フリーダー・ブルダ美術館のオフィシャルサイトより

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■オークション会場で切り刻まれ、世界を話題の渦に巻き込んだバンクシーの『愛はごみ箱の中に』

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バンクシーの作品『愛はごみ箱の中に(Love is in the Bin)』が初めて美術館で一般向けに展示される。

『愛はごみ箱の中に(Love is in the Bin)』は、昨年10月にイギリス・ロンドンのサザビーズで行なわれたオークションにおいて、額に仕込まれていたシュレッダーによって下半分が短冊のように裁断された作品だ。

『風船と少女(Girl with a Balloon)』というバンクシーのアイコン的作品であったこの絵は、推定価格をはるかに超える100万ポンド(約1.5億円)で落札される同時に裁断されて形を変え、のちに『愛はごみ箱の中に(Love is in the Bin)』と正式に改称された。

バンクシーは額にシュレッダーを仕込む様子など舞台裏を映した動画を公開し、作品の「自壊」が自身の計画したものだと明かしている。サザビーズは関与を否定しているもののオークションハウスと組んでいたのではないかとする声も挙がったほか、裁断された後の方が作品の価値が上がったとする見方もあり、一連の騒動は世界中で話題を呼んだ。

裁断された作品は、落札者であるヨーロッパの女性コレクターが予定通り購入したという。そしてオークションの数日後には、サザビーズのギャラリーで2日間限定で一般公開された。

■ドイツ北西部の温泉地にある美術館で1か月間展示

サザビーズのウェブサイトでは、「オークション会場でライブで制作された作品」として紹介されている『愛はごみ箱の中に(Love is in the Bin)』。本作の展示に名乗りを上げていた多くの競合の中から、初めて美術館での展示を実現することになったのは、ドイツ北西部の温泉地として知られる街バーデン=バーデンに位置するフリーダー・ブルダ美術館だ。

展示は2月5日から3月3日の約1か月間にわたって行なわれる。作品の鑑賞環境は、バンクシーの信念に従って「できるだけ多くの来場者が鑑賞できるよう」設計されるという。この作品については、鑑賞料は無料となる。

フリーダー・ブルダ美術館館長のヘニング・シャーパーは、『愛はごみ箱の中に(Love is in the Bin)』の展示にあたり「本作をトロフィーのように飾ろうという誘惑に打ち勝たなくてはなりません。それは絶対にアーティストが意図していることではないからです。私たちは一貫してアートを『民主化』してきた彼のアプローチに従い、どうすればより多くの人にこの作品を鑑賞してもらえるかを議論しているところです」とコメントしている。

■昨年末には皮肉の効いた新作で「季節の挨拶」

なおバンクシーは昨年12月に「季節の挨拶」として新しい作品を発表している。この作品はウェールズ西部の工業都市ポート・タルボットにある個人所有のガレージの壁面に描かれた。

一見すると空から舞い降りる粉雪を食べようと舌を出す、幼い子供の微笑ましい姿のように見えるが、別の壁面には燃えさかる炎が描かれ、子供の口に吸い込まれそうになっている白い粉は雪ではなく灰だとわかる、というバンクシーらしいブラックユーモアを含んだ作品だ。ポート・タルボットは鋼鉄業で知られる。