43歳女性の3度目の結婚のお相手は?(イラスト:堀江篤史)

恋愛や結婚に関する取材を続けていると、つねに恋人や配偶者がいる人とそうでない人にはっきり分かれると感じる。モテはそれほど関係ない。魅力的なイケメンや美人でも本人に「その気」がなかったらパートナーは不要だ。

3年前に3度目の結婚をした斉藤綾乃さん(仮名、43歳)は明らかに前者だ。13歳の時から恋人がいなかった時期はほとんどないと語る。

自分の強みと市場を知っている綾乃さん

「私は愛嬌があるタイプではないのですが、すきがあるのだと思います。あと、小柄で胸が大きい女性が好きな男性は一定数います。なぜか背が高い人が多いです。私も高身長の男性が好きなので需要と供給が合っています」


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綾乃さんは身長150センチ弱で胸はGカップだと、あっけらかんと明かす。後述するが商才があり、経済的には自立しているが、「パートナーは欲しい。自分のためだけの生活は退屈」だと感じている。自分の強みと市場を知り、やる気を持ち続けることが3度の結婚を可能にしたのだろう。

ただし、生身の人間と人生を分かち合う結婚に苦労はつきものだ。ゲームのように簡単にリセットボタンを押すわけにもいかない。綾乃さんの場合はどうだったのか。まずは23歳での初婚から聞いた。

「相手はバイク便のライダーをしていたときの仲間です。私のほうが先輩でしたが、彼は4歳年上でした」

彼の名前を仮に幸司さんとする。綾乃さんは幸司さんと親しくしていたが、「きょうだいのような、友だちのような」感覚で、男性として見ていたわけではない。幸司さんのほうは綾乃さんを好きになり、周囲を巻き込む形で求愛した。性格的に緩いところがあると自認している綾乃さんは断り切れずに付き合うことになり、数カ月後には妊娠して結婚した。

「恋愛感情はなかった分、家族にはなれたと思います。別れた今でも冠婚葬祭では会っていますから」

綾乃さんには商才があり、ネット通販の自営業を成功させた。すると、幸司さんとその両親から経済的に依存されるようになった。

「彼の実家には家業があって、潰れかけていたのですが廃業してくれなかったんです。私が赤字を補填していましたが、長くやっているとそれがしんどくなってきました」

綾乃さんは、2人の息子を夫とその両親に任せて家を出る決意をする。自分は寝るときだけ家に帰ってくるような生活で、息子たちは完全に「お父さん子」になっていたからだ。綾乃さんは外から物心両面で支援することにした。

幸司さんと別れて一人暮らしを再開した直後、高身長以外の点ではまったく違うタイプの男性と巡り合った。行きつけのバーで知り合った3歳年上の経営者、孝男さん(仮名)だ。

「すごく口がうまくて女の扱いにも慣れている人です。近所に住んでいたこともあって意気投合しました」

当時の綾乃さんは息子たちをいずれ引き取る可能性があるために前夫の姓に留まっていた。孝男さんとは結婚はせずに付き合い続けた。そのうちに彼からも経済的に依存されるようになってしまった。

「浮気はすごいし、酔って暴力は振るうし、車の買い替えやお酒でお金はどんどん使うし……。彼が経営していたはずの会社はいつの間にか潰れていました」

最初の夫と同じく、商売の足を引っ張る人だった

2人でカフェバーを始めてなんとか軌道に乗った頃に長男が高校に入った。子どもたちが綾乃さんと一緒に住むことはもうないだろう。孝男さんからプロポーズをされた。すでに男女の関係ではなくなっていたが、「責任を取りたいと思ってくれているのかな」と綾乃さんは思い、再婚することにした。38歳の時だった。

しかし、孝男さんの素行は改まらなかった。カフェバーは綾乃さんの奮闘によって3店舗にまで拡大していたが、孝男さんが妙な儲け話を持ってくるたびに巻き込まれ、綾乃さんが後始末に追われることが続いた。

