シンガポールにある、お金持ちが利用する高級会員制施設。お金持ちは「持ち家」も含め、「3つのこと」にこだわっているという。その3つとは何か(筆者撮影)

ファイナンシャルプランナーの花輪陽子です。シンガポールでお金持ちと日々接していると、彼らにはお金に関して独自の思考をしていることがわかります。今回は、シンガポールのお金持ちが普段から実践している「お金が着実に貯まる思考法」を3つお伝えします。誰でもできるので、ぜひまねをしてみてください。

まず1つ目は、彼らの多くが「持ち家選び」を何よりも重視していることです。「あなたたちも、ゆくゆくはシンガポールに家を買うんでしょ」と言われることがよくあります。シンガポールの不動産は中心部だとファミリータイプで数億円ということもざらですが、中国人やインド人の友人たちはこうした物件を30代で購入していることも少なくありません。また、数十億円といった物件も珍しくないセントーサコーブ地区に不動産を買った友人もいます。

利回りが低くても「不動産」にこだわる理由

では、なぜ彼らは高額な不動産を買うのでしょうか。それは資産になるからです。アジア諸国の不動産の「表面賃貸利回り」(必要経費を考慮せず、家賃収入額だけで計算した利回り)を見ると、シンガポールは現在、不動産価格が高くなりすぎているので、おおよそ年利2.5%と高い利回りは期待できません。しかし、もし借りて賃料を払い続けると家賃は大家のものになり、手元には何も残らないので、利回りは低くても自分のものにしたいという考え方のようです。また、アジア圏では香港同様、不動産が高騰していますが、国土が狭いこともあり物件数が少なく、高額物件は希少価値が高いため、高額でも値下がりしにくいと言われています。

富裕層の中にはこうした高額物件を現金一括で買う人もいますが、若いエリートサラリーマンの多くは日本同様、ローンを組んで購入するのが一般的です。会社員という信用を利用して、できるだけローンを借りて不動産を買い、返済しては資産を増やすという戦略の人もいます。もちろん、日本の会社員でもマンションの区分をいくつも所有している人も少なくないでしょう。

また、不動産のほかに、メンバーシップを購入する富裕層もかなりいます。メンバーシップというと、日本人にはゴルフくらいしかなじみがないかもしれません。日本にも東京アメリカンクラブ、横浜カントリークラブ、神戸外国倶楽部といった会員制の社交クラブがあります。限られたネットワークをお金で買うことができるのが、メンバーシップ制度です(紹介制の場合もあり)。

シンガポールではアメリカンクラブ、タングリンクラブ、ラッフルズタウンクラブ、タワークラブなど、数多くのメンバーシップがあります。会員向けにレストランやスポーツ施設などを提供するとともに、施設のイベントなどで会員同士が交流できるなどのメリットがあります。人気のないメンバーシップの売却価格はどんどん落ちていく一方で、伝統のある格式高いメンバーシップは高値で取引されています。メンバーシップを持っている友人について行けば、会員でない人でも施設を利用できるので、私自身も、主要なところはほぼ行ったことがあります。

生まれたばかりの子どものために終身保険に入るワケ

2つ目が、保険です。シンガポールのお金持ちは、掛け捨てタイプの保険を選ばない傾向にあります。人気なのは、死亡保険金を確保しながら解約返戻金を増やしていく終身保険タイプです。特に、シンガポールでは予定利率が4%程度の保険商品もあるため、そのリターン分だけで掛け捨て部分が実質チャラになるため、こうした資産性の高い保険が選ばれる傾向にあります。

富裕層の中には、生まれたばかりの子どもを被保険者にした終身保険の一種を買う人もたくさんいます。もちろん、贈与税がないという理由が大きいのですが、年齢が若いうちは掛け金が安いため、将来的に資産価値が高まる商品を、安いうちに買っておきたいという思いが強いようです。

日本では、遺産が親族のあらそいの種になるのを恐れて、なるべく自分の存命中にお金を使いたいという人が少なくないようですが、海外の富裕層の多くは、いかにして次の世代までお金を残すかを常日頃から考えている人がたくさんいます。そのため、できるだけ不動産や保険は安いときに買いたいので、被保険者の年齢が若く保険料が安いうちや、保険会社がプロモーションを行っているときなどにまとめて買うようです。人によってはいくつもの保険(すべて資産価値があるもの)を契約しているので、自分の老後や次世代への事業承継は盤石なのです。

3つ目は、普段の買い物でも資産価値を気にすることです。洋服、バッグ、時計などの高級ブランド品を使い古したり、飽きたりしても、捨てることなく「セカンドハンド」(中古ブランド品を扱うショップ)に売りに行く人がかなりいます。なぜ、億単位の資産を持つ富裕層なのに、こうした庶民的な行動に出るのでしょうか。

日本では100円ショップが全国津々浦々に展開し、100円ショップのグッズを活用した節約技がブログなどでも話題になります。シンガポールにも日本の100円ショップがあって、庶民には大変人気があります。

しかし、シンガポールのお金持ちは、細々とした安いものはあまり買わない傾向にあります。100円ショップなどで買ったものは長く利用できないからです。もちろん一度しか使わない消耗品であれば、安いに越したことはないので、時と場合によっては活用するでしょう。しかし、ほとんどのものに関して、厳選した質のよいものを長く使う人がほとんどです。そして、使わなくなったら価値のある間に躊躇なく売ります。そのため、買い物をする際も、単に「はやっているブランド品だから」という理由で買い物することはありません。そのブランド品が将来的に高値で売れるかどうかを意識しています。こうして普段身に着けるものも、資産の一部として考えているのです。

「何年も使って傷だらけだったのに、こんなに高く売れたのよ」と、人気ブランドのアクセサリーを買取ショップに持って行った友人は、うれしそうに話してくれたことがありました。

レアな時計なら、故障していても買値より高く売れる

「お気に入りの(レアもの)時計が故障したから売りに出したら、買値よりも高く売れた」という話も聞きました。アジア圏でロレックスが人気なのは、リセールバリュー(中古品の再販価格)が高いからだと言われています。ロレックスより高い時計はいくらでもありますが、それらの値下がり幅はものすごく高いブランドが少なくないのです。そのため、資産価値のあるロレックスをしている富裕層が多いのもうなずけます。


自動車マニアの友人も高級外車の中古をうまく回せば、トントンくらいで売れると言い張ります。かくいう私も自宅で眠っていたバッグや洋服、靴などを売りに出し、思ったよりも高く売れるので味を占めて売りまくっています。

もちろん、買った値段、そのものの需要と希少価値、売るタイミングなどの条件を満たさないといけないので、毎度うまくいくわけではありません。ただ、少なくとも外国で名が知られているブランドのものはコンディションがやや悪くても、多少の価値はつくようです。

お金の使い方に正解はありません。海外不動産に投資をしている富裕層の中には、利益が出ていない人もいます。保険も資産性がある保険の中にも掛け捨て部分があります。場合によっては、掛け捨てを選ぶことも有効です。しかし、お金持ちは掛け金の額も大きいので、掛け捨てを選ばない傾向にあるようです。

不動産ローンの支払いや保険料の支払いが終われば、少なくとも不動産は資産になり、保険契約には解約返戻金が蓄積されることになります。保険に入っていなかったら、ほかのことに消えていたであろうお金が蓄えられているわけです。私たちがすべてをまねすることはできませんが、不動産、保険、自動車、時計など、大きな買い物をする際は、資産価値があるのかどうか(売るときのことも)を気にしておいたほうがよさそうです。