平成最後の「女のもやもやセラピー」、もやもやのテーマは「ちょうどいいブス」についてです。

ちょうどいいブスとは、相席スタートの山崎ケイさんの著書『ちょうどいいブスのススメ』によると、美人ではないけどブスでもない女が目指すとモテるようになるポジションのこと。

しかし、この著書を原作とした同タイトルのドラマが夏菜さん主演で来年1月スタートするとなって、「ちょうどいいブスってなんだよ」「夏菜がちょうどいいブス設定って、どういう了見だ」とネットが大炎上しました。そして先日、ドラマ名がひそやかに『ちょうどいいブスのススメ』から『人生が楽しくなる幸せの法則』へと変更されました。

公式の説明によると、「より、ドラマの趣旨をわかりやすくするため」だそうです。つまり、ちょうどいいブスになると人生が楽しくなる、だからちょうどいいブスになれ、という内容に変更はないということ。これについて、「だったらインパクト優先で『ちょうどいいブスのススメ』でよかったのではないか」という意見が圧倒的です。

そもそもですが、この「ちょうどいいブス」という言葉は、夏に1回炎上経験があります。それは山崎ケイさんを起用したシャンプーのプロモーションで、彼女が該当のシャンプーで洗い上げたさらっさらの髪の毛をたなびかせながら「もうちょうどいいブスとは言わせない」というコピーが流れるというもの。

これに対して、「女は別に男のために髪の毛キレイにしてるわけじゃない」「身ぎれいにしている女性に対して、ちょうどいいブスって失礼すぎませんか?」というようなクレームがバンバン入り、あっという間にお蔵入りとなったのです。それを知らなかったわけがありません。「ちょうどいいブス」という言葉に関して、ネットが敏感であることはわかっていたに違いないのに。その上でタイトルにしたに違いないのに。なぜひっこめたのか……謎。

ブスという言葉には良くも悪くも、けっこうな破壊力があります。ドラマ原作となっている『ちょうどいいブスのススメ』は、ブスを自認した山崎ケイさんによるブスのためのモテテク本ですが、もし、この本のタイトルが「人生が楽しくなる幸せの法則」だったら、あまたのモテテク本の中に埋もれ、日の目を見ることはなかったかもしれません。それだけ、ブスという言葉にはインパクトがあるのです。山粼ケイさんは「ちょうどいいブス以上にハマる言葉が見つからなかった」と言っていますが、女性誌的には「ブサかわ」でも「ニュアンス美人」でも「雰囲気美人」でも、近しい言葉はいくらでもあるんです。でも、ブスのほうが断然強い。反感覚悟の言葉選びであるなら、「ちょうどいいブス」はグッドチョイスと言えましょう。

とはいえ、夏菜さんをちょうどいいブスに設定し、「全女子はまず自分をブスだと思え。そしてちょうどいいブスを目指せ。そしたら幸せになれるから」というドラマのアプローチは、無理があったと言わざるを得ません。原作は、ブスコミュニティーでお互いの傷口をなめ合ったり塩を塗り込んだりしている方々向けだからこそ成立しているのです。コミュニティー外から一方的に、しかも上から目線で(ドラマでは山崎ケイさんがちょうどいいブスの神様設定)「ブス」と言われ、「ブスはブスでもちょうどいいブスになれ」と言ってくるというのは、受け入れがたいものです。

夏菜じゃなければ満足したのか!?

「ブスだから幸せになれない」「ブスだからモテない」「ブスだから生きててもつまらない」「ブスでどうしたらいいのか」という悩める人たちにとっては、「ブスはブスだからって人生を悲観してウジウジしてるんでなく、ちょこっとだけ頑張ってちょうどいいブスまで高めれば私くらいはモテるようになるよ!私が習得したテクニックを教えるよ!」という山崎さんは、ちょうどいいブスの神様たる存在でしょう。しかし、顔面偏差値が夏菜レベルの女子にとっては、ありがた迷惑なだけです。「絶世の美女や限界値を超えるブスを目指せというならまだしも、中途半端なブスに成り下がってなにがおもしろいのか」というわけです。

しかも、そのちょうどいいブスの塩梅というのが「男性目線で“酔ったらイケる”女性」なもんですから、いろいろこじらせて幸せになれていない婚活コミュニティーの面々からすれば、「はぁ? そのレベルはゆうに超えてるわ!」「そんなもんは幸せじゃない! 舐めてんのか」となるわけです。唯一、高齢処女の方々の中に「なれるものなら酔ったらイケる女になって、そろそろ本気で処女を捨てたい」「私はドラマの情報解禁があったときから、来年はこのドラマを絶対に見ようと思っていた」という意見がチラホラありました。とはいえ、それは全体から見るとごく一部であり、大方は「お前にブスとか言われたくない」という気持ちになったようです。「お前」というのは山崎ケイさんではなく、世の中のすべての他人から、ということです。

原作にもありましたが、「私って、ちょうどいいブスなんですよ〜」と自称するのは勝手ですが、人からブスと言われるのは本当に本当にイヤだし傷つくものなのです。なのに、ドラマは「お前はブス!」と面と向かって言い切った感があります。そこが不快と感じさせた根幹なのだと思います。

とはいえ、号泣しても怒鳴っても舌打ちしてもかわいいとか、大きなマスクをしても、画質が粗い状態でも美しさがほとばしってしまうという美人芸能人レベルでない限りブスと定義してみてください。その上で、「愛嬌があって賢いブス」を目指すというのはいいことだと思いませんか。図らずも頭文字をとるとAKB。平成を象徴するワードになりました。

ブスは人を貶める言葉です。人に向かって言ってはいけません。

その2では、自称ブス、「でも、別に不幸ってわけじゃないですよ?」という女子たちにあずき総研が聞いたリアルな「人生が楽しくなる幸せの法則」と、「男性と2人きりで食事した後、このあとどうする? と聞かれたら“それ、女に聞いちゃいますぅ?”と上目遣いで答える」といった山崎ケイさんばりのモテテクをご紹介します。〜その2〜に続きます。