―あの頃の二人を、君はまだ覚えてる...?

誰もが羨む生活、裕福な恋人。不満なんて何もない。

でもー。

幸せに生きてるはずなのに、私の心の奥には、青春時代を共に過ごした同級生・廉が常に眠っていた。

人ごみに流され、都会に染まりながらも、力強く、そして少し不器用に人生を歩む美貌の女・里奈。

これは、悪戯に交差する二人の男女の人生を、リアルに描いた“女サイド”のストーリー。

2018年は、本当にありがとうございました。2018年ヒット小説総集編、「恋と友情のあいだで〜里奈 Ver.〜」一挙に全話おさらい!
※「恋と友情のあいだで〜廉 Ver.〜」と交互にお楽しみください。



第1話:金と力のある男の相手をするのは、若く美しい女の義務だと思っていた。

それなりに恵まれた容姿と若い肉体、そして自由な時間に加え、都内でトップクラスの大学名を持ってすれば、どこへ行ってもチヤホヤVIPな待遇が待っていたのだ。

若く美しい女が金や力のある男の相手をするのは世の常であり、ある意味、義務であるようにも思えた。

「女子大生なんて“ボーナス期間”みたいなものなんだから、思いっきり遊ぼうよ」

しかし私たちは、これが一時的な竜宮城のようなものであることは重々承知で、気づけば老人と化していた浦島太郎にはなるまいと心に固く誓っていた。

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第2話:「俺の子ども産んでよ」。女が“寿退社”という甘い救済策に溺れるとき

“若くて可愛い女の子”という身分に甘んじず、きちんと地に足のついた人生を歩もうとする自分は、きっとなかなかの評価に値するはずだ。

もちろん廉の協力も大きかったが、私なりに結構な労力と時間も費やしたのも事実だ。

だが、内定を勝ち取っただけで“一人前”だなんて調子に乗るのは、とんでもなく甘かった。

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第3話:女の幸せは、愛されること。左手薬指に光るダイヤを見て感じた“達成感”という名の快感

“結婚”という明確な言葉はなかったものの、直哉なりの真剣さで私にコミットしているのはよく伝わってきたし、「絶対に幸せにする」という彼の言葉通り、一人の男にきちんと愛され大切にされるのは確かに“幸せ”な状態と呼べたと思う。

このまま本当に話が進み、直哉のような御曹司の妻となったなら、私の人生はそこである種の完成を遂げる。そんな風に思うと、まだ24歳の私の胸にも、ちゃっかりと安堵と余裕が広がった。

だが私は、こうして周囲の環境が勝手に整っていくことに胡座をかき、結婚を決めるのに最も重要な“ある感情”が抜けていたことに、気づいていなかったのだ。

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第4話:「年収1,000万の商社マンとは、住む世界が違う」。裕福な経営者妻の、僭越と嫉妬

普段は捻くれ者の私も、この日ばかりは、誰もが口にする“末永い幸せ”を心から信じて疑わなかったと思う。そしてこのとき、参列者の中に廉は確かにいたはずだった。なのに、私の記憶の中には不思議なほど彼の姿が残っていないのは何故だろう。

人生最高の日を満喫する私にとって、廉の存在など目に入らなかっただけなのか。あるいは、自ら意識的に彼を視界に入れないようにしていたのだろうか。

いずれにせよ、廉がこの日どんな思いを抱えて同じ場所にいたのか、私は微塵も考えていなかった。

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第5話:「俺と別れたら困るだろ?」ただの“浮気”では済まない。妻が絶望した、ハイスペ夫の冷酷な本性

例えば周囲を見渡してみると、愛が深くとも夫婦共働きで細かい家計を気にしている女もいれば、逆に財産目当てでうんと年上の男と愛のない結婚をする女もいる。

そういった家庭と比べれば、私たちはバランスのとれた理想的な夫婦だ。

子どもはゆくゆく、私が20代のうちに産むことができれば問題ないと直哉は言ったし、子どもができても彼はきっと良い父親になるだろうと、私は根拠もなく漠然と思っていたのだ。

