今からさかのぼること10年前の2009年(平成21年)。

本木雅弘主演の映画『おくりびと』が米アカデミー外国語映画賞を受賞。衆院選では民主党が圧勝して政権交代が実現。スポーツ界では石川遼がゴルフツアー史上最年少の賞金王に輝き、イチローが通算3,086安打を記録した。携帯電話向けのツイッターが開設されたのもこの年で、流行語は「草食男子」、「こども店長」。エネルギー新時代の始まりを予感させる「エコカー」や「LED」も登場した。

さて、そんな年に公開された映画といえば、何を思い浮かべる?
今回は、2009年に話題になった映画をプレイバック!

アバター

3D映画のパイオニア

いまでは一般的に知られている3D映画。10年前だったら、3D映画と聞いて思い浮かべるのは、赤と青のフィルムレンズがついた専用メガネではなかっただろうか。そして3Dになるのは劇中のほんの一部。「メガネをかけて!」と字幕が流れると、観客が一斉にメガネをかけるタイプだった。

全編を通して3Dメガネをかけっぱなしだったのは『アバター』が初めてで、その未知なる映像体験に世界中から注目が集まった。「これは映画館で観なければ」と観客が押し寄せ、大ヒットを博した。

22世紀に人類が新たなエネルギー源として目をつけたのは、惑星パンドラの地下に眠る希少鉱物。しかし、そこには先住民族が住んでいたことから、彼らと地球人とのDNAを掛け合わせた人造生命体を作り、そこに操作員の意識を接続させた“アバター”が、先住民族との交渉を担うことになった。

美しい密林に覆われた惑星と、不思議な造形をした先住民族たち。他の生物にも敬意を払い、自然と共存しながら暮らす彼らに比べて、母星破壊を繰り返してきた地球人の身勝手な欲望ときたら。現実は下半身不随の主人公が、アバターになることで自由に動けるようになり、桃源郷のような別世界で生まれ変わる。う〜ん。やっぱ人類に未来はなさそうだ。

『天使と悪魔』

宗教v.s.科学

『ダ・ヴィンチ・コード』(06)の続編だが、原作ではこの作品の方が時系列的に先。また、登場人物や組織などが複雑に絡み合っていることから、前作よりも難解だといわれるそうで、それゆえに何度でも観たくなる。400年ぶりに復活してヴァチカンへの報復に燃える秘密結社と、その陰謀を阻止しようとする象徴学者との攻防戦を描く。

コペルニクスの地動説を唱えたために異端視され、ローマ教皇庁検邪聖省から有罪判決を受けたガリレオ・ガリレイ。その彼が遺した暗号を手がかりに事件を追うトム・ハンクスが、髪型をオールバックにして知的な雰囲気だ。ぽわんとした優しさが魅力のユアン・マクレガーとの意外な展開に、どちらに肩入れをしたらよいやら。

宗教的要素が強い謎解きなので、日本人にはピンと来ない面もあるが、頭脳戦の面白さは楽しめるだろう。人間は天使にも悪魔にもなり得る。そんなやるせなさも心に残る作品。

『きっと、うまくいく』

スピルバーグもブラピも大絶賛

インド映画歴代興行収入1位を記録し、インドアカデミー賞で作品賞をはじめとする史上最多16部門を受賞した超ヒット作。日本アカデミー賞でも優秀外国作品賞を受賞した。

めくるめく歌とダンス。てんこ盛りの喜怒哀楽。度肝を抜かれるアクション。そんなエンタメ要素をぎゅっと詰め込んだのがインド映画というイメージがあるが、この作品はそれに加えて深刻な教育問題をテーマにし、インド社会が抱える闇の部分もきっちり描いていて奥が深い。

工科大学の寮を舞台にした青春劇。どうしてもこの役がやりたかったという主演男優(当時44歳)は、驚異的な若々しさを発揮して違和感なしだ。タイトルは、イギリス統治時代に夜警が見回りながら口にしていた言葉だそうで、つらい時にこそ口ずさみたい魔法の言葉。観れば大ヒットの秘密がわかる秀作。

『第9地区』

続編はいらない

エイリアンの難民という斬新な発想。SF映画でよく見られるような攻撃性も侵略の意志もない彼らは、たまたま外界から流れ込んできた生物なのである。

彼らはその異様な外見から「エビ」という蔑称をつけられ、第9地区に隔離されるわ、文化の違いから人間たちと衝突するわで、次第に反発や差別の対象になっていく。舞台が南アフリカ共和国で、かつてのアパルトヘイト政策を基にしたストーリーなだけに、設定がリアル。映像がドキュメンタリー風なのも、かなりの臨場感だ。

