観ない世界 目隠しバスツアー体験で非日常の感覚を知る - Netflixオリジナル映画『バード・ボックス』presents「観ない観光」

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動画ストリーミングサービス最王手のNetflixがオリジナル映画のプロモーションとして、"観ない"世界を体験する目隠しで巡るバスツアーを行った。

観えないことで何が起きたのか?




◎「観てはいけない」映画の登場人物を追体験するツアー
クリスマスを迎えた週末、Netflixがオリジナル映画『Bird Box』の日本公開に合わせて、映画の世界を追体験できる体験ツアーを実施。12月22日から26日の5日間、1日2回行われ、1回20名、ノベでおよそ200人が参加するイベントとなった。
Twitterのプロモツイートなどで拡散し、先着順であっという間に定員になったという。


Netflixオリジナル映画『バード・ボックス』presents 目隠しで巡るバスツアー「観ない観光」


20日の木曜日に見かけたツイートでこのイベントを知り、脊髄反射的に申し込みをした。
何とか先着の枠に入ることができ、クリスマス当日の25日、ツアーに参加してきた。
覚えている限りをレポートしたい。


◎「観えないこと」で聴覚は過度に反応する
ツアーは渋谷駅から始まった。
まず、最初に渡されたアイマスクをかけるよう指示されたのは渋谷のスクランブル交差点の手前。ご存知の通り人の多さもさることながら、周囲全体の音が半端ない。

スタッフの誘導で円形(というのは、最後に明かされた)になった私たちは、ツアーガイドから頭の中に入っているはずのランドマークがどちらの方向にあるか聞かれるのだが、これがわからない。写真を見るとわかるが、参加者が指している方向がみなバラバラだ。


ちょっと怪しい集団になっている



1つの場所を指差すはずが、みんなバラバラである


とにかく、ほぼ360度の方向から押し寄せる音。
視覚に頼れないとなると、耳からの情報(音)だけでもモレずに拾おうとしてしまうのか、いつも以上の音量、いくつもの音が重なって聞こえる。

普段はそこまで耳(聴覚)に意識はいかないのだが、そうまで変わるのかと実感する。
さすがにスクランブル交差点をアイマスクしたまま渡るということはなく(それはさすがに恐怖だ)、そこからツアーバスに乗る。


新聞紙で裏張りされた窓、これは劇中の再現なのだそう



◎視覚なしで味わう料理
バスが着いたのは某レストラン。
そこで、アイマスクを付けて3品のメニューを食べる。


会場のレストラン


まず、野菜スティック。いつもの野菜の味よりも、甘く、みずみずしく感じる。
次に、鉄板で焼かれるステーキの音が聞こえる。それにガーリックソースをかけた、さらに「おいしい音」が響き、食欲を刺激する匂いがする。取り分けて皿に準備されたものを口にした。


観えない中、手探りで口に運ぶ





そして、コーヒー。
キャラメルの香りが付いた紙と一緒に1杯のコーヒーが出て来て、脳内ブレンドするように言われる。これが難しい。個人的には、匂いのあとに来る味覚は元と同じままだった。


用意されたメニュー3品









◎3つ目は視覚なしの散策
再度バスに乗り向かったのは南青山の路地を入った某所。
そこで用意された"道"を登るというもの。

さすがにこれは、スタッフが一人、最初から最後まで手を引いてくれるのだが、映画からと思われる切迫した音声が、恐怖を煽る。

実際、足を踏み出すのはなかなか怖い。また、坂道の終わり、階段の踊り場など段差があるという予測が裏切られて、つまずくことも多々。


当然、自身は暗い中を進んでいる








全員の散策が終わった段階で、最後に2時間弱のツアーをスライドショーで振り返る。
ここで初めて、本当は何があったのかと明かされるという流れだ。


一番驚いたのは、レストランで味わったメニュー。
通常との感覚の差を味わうだけのようでいて、それだけではなかった。

野菜スティックで視覚のない状態の味覚を強調し、次の段階で、じゃあステーキは……
となるのだが、そのまま視覚のない状態での味を感じるだけと思っていたら、まんまとやられていた。

ステーキとコーヒー、実は、蓋を開けてみるとこの2つの仕掛けは同じだったのだ。
ステーキの焼ける音を流し、匂いも送風機から出していた。

その事実が隠されていただけで、(筆者の場合)味覚がごまかされてしまった。


肉の焼ける音が再生されていた!



ソースの匂いは送風機から


一方、コーヒーは別物として後から香りを渡されて味わうというプロセスであったため、味覚をだますことが(筆者の場合)なかなか難しかった。
もちろん、
・うまくキャラメルフレーバーのコーヒーを味わえた参加者
・ステーキにガーリックの味はしないなと感じていた参加者
などもいたというから、このあたりは体調や感覚の度合いに個人差があるのだろう。

今回のPRイベントは日本独自の企画だったそう。
・10人弱のスタッフが見守っていること
・全部ではなく要所要所でアイマスクという設定
これらで"楽しめる"レベルになっていたことも、イベントとしてよいデザインだと感じる点だ。


体験としてよくデザインされたイベントだった


「観えない状態で街に出る」ということ自体が新鮮なわけだが、
・想像ではなく、視覚のない状況を感じる
・その結果、どうしても視覚に引っ張られてしまう嗅覚や味覚をより働かせようとする
これらの体験は非常に興味深い。


大内孝子