恋とは、どうしてこうも難しいのだろうか。

せっかく素敵な出会いをしても、相手に「また会いたい」と思わせない限り、デートにも交際にも発展しない。

仮に、順調に駒を進められても、ある日突然別れを突き付けられることもある。

しかし一見複雑に絡み合った恋愛でも、そこには法則があり、理由がある。

どうしたら、恋のチャンスを次のステップへ持っていけるのか、一緒に学んでいこう。

今回は、定番デートプランでしくじった男のミスという宿題を出していた。

あなたはこの宿題が解けただろうか?




裕二と出会ったのは、知り合いに呼ばれて行った忘年会だった。

忘年会といえども様々な年齢と業種の人たちが集まっており、人見知りの私は物怖じしてしまい、隅っこにいるしかない。

そんな私に話しかけてきてくれたのが、裕二だったのだ。

「麻未さんは、誰の繋がりで今日来られたんですか?」
「私は幹事の悟さんに誘っていただいて。裕二さんはどなたの繋がりですか?」

とても気さくで話しやすく、私の緊張も徐々に解けていく。もっと話したいなぁと思っていると、裕二はさらりと誘ってきてくれた。

「良ければ、今度二人でご飯でも行かない?」
「え?私でいいんですか?はい、もちろんです」

こうして、私たちはデートをすることになった。

最初は良かったし、素敵な人だと思っていた。しかし私は二回デートをし、“なんか違う”と判断したのだ。


完璧なデートプランのはず。それなのに、どうしてフラれた?


解説1:お決まりのデートプランだと悟られたら終わり


裕二が初デートに指定してきた店は、麻布十番にある素敵な店だった。

「わ〜プールだぁ♡東京タワーも綺麗に見えますね!!」

テラスにはプールがあり、しかも真っ赤にライトアップされた東京タワーが見える。裕二は特等席を予約してくれていて、私のテンションは上がる一方だ。




しかし、せっかくの最高の景色も裕二の一言で少し霞み始める。

「よかった、喜んでもらえて。この店好きなんだよね」
「よく来られるんですか?」
「そうだね。もともと十番に住んでいたから、何かある時は毎回利用していたくらい。でも最近は引っ越して頻度が低くなっちゃったけど」

-よく来るんだ・・・しかし毎回、誰と来るんだろう?

こんな素敵なお店、何度でも来るのは当然のこと。だから訪問頻度が多いことは構わないのだが、この店のロマンティックな雰囲気から考えると、その相手は明らかに男性や仕事相手ではなさそうだ。

そして、彼にとってデートの定番の店だとわかった途端、こちらとしては白けてしまう。

初めてのお店へ連れて行く必要はない。ただ、毎回来ていることを相手に悟られたらダメなのではないだろうか。

「へぇ〜十番在住だったんですね!今はどちらにお住まいですか?」

話をそらしつつも、この景色を何度違う女性と見てきたのか気になり、悶々と考える。

「じゃあ麻未ちゃん、普段は自炊が多いの?」
「そうなんです。仕事が終わるのが結構遅いので、そこから外食となるとみんなとなかなか時間が合わないんですよね」

普段仕事が遅く、こうして食事へ行けるのは週末限定だ。そう伝えると、裕二は早速次のデートの提案をしてきてくれた。

「『TSUBAKI』とか行ったことある?今度行かない?」
「名前だけは知っているんですが、行ったことないです!行きたいな〜♡」

港区内での超有名店だ。“さすが裕二さん、オトナの魅力があるなぁ”と思いながら、私は次回のデートがとても楽しみになってきた。

しかしこの日、2軒目へ移動した際に、裕二にとって今日のデートは何も特別ではなく、ただの”いつも通りのプラン”だと思い知らされた。

2軒目に裕二が連れて行ってくれたバーは代官山にあった。駅から遠いためタクシーでしか行けない上、入り口が分かりにくく、いかにも業界人が好きそうな感じの雰囲気を醸し出している。

「ここも素敵なバーですね!芸能人とかも多そうだし」
「そうなんだよね〜。ここのお店は、フルーツ系カクテルが女性達から人気あるんだよ。麻未ちゃんもどう?」

-ここにも、一体何人の子を連れてきているの!?

