2019年10月に消費税が10%に上がる。増税前に買うべきものとは何か。1級FP技能士の花輪陽子氏は「増税でさらに値上がりする可能性があるものは、買っておいたほうがトク。交通機関や遊園地のチケットが代表例。ただし、あわてて買ってはいけない商品もある」という。「プレジデント」(2019年1月14日号)の特集「『お金のいい話』大全」より、記事の一部をお届けします――。

■商品を3つに分けて考えてみると

消費税が増税する前後は、市場の状況を注視しなければ損をしてしまう可能性があります。

2019年10月の消費税増税を迎える前に何を買うべきで、何を買うべきではないか。世の中の商品を以下の3つに分けて考えてみるとわかりやすいでしょう。

(1)消費税増税に伴って、必ず値上がりするであろうもの。
(2)値崩れしにくく、消費税増税前に買っておいてもよいもの。
(3)値下がりする、または値引きされることが多く消費税増税分がそのまま値上がりするとは限らないもの。

まず、増税に伴って必ず値上がりすると思われるもの。こちらは、もちろん増税前に買っておくのがベスト。

どういったものが値上がりするかに関しては、前回の増税の際に値上がりしたものが参考になります。

交通機関のチケット、書籍、デパートなどで定価販売される化粧品、ブランド品、美容整形やインプラントといった保険の利かない医療費、カルチャースクールや学習塾の受講費用、常備薬やコンタクトレンズ、たばこなどは、増税した分がそのまま上乗せされると考えられます。

■車やリフォーム、白物家電は

14年4月、消費税が5%から8%に上がった際には、増税分以上に価格が引き上げられた、「便乗値上げ」が散見されました。平時に値上げしてしまうと消費者の反感を買う可能性のある、イメージが重要な商品が中心です。

PIXTA=写真

特にアミューズメントパークのチケットは値上がり傾向にあり、増税を機に更に値上がりする可能性もあると言えます。有効期限を確認して買っておくのも手です。

次に、値崩れしにくく、消費税増税前に買っておいてもよいもの。

これらは、値上がりしても消費者の買い控えがなく、需要が変わらないもの、と言い換えることもできます。例えば、浄水器のカートリッジやプリンターのインク、家電のフィルターやバッテリーなどの部品、コーヒーメーカー用のポーションなど。本体のほかに補充交換を必要とするものは、お得なタイミングを見極めて購入してもよいでしょう。

底値があまり変動せず、長いスパンで使用するものも、買っておいて損はないでしょう。

PIXTA=写真

こちらは、墓石や仏壇、礼装や流行り廃りのないジュエリー、ランドセルや学習机、五月人形、呉服、ガステーブル、電動アシスト自転車、塩・砂糖、非常食などが該当します。

高額であるために増税によって値上がりする価格が大きい、車やリフォーム、白物家電などの大きな買い物も購入のチャンスです。

■商品の引き渡し時期に要注意!

基本的に、価格は引き渡し時の税率が適用されますが、リフォームや新築住宅は、増税の半年前にあたる19年3月31日までに工事請負契約されたものに対して経過措置が適用され、引き渡しが同年10月以降になっても現在の消費税率8%が課税されるため、増税前の契約であれば必ず3月31日までに行いましょう。

自動車は、陸運局での登録認可によるナンバープレートと車検証が交付された日の税率が適用されるため、その手続きに時間がかかることも念頭に入れておく必要があります。

自動車の場合は決算期である19年の3月が価格交渉のチャンス。販売店が18年度の売約数を伸ばしたいと考える可能性があるからです。

また、テレビやパソコンなどの最新型が注目される製品とは異なり、冷蔵庫やエアコンなどの商品は新商品が発売されたからといって大きく価格が変更されることはありません。ここ数年の状況を注視していても同等スペックの商品の底値は大きく変わっていないので、増税前が買い替えのチャンスだと言えます。

こちらも、商品引き渡し時点での税率が適用される可能性があり、増税前の駆け込み需要で取り寄せに時間がかかることを忘れずに。

冷蔵庫など通年ニーズがあるものは年末や正月のセール、エアコンは暖房需要が収まった春から初夏にかけての購入がおすすめです。

反対に、金など市場によって価値が決まるものは価格が変動してしまうため、あまりおすすめできません。

最後に、消費税増税分がそのまま値上がりするとは限らないもの。

写真=iStock.com/CreativaImages

こちらは衣類や食品、トイレットペーパーなどの日用品などが該当します。これらの商品は頻繁にセールやディスカウントが行われ、増税後も手頃な価格で手に入れることができる可能性が高いと言えます。

また、日用品は増税によって値上げが行われたとしても、値上がりする金額自体はそう大きくありません。保管場所に特別余裕があるというわけでない限り、増税前に慌てて買いに走る必要はないでしょう。

■メルカリやヤフオク! が使える理由

増税は、私たち消費者の生活に直接関わってきます。消費税増税に伴い変更される制度も要チェックです。

14年の増税の際、増税による消費者の負担を軽減するため、「すまい給付金」という、住宅購入の際に給付金が支給される制度が導入されました。

消費税が10%に上がるのに伴い、これまで最大30万円だった支給額の上限が50万円に引き上げられます。また、住宅購入や新築のために親や祖父母から資金贈与を受ける際の贈与税の非課税枠」も、現在の「最大1200万円」から「最大3000万円」に引き上げられます。

また、メルカリやヤフオク! などで行われる個人間取引には消費税がかからないため、今後は欲しいものをフリマアプリやオークションサイトで購入することが正解のことも増えてくるでしょう。

大切なのはよく考え、早め早めの行動を心がけること。お得に増税を迎える準備をしておきましょう。

▼増税前に買うべきもの、買うべきでないもの
買ってトク! ほぼ確実に値上がりが起こるもの
交通機関のチケット・遊園地、アミューズメントパークのチケット・書籍・デパートなどで定価販売される化粧品・ブランド品・美容整形・インプラント・カルチャースクール・学習塾・常備薬・コンタクトレンズ・たばこ
タイミングを見極めて買ってもよいもの
冷蔵庫・エアコン・車・リフォーム・電子レンジ・浄水器カートリッジ・プリンターのインク・家電用バッテリー・コーヒーメーカー用ポーション・墓石・仏壇・礼装や流行り廃りのないジュエリー・ランドセルや学習机・五月人形・呉服・ガステーブル・電動アシスト自転車
買うと損! 値上がりするとは限らないもの
衣類・食品・トイレットペーパー・ティッシュペーパー・洗剤・ゴミ袋・殺虫剤・防虫剤などの日用品・パソコン・テレビ

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花輪陽子(はなわ・ようこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
雑誌・新聞・テレビ等でマネー情報の企画や執筆を幅広く行う。『毒舌うさぎ先生のがんばらない貯金レッスン』(日本文芸社)のほか、著書多数。
 

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(1級ファイナンシャル・プランニング技能士 花輪 陽子 構成=梁 観児 写真=PIXTA、iStock.com)