「結婚後に得た収入は夫婦の共同財産」 ――米アマゾン創業者離婚で妻に均等に財産が分配される法的ルールとは?

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アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾスCEO(54)とマッケンジー夫人(48)が、ベゾス氏のツイッターで離婚を発表したのは先日9日のこと。アマゾンを創業する前にニューヨークで出会い、結婚し、大陸の反対側のシアトルまで引越してアマゾンを創業、4人の子どもをもうけ、莫大な資産を築き上げた二人だが、「私たちは長い間の愛情に満ちた時期と試験的な別居を経て、離婚し、友人として人生を共有していくことを決めた」とのことである。

二人の間のプライベートなことはさておき、世間はベゾス氏の財産の分与に注目している。
……と言うのも、新しいビジネスを次々と展開し続けるアマゾン、宇宙企業のブルーオリジン、米国の新聞ワシントンポスト紙を所有するベゾス氏の資産総額は、ブルームバーグのビリオネア指数によると、1,370億ドル(約14兆8,400億円)と世界第1位で、二人が住むワシントン州は"Community Property State"(=共同財産制の州)であり、「結婚している間に得た収入は、夫または妻のどちらかのみに支払われたものでも、夫婦の共同財産」と法的に認めているからである。


つまり、共同財産制の州では、夫婦が離婚をする際、一方のみが働いて得た収入は、個人財産として認められない限り、ほぼ夫婦間で均等に分配されるのである。

全米50州でこの共同財産制の州は、ベゾス氏の住むここワシントン州、そしてカリフォルニア州を含む、わずか9つの州のみだ。

シアトルのシャッツ法律事務所の井上奈緒子弁護士は、「一般的に、結婚していた間に稼いだ収入は夫婦の共同財産となり、一方の個人財産として認められない限り、ほぼ夫婦間で均等に分配されます」と解説する。「例えば、結婚後、家を夫の名義で買ったとしても、ワシントン州ではその家の半分は妻のものです。また、家族の一人が会社を経営していた場合、経営から得る収益も離婚の際の財産分轄の対象となります」。

しかし、これらは、"prenuptial agreement"(婚前契約)か"postnuptial agreement"(夫婦間の財産契約)を作成していなかった場合の法的解釈であり、こうした契約がすでにあれば、その内容が違法と見なされなければ契約どおりに分割されるという。

財産分与の制度は州によって異なるので、アメリカに住んでいる人で自分の州の制度を知らない人は確認するといいだろう。英語だが、これらの制度を説明するウェブサイトはたくさんある。

単純にベゾス氏の財産の半分をマッケンジー夫人が得ることになれば、女性で世界第1位の資産家が誕生することになる。そして、世界長者番付では、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏が再び第1位に返り咲くことが確実だそうだ。ゲイツ氏はそんなことは気にもしていないだろうが。

大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材や教育プログラム
のコーディネート、リサーチ、マーケティングなどを行っている。家族は夫と2010年生まれの息子。