by Ian Parker

2016年6月に行われた国民投票の結果、イギリスの欧州連合(EU)からの脱退を指示する票が過半数を上回り、イギリスのEU脱退(ブレグジット:Brexit)がほぼ間違いないものとなりました。イギリスに支社や工場を置く企業はブレグジットにより大きな影響を受けると考えられていますが、ペンギンにとってもブレグジットは悪いニュースであるとPOLITICOが報じています。

Brexit puts penguins in peril - POLITICO

https://www.politico.eu/article/brexit-penguins-climate-change-peril/

POLITICOによると、「イギリスは地球上のどの国よりも多くのペンギンに責任を持っている国」とのことです。イギリスはケイマン諸島やジブラルタル、バミューダ諸島など複数の海外領土を保有しています。ここには多くのペンギンが生息しており、仮にブレグジットが成立すれば、多くのペンギンが影響を受けることになるとのこと。

イギリスおよびその海外領土で活動する野生生物の保護団体は、EUが資金提供する保全プロジェクトの将来性に「深刻な懸念を抱いている」とのこと。野生生物保護団体は、イギリスの環境庁から「2020年以降のブレグジット成立後にEUと同じように保全プロジェクトに対して資金提供を行う」という確約を得られておらず、ブレグジットにより絶滅危惧種に影響が出る可能性を懸念していると語っています。

特に、イギリスの王立鳥類保護協会(RSPB)やFalklands ConservationはどちらもEUの保護プログラムが代替不能なものであると懸念を示しており、特にLIFEやBESTといった助成金プログラムがなければ、希少でユニークな種のために環境を保全することは難しくなっていく、と主張しています。



by Cassidy Mills

例えばLIFEによる助成金は、1994年の創設以来30億ポンド(約4100億円)にものぼっていますが、イギリス政府は2020年までのEU支出分の補填以外は保証していないのが現状です。LIFEによる助成金はCapercaillieやBitternといったイギリス国内の絶滅危惧種を増やすために役立てられてきました。

BESTによる助成金は、フォークランド諸島やサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島、イギリス領の南極地域などの海外領土をメインに、その地に生息するペンギンやアホウドリ、クジラなどを保護するために使用されてきました。

Falklands ConservationのCEOであるEsther Bertram氏は、「(イギリスの大臣が)ブレグジット後に、EUからの野生生物への資金提供が行われなくなる可能性があることを深刻に懸念していた」と述べています。続けて、「イギリスの海外領土にはイギリスが国際協定のもとで責任を負う多くのユニークな野生生物が生息しています。我々は地球上の他のどの国よりも多くのペンギンに責任を持っており、フォークランド諸島には世界の3分の1のイワトビペンギンとジェンツーペンギンが生息しています」と語っています。

なお、ジェンツーペンギンは気候変動や漁業による脅威により、南極半島西部では数を激減しています。



by Ian Parker

2018年10月に発表された政府の契約によると、イギリスのマイケル・ゴーヴ環境・食糧・農村地域省担当大臣が、「連合王国およびイングランドにおけるLIFEのような種類の基金の必要性を決定すること」を目的とした研究調査を依頼しています。この研究調査は2019年に予定されているイギリス政府の包括的な支出の見直しに先立って行われる予定です。

RSPBのシニアポリシーオフィサーを務めるAlistair Taylor氏は、ブレグジット後にBESTの資金調達がどうなるかについても明確ではないと語っており、「政府はこれらの資金の代替を約束していないと同時に、環境計画の実施を約束していることを非常に心配しています」と語っています。

イギリスとEUの間で合意に至ったブレグジットにおける合意がイギリスの下院に承認されることとなれば、2020年まではEUからのあらゆる環境保全のための助成金が継続することとなります。そして、2018年の初めに発表された非取引計画通知によれば、イギリス政府はEUの資金撤退により生まれるギャップは政府が埋めると約束しています。



by Eamonn Maguire

つまり、イギリス政府はイギリスがEU加盟国である間に承認されたLIFEプロジェクトおよび、2020年までの「他のEU加盟国が主導するイギリスの組織への助成金」の補填については保証しているというわけ。しかし、そのような資金の流れでは長期的なプロジェクトにおける見通しが不確実になることは明らかであり、遠隔地での複雑な物流業務を伴うことが多い保全プロジェクトにおいては特に問題となる、とPOLITICOは指摘しています。

「移行期間が終われば何が起こるのでしょうか?LIFEは新しいプロジェクトに交換されますか?BESTは置き換えられるのでしょうか?そういったことは一切約束されていません。環境・食糧・農村地域省は確かに(LIFEやBESTの代替プランについて)検討していますが、コミットメントがない場合、今後保全団体がどのような行動を行っていくか計画することは非常に困難です」とRSPBのTaylor氏は語っています。