女性達の“たち”って、誰なのだろうか。毎回ここでフルーツカクテルを飲むのが、裕二のデートのお決まりコースなのだろうか。

男性が“初めて♡”と言われるのが好きなように、女性だって相手と一緒に、何か初めてのことを経験できると嬉しいのに・・・。

何だかドキドキしていた自分が虚しくなり、すっかり酔いが冷めてしまった。しかし1回目のデートだけで判断するのは惜しすぎる。

そう思い、私は次のデートにかけたのだ。


2回目のデートで、裕二が絶対に言ってはいけなかったセリフとは?


解説2:毎回同じパターンで口説けると思ったら、大間違い


2回目のデートは、宣言通り『TSUBAKI』だった。ずっと来てみたかったお店で、改めて裕二に対する尊敬の念が増す。

「裕二さんって、本当に色々お詳しいんですね♡」

キャッキャと喜びながら裕二を褒めると、彼もとても嬉しそうな顔をしている。しかしここでもまた、裕二は一言多かった。

「麻未ちゃんみたいに、そんな素直に喜んでくれると嬉しいなぁ」
「そうですか?他の方々はそんなに喜ばないんですか?」
「まぁね・・・他の女子たち、特に港区系は下手すれば僕より舌が肥えているからね」

-あ・・・ここも、私以外に何人も連れてきていらっしゃるんですね。

そう思うと、はしゃいでいた自分が恥ずかしくなる。

他の女の子達はもっと冷静だっただろうし、こういう所に連れてきてもらうなんて当たり前のことのようだ。

そして、彼の周りにはそういう“連れていく”女の子がたくさんいる。

とりあえず、気にせず食事とワインを楽しむことにした。実は私は生粋のワイン好きで、美味しいワインを飲んでいるだけで幸せな気分に浸れる。

「麻未ちゃんって、もしかしてワイン好き?」
「ワイン大好きです〜♡」
「そしたらこの後、もう1軒、別のワインバーへ行こうか」

こうして、更に別のワインバーへ移動することになった。

しかし、私のワイン好きを汲んでそのバーにしてくれたのかと思ったが、移動してすぐに、それは大きな勘違いであることを静かに悟る。

1軒目から程近い場所にあるその店は、内装も素敵でシックな感じだったが、そこにチェスがあった。

そして裕二は、慣れた手つきでそのチェスをテーブルの上へ持ってきたのだ。

「麻未ちゃん、チェスできる?」
「え〜チェスですか!?できないですけど、できたらかっこいいですよね」
「教えるから、一緒にやろうよ」

そして、これまた当然のようにプレーをし始めた。




-これは、かなり慣れているな・・・

まるで定番のシナリオのような、女性を口説き落とす時の一連の流れ。

名店へ連れて行き、お気に入りのバーへ行って、チェスというアイテムを使って自分のテリトリーへ誘い込む。

そんな流れが簡単に読めて、私は白けていく。

そしてこの後は、自分の得意なチェスでカッコイイところを見せてから、口説くのだろう。

そんな手の内が見えれば見えるほど、こちらの気持ちは冷めていくのに、極め付けにこのセリフを言われた途端に、私の気持ちは完全にシャットダウンした。

「まだ飲める感じ?そしたら、僕の家で飲まない?良いヴィンテージのワインがあるんだよね」

-あなたのワインは、女の子を誘うために置いてある物ですか?

若干引きながらも、私は笑顔で丁重にお断りした。

裕二が言ったこのセリフは、まだそこまで関係が深まっていない女性には、最も言ってはいけない言葉だと思う。

下心が丸出しだし、デートの後の誘い文句を言い慣れている感が否めない。

何人の女性がこの常套句で彼の家へついて行ったのかは知らないが、毎回裕二はこの流れで女性を誘い、クロージングに入るのだろう。

良いお酒があると言って自宅へ誘う男性は多々いるが、果たしてそれで女性は本当に喜んでいるのだろうか。

好きな人だったらいいが、まだ付き合ってもいないなら全く紳士的ではないし、むしろ下心を露呈していて逆効果だ。

ドヤ顔でこんなセリフを言う裕二に対し、“結局は体目当て?”などと懐疑的にもなってくる。

「すみません、今日は帰ります。楽しかったです!」

そう言って笑顔で去りながら、“他の女性と同じパターンで口説けると思ったら大間違いだ!”と胸の中で叫んでいた。

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必死になりすぎた女のミス