エビに高圧的な態度をとっていた職員が、謎の液体を浴びてしまってエビ化していく過程が怖いのなんの。そして、人間に戻りたい彼と故郷に戻りたいエビの間に生まれる奇妙な信頼関係が、ハラハラしつつも泣かせる。「3年待って」という言葉を信じるしかない彼。エンドマークの続きは、どうか観客の妄想にゆだねてほしい。

『ROOKIES -卒業-』

甲子園に行くぞ

大ヒットTVドラマの劇場版。3年生になった野球部員たちが、甲子園出場のラストチャンスを迎えて猛練習をしているところへ、スゴ腕の新入生が入部してくる。しかし、メジャーリーグを目指している彼は、彼らのことをバカにして練習に参加しようとしない。

宇宙飛行士になりたいとか大統領になりたいとか、そういう大きな夢を口にすると必ず周りから笑われてしまうものだが、それに向かって実際に努力しているのなら、応援したくなるのが人情。見た目はチャラい不良たちだが、恋愛抜きで野球に打ち込む姿が清々しい。

ヘアスタイルだけで目立っているチョイ役の佐藤健。10年前はこうだったのかと思うと、しみじみと感慨深い。

『ゴールデンスランバー』

ハメられすぎ

イメージが利用され、イメージを操作されて陰謀に巻き込まれる素直な主人公。彼はまさにケネディ暗殺におけるオズワルドだ。

伊坂幸太郎の人気小説を映画化。2018年にはカン・ドンウォン主演で韓国でもリメイクされた。タイトルはビートルズの楽曲からの引用で、劇中でもビートルズの名曲カバーが流れるが、それによってシリアスなサスペンスに“軽さ”が加わり、絶体絶命の逃避行に希望を感じさせる。

昔の彼女や大学のサークル仲間たちが集まってきて、ピンチに陥った彼を助けようとする。信頼と絆の大切さが身に染みる物語。冒頭で登場する吉岡秀隆のゆがんだ雰囲気と不吉な目つきが、印象的。 

『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』

純粋で孤独な

2009年6月25日、1か月後にロンドン公演を控えたマイケル・ジャクソンは、突然この世を去った。これは、その公演のリハーサル映像を中心に構成されたドキュメンタリー映画である。

2009年4月から亡くなる直前までの何百時間にも及ぶリハーサル。その膨大な映像を1つの作品としてまとめ上げたのは、ロンドン公演のクリエイティブ・パートナー。そこに映し出されるのは、進化し続けようとする偉大なミュージシャンであり、時には孤独な素顔も見せるマイケル・ジャクソンの純粋な姿だ。

中でも印象的なのは、マイケル・ジャクソンがメンバーたちと手をつないで世界平和を祈るシーンは、彼がそれを心の底から願い、その実現を本気で信じていることがわかるだけに心を打つ。音楽にはその力があるとミュージシャンが信じなくて、誰が信じられようか。バックダンサーのオーディション風景は貴重映像かも。

『サマーウォーズ』

人類の存亡を賭けて

舞台は「ザ・日本の夏」という自然豊かな田舎なのに、ストーリーは現実にありそうでなさそうな近未来的SF。そのギャップが不思議な魅力の大ヒットアニメーションである。

高度なネットワーク技術を持った人たちが集い、アバターを操って様々なサービスを利用している仮想世界OZ。ところが、謎の人工知能がOZを乗っ取り、奪った膨大なアカウントを利用して、惑星探査機を核施設に落とそうとしていることが発覚。それを阻止しようとする主人公たちとの間で戦いが始まる。

仮想世界で繰り広げられる戦争は、のんびりした真夏の風景からは想像もできず。しかも、結束して挑んでいるのが一般庶民だというのがグッとくるではないか。それは鼻血を出すほどのプレッシャー。平行して描かれる青春の恋物語がこそばゆく、大家族っていいなあと思わせる。夏映画の定番だ。

『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』

ゾクゾクする北欧ミステリー

世界的ベストセラーを映画化したシリーズ第1弾。その後『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(10)と続き、他にも同原作のハリウッド映画『ドラゴン・タトゥーの女』(11)がある。

鼻ピアスと全身タトゥー姿という過激なパンクファッションに身を包んだ彼女は、見た目によらず天才ハッカー。そんな彼女をパートナーにして、ジャーナリストの主人公が40年前の少女失踪事件を調査する。

スウェーデンの孤島で淡々と謎に取り組む彼らは、やがて陰謀の闇へと吸い込まれていくのだが、それはお決まりコースなのに何なのこのスリリングな緊張感は! それは一重にヒロインの強烈なカリスマ性のせい。想像を絶する孤独が、彼女をそこまで強くしたのだろうか。しんとした冷たい空気感がハードさを演出。

『カイジ 人生逆転ゲーム』

お金のためなら

人気コミックの実写映画化。現実にはありえないストーリーだが、もし自分なら命がけで一発逆転に挑むかどうかと自問自答してしまう。

友人の借金の保証人になったことで多額の負債を抱えてしまった青年が、一晩で大金が手に入るという危険なゲームに参加。それは心理戦を伴う容赦のないゲームだったが、そこで彼が目の当たりにしたのは、人間の欲望や愚かさや情けなさ。彼はとことん惨めな目に遭わされ、人間不信に陥っていく。

