どんな投稿も、それを見る人がいるということを忘れてはならない(写真:tuaindeed/iStock)

2018年11月に愛知県内のTSUTAYAで働く女性アルバイトが、店に訪れた客が韓国の男性アイドルグループ「防弾少年団(BTS)」について悪口を言ったことに腹を立て、客の個人情報をさらすことができるとツイッターに投稿したことで批判が相次いだ。

このBTSファンと見られる女性アルバイトは、客が「韓国人の紅白取り消しになった男のアイドル、頭おかしい」とBTSの悪口を言ったことに対して、「個人情報を取り扱う仕事上、名前から性癖まで暴露可能だ」と投稿。これが守秘義務違反に当たるとして、炎上騒ぎになった。その結果、ネット上では彼女の在籍する大学や、内定先の学習塾まで特定、拡散されてしまった。

問題のツイッターアカウントは削除されたが、TSUTAYAでは女性アルバイトに対して解雇処分を検討、さらに内定先の大手学習塾では同名の内定者がおり、調査を進めるとしている。

このようにSNSで軽はずみな投稿をすると、勤務先に不利益を与えたり、その代償として処分されたりすることがある。今回はSNS上での不用心な発言のリスクと、その注意点について解説したい。

有名企業で働く人ほど高リスク

まず、炎上事件を起こさなくても、SNSでの投稿が問題視されることは少なくない。東京高裁の岡口基一裁判官は実名でツイッターを利用。現職の裁判官ながら、ユニークな発言が注目を集めていた。しかし過去に上半身裸で縄に縛られた男性の写真や、「これからも、エロエロツイート頑張るね」などの発言を投稿しており、東京高裁長官から口頭で厳重注意されている。

2018年5月には拾われた犬の所有権が飼い主と拾い主のどちらにあるかが争われた裁判の記事のリンクと併せて、「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?」などと投稿したことで犬の元飼い主から抗議を受けたうえ、最高裁で「当事者の感情を傷つけた」として戒告処分を受けた。

ツイッターの投稿で、書類送検されてしまった例もある。日産自動車が正式発表する前に、自動車部品メーカーの元社員が2017年にフルモデルチェンジした電気自動車「リーフ」の写真をツイッターに投稿。元社員は、不正競争防止法違反の疑いで書類送検されてしまった。投稿内容によっては偽計業務妨害罪、信用毀損罪などに当たり、会社から賠償請求されたり、解雇されたりすることもある。

SNSでは著名人や有名企業、有名大学など「ブランド属性」のあるアカウントは、炎上リスクが増す傾向にある。たとえば、アカウントや投稿に「TSUTAYA」「裁判官」「日産自動車」などのブランド属性があると、注目を集めやすい。そこに守秘義務違反や、公序良俗に反する行動などの非があると糾弾されるわけだ。

また、有名企業や高偏差値の大学などに所属している場合は、恵まれた立場と見られ炎上しやすい。たとえアルバイトの立場でも、TSUTAYAの例のように有名チェーン店に所属しているだけで投稿が炎上しやすくなるので注意してほしい。

「過去の投稿」が炎上するケースも

2018年6月、人気ライトノベルを原作とする『二度目の人生を異世界で』のアニメ化が中止になった。というのも、原作者のまいん氏が過去にツイッターで「日本最大の不幸は、姦国(韓国の意味)という世界最悪の動物が住んでいることだと思う」など、韓国人や同性愛者などを差別、誹謗中傷していたためだ。

投稿自体は、まいん氏がプロデビューする前のものだった。しかし後に有名になったことで、過去の投稿が問題視され、不利益を被るケースもある。最近は海外でも同様のケースが多く見られる。

またSNSを利用するなら、慎重に扱うべきテーマを知っておいたほうがいい。時代ごとに問題になりがちなテーマは異なり、過去に通用したものが今はNGということは多い。

たとえば2018年夏に、花王「エッセンシャル」公式ツイッターアカウントが「山崎ケイってちょうどいいブスじゃなかったっけ?いい女になっているその秘密は?」とPR動画に誘導するための投稿をし、女性蔑視と批判されて炎上した。

炎上とまではいかないが、2019年1月にも女優の安藤サクラが出演する西武・そごうのPR動画「わたしは、私。」も、ツイッターを中心に物議を醸した。動画内で描かれた「女性にパイをぶつける」表現に違和感を覚える女性が多かったためだ(一方で、肯定的に捉える女性もいた)。

インスタグラムも要注意

ツイッターだけじゃなく、インスタグラムの投稿が火種になることもある。「#給料」や「#給料明細」「#内定通知」「#合格通知」などのハッシュタグを検索すると、実名や社名などが詳しくわかるものが多数見つかる。意外かもしれないが、インスタグラムを家計簿代わりに使っている人は多い。また、内定や合格をとれた喜びをインスタグラムで伝えるために、個人情報が記された写真を使用しているケースは少なくない。

これだけで罪に問われるわけではないが、何の断りもなく公開したことが、後で会社側にバレると問題視される可能性は十分にある。


インスタグラムの「#内定通知」の投稿例(筆者撮影)

筆者のまわりでも、「同僚が会社やクライアントの悪口をツイッターで投稿しているのを見つけてしまった」という話は複数聞く。匿名で利用していても、投稿内容や時間帯、最寄り駅やランチで行く店など、知っている人が見れば個人を特定することはさほど難しくない。会社に対する不平をSNSに漏らしたことがバレ、会社にいづらくなって自主退職してしまった人もいた。

最近の企業は、服務規程や、ソーシャルメディアポリシー・ソーシャルメディアガイドラインを自社で用意し、違反して会社に損害を与えた場合に処分できるようにしているところも多い。どのような投稿が禁じられているのかは業種業態によって異なるので、必ず事前に知っておきたい。

そして、何よりもSNSは世界中に開いたものだ。どんな投稿をする際も、その先にはそれを見る人がいて、彼ら彼女らを不快にさせる内容ではないかを必ず意識してほしい。