何をやってもいいというわけではない。新車時の購入商談でも、値引きアップをねらったものの、逆効果になりやすい“これはNG”というものがいくつかあるので紹介していこう。

NGなお客その1)値引き情報誌持参で商談を進める

「雑誌を持って行けばプレッシャーになるのでは?」と考えがちだが、多くのセールスマンは嫌な気持ちになるようだ。しかし“チャンス”とも思っているのである。

「あまりにも現実とかけ離れた目標値引き額が掲載されているときなどは、『雑誌に載っているのになぜできない』とお客様に突っ込まれます。『雑誌の条件は一部の地域の話ですよ』みたいなお話をしても納得していただけないので苦労します」と現場のセールスマンは語ってくれた。

 だが続けて「しかし逆の場合は絶好のチャンス到来です。つまり、現実世界で飛び交っている値引き条件よりも少ない目標値引き額となっているケースもあります。その時『雑誌の値引き額にしてくれ』といわれたら、まだまだ値引きアップできるとしても『ハイハイ』と二つ返事で注文書を作ってサインをもらいます」とのことであった。

 新車の値引き条件というのは“生き物”ともいっていいもので、地域差もあるし、商談のタイミング次第で大きく変わることもあるので、雑誌の値引き情報はあくまで情報の一つとして見ておくほうがいいだろう。

「あまりにしつこいお客様は、無理して受注に持ち込んでも後々トラブルになりやすいので、『ライバル車ほど値引きは拡大しません』と白旗をあげてほかのディーラーへ行ってもらうようにします」とのことでもあった。

一度商談しただけで「知り合いのセールスマン」扱いは逆効果

NGなお客その2)自称“新車購入事情通”同伴での商談

 意外と多いケースとしては、直近で新車を購入したとか、“新車の値引きにはうるさい”という、いわゆる“事情通”を同伴して商談を進めるケースとなる。

「新車購入というのは、下取り車の有無やローンを使うか否かなどで値引き条件が変化しますので、過去の成功体験を持ち出されても、まったく同じ条件にはなりません。しかも、購入を最終的に決めてくれるのが同伴者様なのか、実際に購入されるご本人様なのかがはっきりしないことも多いので、こちらとしても値引きアップなどは慎重にならざるを得ません」とのことであった。

 もっとやっかいなのが、それまで何の接点もなく、フリーで来店したので接客応対し、そのまま契約となっただけなのに、“知り合いのセールスマン”扱いされるのも抵抗があるとのことである。

 事情通氏によると、「新車販売の世界では、契約して納車をしてからがお客との付き合いが始まるとされています。そして再び同じセールスマンから新車を代替えしてもらうことで初めて“人間関係が構築できた”ということになります。しかし、最近は『5〜6年前に新車商談をした(購入はしていない)●●ですけど』といった感じでやってくるお客も目立つようです。覚えていてもらうことはセールスマンにとっては嬉しいようですが、はっきりいって、それで際立って値引きが拡大するということはまずないです」とのこと。

 このような浅いつきあいなのに、新車購入を検討している自分の知人を連れてきて「値引きをなんとかして欲しい」といわれても、特別な値引きアップはまず期待できないだけでなく、“最終決定者がわからない”ということも加わり、値引きが伸び悩むこともある。

 浅いつきあいではなく、有力なコネを持つような知人がいたら、まずは自分ひとりで商談を進め、深追いしない範囲での値引き額などの入った見積書の作成ぐらいまで進めておくこと。そして条件を詰める段階に「じつはとりあえず自分だけでまわってみたんだけど」と知人に相談すれば、知人と繋がりのあるセールスマンが紹介される。すでにある程度値引きを引き出しているのだから、セールスマンは当然それ以上の値引き額を提示しなければ、紹介した知人の顔をつぶすことになるので、値引きアップに有効となるのだ。知人(太いコネのあるレベル)はあくまで奥の手なのである。

 また例外的なのは、娘さんのクルマを購入するために、父親が同行するケース。「このようなケースでは、車両代金を払うのはほとんどのケースでお父さんとなります。どのクルマにするかは娘さんに当然選択権はありますが、値引きなどの交渉に関してはお父さんが交渉相手となりますし、お父さんの心をつかめば『このクルマにしなさい』ということになるのも期待できます。普段は若い女性ひとりでディーラーに新車を見に来ることなどはまずありませんので、親御さん同伴でディーラーにくるということは『買う気満々』という判断となります」(事情通)。

昔と違い競合車種を増やすのは得策ではない

NGなお客その3)比較検討車種がやたら多いひと

 大昔は、例えばカローラならば、ライバルメーカーでもサニー、シビック、ファミリアといったキャラの完全に被ったライバル車をラインアップしていたので、複数車種で激しく値引き額などを競い合わせて商談を進めていた。しかし、いまどきはそのような競合関係が成立するのは、軽自動車やコンパクトカー、5ナンバーボックス型ミニバンぐらいとなっている。それなのに、いまだに3車種以上を競い合わせて商談を進めてくるお客もいるとのこと。

 事情通氏は「いまどきは、メーカーウエブサイトには詳細な商品情報だけでなく、諸費用なども計上できる、“見積りシミュレーションコーナー”が用意されています。さすがに値引き額までは計上できませんが、下取り査定額の計上やローン計算のシミュレーションまでできます。つまり、自宅で十分購入希望車種だけでなく、予算設定などの絞り込みができますので、本命1台もしくは、せいぜい対抗1台ぐらいで商談を進めるのが一般的です」と語ってくれた。

 もちろん、昔ながらの手法で5〜6台を横並びで比較検討していくことは問題ではない。ただ販売側から見れば、“購入意思が固まり切れていない”などと判断されることも多く、値引きも様子を見ながらとなるので、なかなか拡大していかないなど、メリットよりもデメリットのほうが目立つようになってきている。

 ライバル関係のはっきりしている、ノア/ヴォクシー/エスクァイア、セレナ、ステップワゴンでも、「ノア3兄弟については他メーカー車と競合することはほとんどないということで、他メーカーライバル車の情報はあまり気にしていない様子です」とのことであった。

 ヴォクシーを扱うネッツ店は同じ地域に資本の異なるディーラーが複数あるので、ヴォクシー同士の競合が可能、ノアも都市部を中心に同じ地域内に資本の異なるカローラ店が複数あるのでノア同士を競わせることが可能。エスクァイはトヨタ店とトヨペット店での併売なので、エスクァイア同士で値引きを競い合わせ、あとはせいぜいノア3兄弟車同士で値引きを競い合わせれば十分納得のいく値引き条件を引き出すことができるのである。

 セールスマンの世界もひと不足は深刻であり、商談1件あたりにかかる時間のセーブなど、効率の良い販売活動もセールスマンの重要な人事評価基準となっているのである。