ソフトバンクがAI清掃ロボット「Whiz」で具現化する日本の近未来ロボット戦略とは

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●日本向けにカスタマイズされたAI清掃ロボット
ソフトバンクロボティクスは昨年11月19日に、業務用AI清掃ロボット「Whiz」(ウィズ)を発表しました。

Whizはソフトバンクロボティクスと米国ブレイン・コープによる共同開発した業務用AI清掃ロボットです。
・ブレイン・コープのAI清掃ロボット技術
・ソフトバンクロボティクスの日本オフィス環境に合わせて発案したアイデア
これらを組み合わせて生まれました。


業務用AI清掃ロボット「Whiz」


ブレイン・コープでは、これまでにも業務用AI清掃ロボット「RS26」を開発・販売しています。
しかしRS26は、人が搭乗して清掃ルートをプログラムする大型のスクラバー清掃機でした。
そのため
・通路の狭いオフィス
・小規模なスーパーマーケット
・カーペットなど、フローリングではない床面の清掃
こうした現場などで導入しづらいという難点がありました。


AI清掃ロボット「RS26」


そこでWhizでは、RS26で培った
・自動清掃技術
・障害物の自動回避技術
これらのノウハウを活かし、
日本のオフィスでも使いやすい
・小型タイプ
・カーペットなどの床面でも使えるバキューム方式
・誰でも扱える一般的な掃除機のような操作
・家庭用ロボット掃除機よりも強力な清掃性能
・業務用という無骨なイメージを払拭する親しみやすいデザイン
こうした特徴が盛り込まれました。

●日本を覆う深刻な労働者不足
そもそも自動で清掃業務を行うAI清掃ロボットに注目が集まり始めた理由には、日本における労働人口の減少があります。

日本では少子高齢化と団塊世代の退職時期が重なり、毎月約5万人も労働人口が減り続けています。
この深刻な労働者不足の影響は多くの業界に及んでいますが、特に大きな影響を受けているのが清掃業界です。
・業界の有効求人倍率は2倍以上
・現在の就業者の平均年齢は50歳以上
このように厳しい状況にあります。


清掃業界は全職業の中でもかなり厳しい求人状況にある


ソフトバンクロボティクスは、そこにビジネスチャンスを見出したのです。
Whizは、
・人間の清掃員の代替となる
・清掃の作業効率の向上
・雇用よりもコストが抑えられる
などのメリットがある点を強調しています。
またスマートフォンなどで
・清掃状況の確認
・機体情報の確認
・遠隔での管理
こうした仕組みによる清掃業務の「見える化」も図ることができます。


初回のみ普通の掃除機のように清掃を行ってルートを覚えさせる



1回の充電で最大3時間連続稼働できる



障害物を避けるAI技術がブレイン・コープ社のノウハウだ



障害物を避けるソフトバンクロボティクス・AI清掃ロボット「Whiz」



●「AI群戦略」を推し進めるソフトバンクグループ
ソフトバンクグループは、「AI群戦略」に基づき、ロボット関連技術に対して積極的に投資を行っています。
「AI群戦略」では、
・AIやロボット技術
・IoT技術
これらを駆使し、現代社会を構成する産業構造を大変革させようという大きな目標をかかげています。

・AI分野では、子会社となった英国アーム社のSoC(チップセット)技術
・IoT分野では、ソフトバンク本体による通信関連技術
これらが大きな力を発揮しています。

そしてロボット分野を担うのが
・ソフトバンクロボティクス
・ブレイン・アーム社
・子会社化した米国ボストン・ダイナミクス社
というわけです。

ソフトバンクグループ「AI群戦略」は、全てを自社内で研究・開発して完結させるのではなく、それぞれに得意な分野を持つ企業と提携・協業し、時には買収・子会社化することで実現性を高め、戦略を実行していく手法が特徴と言えます。


人間とロボットが共存する世界を目指すソフトバンクグループ



Whizは2019年2月よりリース販売の受付が開始され、3月より提供開始の予定です。
リース価格は5年レンタルで月額2万5000円(税別)。
消耗品となる紙パックやHEPAフィルター、ブラシなどは別料金となります。

Whizは、単なるAIロボット掃除機という一製品ではありません。
ソフトバンクグループの掲げるAI群戦略の実用例、実績としての意味合いも強く、重要なプロダクトであることは間違いないでしょう。

このWhizが、今年どこまで一般企業に採用され、評価されていくのかが注目されます。


秋吉 健