女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです 。

お話を伺った直井千緒さん(仮名・33歳)は、IT関連会社に契約社員として勤務し2年になります。月収は手取りで18万円。ここ数年間はギリギリの生活を続けているといいます。

千緒さんは肌が抜けるように白く、黒髪のロングヘアが美しい女性です。取材当日は、ラベンダー色のモヘアニットにチェックのロングスカートを合わせており、男性からモテそう。

「これから、1時間3000円で50代の男性の立ち飲みに付き合うというバイトをするんです。レンタル彼女とまではいきませんが、話し相手になりつつ、いろんな場所に同行するという仕事です。いつもはデニムにトレーナーなのですが、一応仕事だからかわいい格好をしようと思って」

名門と言われる大学を卒業し、22歳から28歳までの6年間を、大手企業で正社員として働いていた。

安定した会社を辞めたきっかけを伺いました。

「仕事は楽しかったのですが、様々な小さな不正がバレてしまい、会社に居づらくなったので辞めたのです。具体的には、使い込みというか……といっても、大した金額ではないですよ。当時、付き合っていた彼がギャンブル好きで、毎週末競馬場に行っては10万円単位で負けてくるんです。彼は無職だったから、お金がいくらあっても足りない。お金が全然ないときに限って、会社で経費を建て替えなくてはいけないことが重なって、消費者金融で3万円借りたのですが、それがどんどん膨れ上がって、交通費の申請とかを盛るようになって……」

カジュアルに借金ができることで、人生がおかしくなったと語る千緒さんは真面目な性格。当時の上司から、「会社は辞めなくてもいい。違う部署で別の仕事をして、ほとぼりが冷めたら戻ってこい」と言われたそうです。

「同じタイミングで、ウチの会社で行なわれていた組織ぐるみの原料の産地偽装が問題になったんです。『私の交通費や経費でガンガン言ったくせに、会社もかよ』と思い、モチベーションがダダ下がり。どうにもこうにも前に進めない。それに借金があると、いろんなことが気がかりになり、まともな仕事をしようって気持ちにならないんですよ」

結局、会社を辞めると同時に、交際していた男性と別れることになります。借金は全部で120万円になっていたと言か。千緒さんは財形貯金と生命保険の解約金で全額返済したそうです。

「退職金こそ払われませんでしたが、会社を辞めてから戻って来たお金が多く、『正社員でいると、いろんなメリットがある』と思ったのですが後の祭り。彼はいないし仕事もないので、在宅勤務ができる仕事や、飲食店のアルバイトで2年くらい過ごしていました」

その間、アルバイト以外ほとんど家から出ず、友達とも会いたくなかったと言います。

「退職の経緯を知っている人に会いたくなかったし、結婚している友達の幸せそうな姿を見るのも辛かったので外界からの情報をシャットダウンして、ひたすら小さな世界で生きるようにしていました。そうすると収入が減るんですよ」

家賃の7万円を稼ぐのが精いっぱいという月もあったそうです。

「それでも、社会に出るのが怖いんです。だってみんなキラキラしているし、一生懸命仕事をしている。私はあまり真剣に仕事ができないし、したくないんです。言われたことはやるけれど、それ以上のことはしたくない。私は見た目と出身大学がいいので上司や先輩が『この子は優秀。成長がモチベーションになるタイプだ』と勝手にカン違いする。でも私は当然のごとく期待には添えません。がっかりされるのも辛いし、期待に添えない自分もすごくイヤになる。そこをダメ男に付け込まれるんです」

クレジットカードのキャッシングはいつも限度額10万円の全てを使っている。

最後の望みをかけた必死の婚活、卒業証書を持ってお見合いの場所へ……〜その2〜に続きます。