12日放送、テレビ東京「追跡LIVE!SPORTSウォッチャー」では、Jリーグで新人王まで獲得したカレン・ロバートの波乱万丈なサッカー人生を特集した。

ピアノやバスケットボールの才能もあったというカレンは、名門・市立船橋高校で活躍。Jリーグ入りしてからも2年目に新人王となり、2010年にオランダのフェンロへ移籍を果たした。

だが、イングランドへの移籍を望んだものの、交渉が難航。結果的にタイのクラブへ移籍することになり、これが転落の始まりとなる。プロらしからぬ周囲に「第一線としてのキャリアは終わった」と感じたというカレンは、その後も韓国やインドに移籍。選手としてのピークが過ぎてしまう。

さらに、当時の代理人に騙され、決まったと思っていた移籍が実現しないという前代未聞の出来事もあった。「ほぼ1年騙されて、1年チームがないっていうのは、次に移籍するのに相当難しくする材料」。プロとして致命的な空白期間ができてしまったのだ。

そのカレンが昨年プレーしていたのは、プロアマ混合のイングランド7部チーム。月収はわずかに約15万円。往復3時間半をかけて公共バスで通勤し、帰りは車中で手作り弁当の夕食をとる。

環境は劣悪で、ロッカールームのシャワーは土曜しかお湯が出ない。グラウンドも芝があちこちめくれ、客席の塗装は剥げ、照明の電球も切れたままという状況だ。

家こそコーチを務める「ロンドンサムライアカデミー」の会長が無償で提供してくれ、まるで貴族の屋敷のような大豪邸だが、着るものはほぼ一緒。スパイクは2足しかない。

癒しは家族。妻と6歳の息子を日本に残して単身赴任していたカレンは、「自由にやらせてくれる奥さんには感謝しかない」「こんなの許してくれる奥さん、そういないと思う」と妻に感謝した。

プロアマ問わずに出場するFAカップで勝ち進み、ステップアップを狙っていたカレンだが、予選で格下相手にまさかの敗退。希望が消え、5月から自らがオーナーを務める千葉県社会人1部リーグのローヴァーズ木更津FCでプレーする。

そのローヴァーズこそ、カレンの新たな人生だ。タイ時代の年俸4000万円を投じてつくったクラブから、将来のJリーガーが巣立つことを夢見ている。

「組織自体がJリーグを目指している」というカレンは、「サッカー以外の時はローヴァーズのことで頭いっぱい」「超クレイジーなくらい、本当にローヴァーズのことばっかり考えている」と述べた。

クラブ設立のきっかけにもなった盟友が、オランダ時代のチームメートでもある吉田麻也だ。

インドア派だったカレンだが、吉田が「普段会わないような人と会わせてくれて、いろんな話を聞かせてもらって、そのつながりでローヴァーズって会社も始められた」という。カレンは「麻也と離れてから自分から人に会いに行ったり、オレを変えてくれたのは麻也」と話す。

一方、吉田は「Jリーグの選手は(カレン)を手本にしたほうがいい」とコメント。「Jリーガーとして次の道がなくなった時に何もない人もたくさんいる。でも(カレンは)そうなった瞬間にこの選択ができるようにセカンドキャリアの準備をしていた。若い選手は学ばなきゃいけない点」と述べた。

少年たちに背中を見せるために現役を続けている33歳のカレンは、「みなさんの期待に応えられなかったのは申し訳なかったですけど、まだ元気にやっているというのは知ってもらえれば」とコメント。「ちょっと最初に輝きすぎちゃったかな」と、やや寂し気にも見える笑顔を浮かべる。

だが、カレンは「騙されたけど、めちゃくちゃむかついたけど、振り返れば、あそこがなかったら、ローヴァーズがなかったって思うと、許しちゃう。許してあげる」と、新たな人生に向けて切り替えている様子もうかがわせた。