結婚生活も仕事も、その他プライベートも、本当の意味で巧妙にバランスをとっていたのは、夫だけであったことなんて全く知らずに。

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第6話:夫のスマホを盗み見る妻の心理。裕福な男に“飼われる”専業主婦の、ささやかで悪質な抵抗

直哉には、目下お気に入りの女が二人いる。

でき上がった夕飯をダイニングテーブルに並べるついでに、私はそこにポルシェの鍵と共に並んでいた彼のスマホを手に取った。直哉はシャワーの真っ最中だ。

電話番号の下4ケタを入力すると、呆気なくロックが解除された。

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第7話:エリート商社マンの妻の座を勝ち取った“Bランク女”の変貌。31歳の花嫁が犯した唯一のミス

「あのさ、里奈...。結婚生活、幸せなのか?」

心の中を見抜かれたことへの焦りの中に、ほんの少しの安堵があった気がする。

「当たり前でしょ」と平然と答えたものの、廉はこうして私の胸に小さな引っ掻き傷のような爪痕を残した。

そしてこれが、二人の関係をいよいよ複雑に縺れさせてゆくきっかけの一つになったのだ。

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第8話:「共犯意識」で結ばれていく既婚の男女。嫉妬に狂った人妻が、禁断の域に踏み込んだ夜

廉の結婚式からは、もう半年近くの時間が経過していた。その間はもちろんLINEのやり取りだけで、会うことはもちろん、電話で話すことすらしていない。むしろこの適度な距離感こそが私たちの関係を変化させ、必要以上に警戒心を緩めていたのだ。

「そっか、わかった」

けれど私は、廉の誘いを軽い気持ちで承諾してしまった。

冷静に考えれば、今この状態で二人が再会するのは、危険過ぎると分かっていたはずなのに。

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第9話:「夫は、出張なの」背徳感に揺れる男の欲望を解き放った、人妻の誘惑

「タクシーで送るから」

昔から、廉は何も変わっていない。私の心の根底からザワつかせる言動や行動を取っておきながら、結局最後は知らん顔で背を向ける。

でも、私は変わった。もう、一人ぼっちで強がれる年齢でも立場でもない。

「廉の部屋に連れてってよ」

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第10話:「彼と、朝まで一緒にいたい」恋に溺れ、理性を失った人妻が犯した愚かなミス

私は一人ワザとらしく溜息をつきながら、ゆっくりと起き上がる。今まで浸っていた甘い感情から一転、心の中が夫へのギスギスした対抗心で染まっていく。

直哉が浮気をしても、連絡なく出張の日程を延ばしても、スマホの中で知らない女とイチャついたLINEを交わしていても、私の心は冷えて麻痺するばかりで、こんな感情を持ったことはなかった。それなのに。

自分が他の男と寝た途端、夫への激しい嫌悪感が目覚めるのは不思議だった。

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第11話:「幸せは、お金じゃ買えない」独身女の嫉妬に火をつけた、裕福な美人妻の傲慢

10年前よりだいぶ肉付きの良くなった小さな丸い後ろ姿が、ちょこちょこと内股歩きで去っていく。そんな彼女を見ていると、笑いを堪えるのに苦労した。

決して、里奈を庇ったワケじゃない。私はああいう自己主張の強い中途半端な女が、昔から嫌いなのだ。

それに、どうせ「やる」なら、もっと賢く、徹底的にやらなければ意味がないのだから。

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第12話:「ただの浮気なんかじゃない」夫を欺き、不貞を美化する妻を待ち受ける“罰”

私は廉と過ごす夜にこそ価値を感じていたし、そんな今の自分はとても健全で、どこか誇らしいような気持ちさえ持っていた。これは、ただの「浮気」や「不倫」なんかじゃない。

不貞を働く女は皆、そうして自分の行いを正当化し、欲望に溺れる大義名分を必死で搔き集めるものなのだろうか。

少なくとも私にとっては、妻である自分の立場も、妻を持つ廉の立場も取るに足らないもので、大して気に留めてもいなかった。

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第13話:淫らに漂う不倫妻の色気。“純愛”を掲げる女を現実に引き戻した、夫の衝撃の告白