「最初の夫と同じく、彼は商売の足を引っ張る人だったんです」

綾乃さんに問題がなかったわけではない。「息を吸うような感覚で浮気をするタイプ」だと告白する。もし綾乃さんが男性だったら、「亭主元気で留守がいい。浮気は家庭に持ち込むな」と妻から言われるようなタイプだったかもしれない。

孝男さんとの結婚生活は2年間で終わった。別れても綾乃さんは小さなバーを経営し続け、現在の夫である健太さん(仮名、45歳)はその客だった。

「商売仲間の紹介で知り合った人です。第一印象はエラそうで最悪だったのですが、すぐに常連客になりました。お酒を飲めない人なのに……」

健太さんは綾乃さんをデートに誘った。夜ではなく日中の映画館だ。昼の誘いが綾乃さんには新鮮だった。

「水商売をしているとアフターの誘いばかりです。ランチなんて数年ぶりでした。『昼間に連れて歩いてもいい女だと思ってくれたんだ』とうれしかったです」

話してみると、健太さんは綾乃さん好みの「文系インテリ」の会社員だった。歴史関係の本をたくさん読んでいるらしい。人見知りなので初対面だと悪い印象を与えてしまうこともわかった。

2人はすぐに付き合い始め、1年も経たずに結婚。綾乃さんはこれから子どもを作るつもりはないので、その点だけは健太さんに確認をしたうえでの結婚だ。

40歳を超えるまで独身だった健太さんは、家事や趣味にもこだわりが強い。女友達はいるけれど恋人は長い間いなかったという。

「緩い私ならば一緒に生活できるかも、と思ったみたいです。実際、2LDKの家は彼の本やマンガ、DVDであふれています。私の部屋はありません。クローゼットの半分と、タンスの3段分だけが私のテリトリーです。女の生活を何だと思っているんでしょうか(笑)」

健太さんは趣味の本やDVD以外は節約家で外食はめったにしない。自分できっちりと自炊をして暮らしてきた。一方の綾乃さんは「宵越しの銭は持たない」タイプで、一人でいるときはつねに外食。結婚当初は金銭感覚の合わなさに戸惑った。

「でも、今では穏やかに過ごせていて自分でもびっくりしています。私もお金にしっかりするようになりました。お菓子やパンを手作りするのも面白いものですね。自分一人だったらダラダラするだけですけど、彼が食べてくれるならゴハンを作るのも張り合いがあります」

繁盛していたバーは閉店して、20年ぶりに勤め人になった。週2日の夜勤の仕事だ。

「彼は独身生活が長かったので、私が夜にいない日を作ってあげるのも大事かなと思っています。アダルトビデオが好きみたいだからです」

セックスも嫌いじゃないけれど性欲は自分で処理するほうが気楽だという男性は少なくない気がする。この「自由」がなくなるから共同生活に踏み出さない人もゼロではないだろう。経験豊富な綾乃さんは男性の微妙だけど重要な問題を察することができるのだ。

恋愛ではなく、「結婚」に必要なもの

ただし、セックスレスは困る。綾乃さんのほうが欲求不満になり、浮気をしかねないからだ。寝室は一緒にすることを綾乃さんのほうから要求し、月1回は死守してもらっている。

性的には淡白な健太さんだが、生活全般でしっかりしていて、毎朝の出勤時には手作り弁当と「ほっぺちゅー」を求めるほど綾乃さんに懐いている。綾乃さんは生活も規則正しくなり、そんな人生に導いてくれた健太さんへの尊敬と愛情があふれ出す。

「まじめで女慣れしていない彼が、すれっからしの私を気に入ってくれたこと自体が今でも不思議です。ご先祖様からのご褒美かな? ありがたいです」

尊敬や愛情は恋愛に不可欠だが、結婚に必要なのは相手への感謝だと筆者は思う。理由はわからないけれど、すばらしい人が自分のそばにいてくれる。こんな自分を愛してくれている。

このうれしくて申し訳ないような気持ち。お返しができるとは思わないが、せめて誠実で明朗なパートナーでいよう――。謙虚になった綾乃さんの3度目の結婚生活は長続きする気がする。