何しろ彼は、自堕落な生活を送っているフリーターだったので、これはまるでお仕置きのよう。借金地獄に苦しむ負け組たちに交じって我が身を振り返り、汗と涙と血を流しながら成長するだなんて、荒療治もいいところだ。いや、これはむしろ天の助けかも。ヒットのお陰で藤原竜也=カイジのイメージが定着してしまって残念。

『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』

飲み過ぎに注意

「ハングオーバー!」シリーズの第1作。その後『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』(11)『ハングオーバー!!! 最後の反省会』(13)と続く。

ハングオーバーとは「二日酔い」のこと。結婚式を控えた新郎と、その親友と義弟が高級ホテルで飲みまくり、翌朝目を覚ましてみたら部屋にトラと赤ちゃんがいて、1人いなくなっていて、1人の前歯がなくなっていた。もちろん彼らに昨日の記憶はない。

トラと赤ちゃん……ワケがわからん。彼らが手掛かりを1つずつ追いながら、謎を解き明かしていく。結果から巻き戻してストーリーが展開される面白さ。時間は進んでいるのだけれど、同時に遡ってもいる。レベルは違えど、酒飲みなら身に覚えのない話ではないなので気をつけよう。

『余命1ヶ月の花嫁』

実話であることの力

ガンで短い生涯を閉じた女性の最期の1ヶ月を追ったドキュメンタリー番組が書籍化され、それを映画化。余命を知りながら最期までそばにいた恋人の深い愛が、実話だけに大きな感動を呼んだ。

出会った時からすでに乳ガンだった彼女。その事実を告げてもなお、自分を求めて追いかけてきた彼を受け入れ、彼は覚悟を決めて献身的な愛を貫く。現実には不治の病を理由に泣く泣く別れるカップルも多いだろうに、こんな男性がいるとは……彼の存在そのものが奇跡である。

二人の役名は、そのまま本人の名前だということ。「ウェディングドレスを着たい」という彼女の願いを叶えてあげた両親や友人たちの姿が、涙を誘う。ただし、タイトルからうっかり誤解しがちだが、二人は模擬結婚式を挙げただけなので、ちょっと複雑な気持ちにもなる。もし自分だったらどうする?

『シャーロック・ホームズ』

行け行けホームズ

名探偵シャーロック・ホームズと相棒ワトソンが、アクションをしまくるハリウッド映画。

続編『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(11)があり、『シャーロック・ホームズ3(原題)』も2020年公開予定。

両者の風貌がすでにイメージとかけ離れているので、ホームズが自由奔放で軽い冗談を飛ばそうが、ワトソンがイケメンですぐに銃をぶっ放そうが、あまり気にならないというマジック。二人の現代的キャラは狙い通りということで、19世紀とは思えぬノリもSFファンタジーのような味わいである。

「武術の達人」という側面がクローズアップされ、肉体派でコミカルな雰囲気のホームズ。

アメリカ人俳優が演じて違和感ありという声は多いようだが、日本のドラマでは女性がホームズ(シャーロック)になったりしているので、もう何でもよか。ホームズが女嫌いであるという設定だけは死守してあるのでホッとした次第。

『ダレン・シャン』

ヴァンパイアもつらいよ

人間の部分を残したまま、半分がデビルやゾンビや化け物になってしまった若者のストーリーは不滅。それがヴァンパイアならば、美しくも哀しいイメージがウットリする。

世界中でカルト的人気を誇るダーク・ファンタジーの映画化。毒グモにかまれた親友を救うためにヴァンパイアと取り引きした少年が、ハーフ・ヴァンパイアとなって未知の世界へと足を踏み入れる。奇妙なサーカスで彼を迎え入れる渡辺謙の禿げ上がった長いデコが異形。成績優秀でモテ男で友だち思いの主人公は、血を吸わねば生きていけない哀しいサガに抗いながら、何とかしてヴァンパイア人生を送ろうとする。その葛藤やいかに。でもま、半分人間ですから。彼のヴァンパイア修業が、そのままヴァンパイア講座みたい。ファンタジーと青春ドラマを兼ね備えた展開がみどころ。

いかがでしたか?

10年前の映画とは思えぬ瑞々しい作品もあれば、懐かしさでしみじみしてしまう作品もあり。何にしても10年前の自分と重ねあわせながら観賞できる楽しみは、格別である。

また「あの俳優がこんなところに?」という意外な発見が嬉しいのも、昔の映画を観る醍醐味であろう。

こんな風に、年が変わるたびに10年前の映画を観てみるのも、新年の楽しみになりそうだ。

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