2019年1月3日のアメリカ株式市場で、Appleの株価がおよそ9%も急落し、1年8カ月ぶりの安値である143.80ドル(約15500円)を記録しました。Appleのティム・クックCEOによる業績予想を下方修正するという発表が急落の背景にあり、ウォール街の投資企業は軒並みAppleの目標株価を下げるなど、市場全体が予想の下方修正を強いられています。

AAPL target prices slashed by Wall Street analysts - 9to5Mac

https://9to5mac.com/2019/01/03/aapl-target-prices/

2019年1月2日、Appleのティム・クックCEOは「Letter from Tim Cook to Apple investors(ティム・クックからAppleの投資家への手紙)」と題して、2019年度第1四半期の業績修正を発表しました。その中でクックCEOが説明した新たな2019年度第1四半期の見通しは以下の通り。

・約840億ドル(約9兆600億円)の売上高

・38%の粗利益

・約87億ドル(約9360億円)の営業費用

・その他損益およそ5億5000万ドル(約590億円)

・個別品目に対する約16.5%の税率

しかし、2018年11月に提供された業績見通しは

・890億ドル(約9兆5800億円)〜930億ドル(約10兆円)の売上高

・約38%〜38.5%の粗利益

・営業費用は87億ドル〜88億ドル(約9470億円)の営業費用

・その他損益およそ3億ドル(約323億円)

・個別品目に対する約16.5%の税率

となっていて、クックCEOは従来よりも業績を下方修正したことになります。クックCEOは発表の中で「iPhoneの発売時期の違い」「為替レートの逆風」「新製品の急増」「中国など一部新興市場での低迷」などを要因として挙げています。そして、こうした理由によって「私たちが予想していたよりもiPhoneのアップグレードが少なくなりました」と述べています。



by Karl Baron

特に中国市場での低迷について、クックCEOは「中国の経済は2018年後半に減速を始めました。2018年9月の政府報告によると、中国のGDP成長率は過去25年間で2番目の低さでした。中国の経済環境はアメリカとの貿易緊張の高まりによってさらに影響を受けていると考えられます。不確実性の高まりが金融市場を圧迫する中、その影響は消費者にも及ぶようにも見え、中国の小売店や提携企業へのトラフィックは減少していきました」とコメント。中華圏ではiPhoneの売上高が予想を下回ったことでやむなく下方修正を行ったと述べています。

クックCEOの発表に対する市場の反応は即時的で、Appleの株価は2019年1月2日(現地時間)終値で157.92ドル(約1万7000円)だったのが、時間外取引で急落。2019年1月3日の始値はおよそ9%も下落した144ドル(約1万5500円)となりました。



また、各投資企業もAppleの目標株価を修正。Wedbushは275ドル(約2万9600円)から200ドル(約2万1500円)に、ゴールドマン・サックスは182ドル(約1万9600円)から140ドル(約1万5100円)に、モルガン・スタンレーは236ドル(約2万5400円)から211ドル(2万2700円)に下方修正を行っています。

ゴールドマン・サックスは、2019年にかけてAppleの消費者が減速しているという確かな証拠は見られないものの、Appleが経済状況全体に対して非常に脆弱であることが下方修正の理由であるとコメント。また、WedbushのアナリストであるDaniel Ives氏は「2019年1月3日の夜はAppleにとって『iPhone時代』の中で最も暗い日であり、今後の成長が困難になることを表しています」と語っています。