―こんな時間に、リッツで何してんだよー

直哉からのメッセージを瞼に焼き付けたまま、私は礼儀正しいドアマンの視線から逃げるようにして、タクシーに乗り込む。

そして、窓ガラスに映った自分の顔を見てゾッとした。潤んだ瞳に、やけに血色良い艶を放つ肌。化粧も髪も乱れているのに、その女の顔には妙な色気が滲んでいるのだ。消そう、と意識して消せるものではない。

それは、たった今までの情事を生々しく彷彿とさせるものだった。

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第14話:「夫と、子作りしてるんです」愛する男の妻からの脅迫。苦悩の末、女が固めた決意とは

「あなたはご自分の立場を、わかってます?」

美月の口調はまるで談笑でもするような穏やかさで、それがかえって私の恐怖心を煽る。

そして私がなおも返事ができずにいると、彼女は受話器越しにクスクスと小さな笑い声を立て、楽しそうに言った。

「...可哀想な里奈さん」

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第15話:「離婚したっていい」情熱に駆られた男に、心揺れる人妻。泥沼化した禁断の恋の結末は...

「俺、離婚したっていい。里奈と別れるくらいなら、今の生活なんか全部手放したって構わないよ」

廉は苦しそうに顔を歪めながら、まるで懇願するように言った。

今の生活を手放し、二人一緒になる。

それは、これまで見て見ぬ振りをしながら、ずっと頭の隅に引っ掛かっていた希望的な未来だった。

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第16話:夫はなぜ、他の男と寝た妻を許したのか?ハイスペ男を魅了する、年下妻のしたたかな情愛

妊娠が分かったとき、私はようやく存在意義のようなものを与えられた気がしたのだ。

不貞を働き、子どもを持つことに強い情熱を持っていたとは言えない女が、真っ当な幸せに浸るなんて不謹慎だと自分でも思う。

でも、だからこそ私は自分を救ってくれたこの小さな命に感謝し、できる限り良き母親になろうと心に誓った。

そして私は、この妊娠によって、廉へのわずかな期待や執着をようやく手放すことができたのだった。

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第17話:「幸せなママ」を襲う悲劇。金にものを言わせる夫の裏切りと、嫉妬に燃える独身女に仕掛けられた罠

-これからは、この子のために生きていこう。

無垢な瞳を見ながら、そんな誓いを立てた。

廉と離れてからしばらくの間、私は行き場のない感情を持て余していたと思う。

しかし娘の誕生によって、私は彼以上に情熱を注ぐ対象を、ついに手に入れることができたのだ。

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第18話:「離婚したい」妻の決断に激怒する、浮気性の夫。彼が態度を急変させた、驚愕の理由とは

「離婚したい」

とうとう直哉にそう告げたとき、私は妙に冷静だった。

一方、直哉は想像以上に激しい抵抗を見せたし、多くの暴言も浴びせられ、やり場のない怒りをぶつけられた彼自身のお気に入りの家具には傷もついてしまった。

「ふざけんなよ。お前、寝言言ってんの?あり得ないだろ」

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第19話:お金も、夫も、美貌も、すべてを失った女。一通のメールで知らされた“最愛の男”からの報告とは

―里奈、元気?

メールボックスにひっそりと紛れていた、一通のメッセージ。送り主の名前が目に入ったとき、ほんの一瞬だが、あの、身体中の血が沸騰するような強い情熱を思い出した。

指先が、少し震えた。彼の肌の感触、温もり、そして私の名前を呼ぶ切なげな声が、一気に全身に蘇る。

すると今度は、そんな激しい感情に駆られた自分が恐くなり、思わずメールを削除してしまった。

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第20話:「私たちの関係は、何だったの...?」恋と友情のあいだで苦悩した女。最後の哀しき願いとは

「...再婚...ってこと?」

廉は優しげに微笑んでそう言ったが、その顔には、やはり複雑な感情が浮かんでいるように見える。

「まだ具体的に決めたわけじゃないけど。そう...なると思う」

私はできる限り、正直に答えることを意識した。中途半端な気持ちを残したままでは、きっと永遠に廉と離れることなんてできない。

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