by Tony Alter

体重が気になりつつも、「どうしてもお腹が一杯になるまで食事を取らないと気持ちが悪い」と感じてしまう人も少なくありません。そんな肥満に悩む人のために、「胃の中にセットすると電気パルスが発生し、脳を満腹だと錯覚させるデバイス」が開発されました。

Effective weight control via an implanted self-powered vagus nerve stimulation device | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-018-07764-z

Implantable device aids weight loss - College of Engineering - University of Wisconsin-Madison

https://www.engr.wisc.edu/implantable-device-aids-weight-loss/

2017年の調査によると、世界中で実に7億人以上の成人や子どもが肥満であり、肥満になる人の数は年々着実に増加しているとのこと。ウィスコンシン大学の材料工学教授であるXudong Wang氏は、バッテリーが不要でわずか1cm以下の大きさのダイエット用デバイスの開発に成功したとしています。

デバイス本体は硬貨程度の大きさしかなく、デバイスを使用したい人の胃の中に直接移植して使われます。デバイスはそれ自体にバッテリーを搭載していないため、一度設置したらバッテリー交換のために取り出す必要がありません。その代わりに料理やお菓子を食べた時に発生する胃の自然な動きに応じて電気パルスを生成し、胃と脳を結ぶ迷走神経に伝えるとのこと。この電気パルスが脳に「今は満腹だ」と錯覚させるため、デバイスの使用者は必要以上に料理を食べることがなくなり、ダイエットすることができるそうです。



「胃が動いた時に発生する電気パルスは通常の体内でも発生する自然な現象であり、開発したデバイスはこの動きを増強します」とWang氏は語っています。ラットを使った実験では、デバイスを移植してから25日間で急激な体重減少が発生し、その後安定して約100日間はデバイスを付けたラットは対照群よりも体重が38%減った状態をキープし続けたとのこと。

ダイエットのために胃そのものの大きさを変える胃バイパス手術などの外科的治療法もありますが、Wang氏が開発したデバイスは可逆的な効果をもたらすものだそうです。実験では、デバイスを移植したラットから12週間後にデバイスを除去すると、すぐに食物摂取量がデバイス移植以前のレベルに戻り、体重も元に戻りました。

Wang氏はナノ発電機に関する世界的権威でもあり、今回開発されたデバイスも「胃壁のうねり」というわずかな動きを電気に変換し、神経に伝える構造が要点となっています。今後はさらに大きな動物での実験を進め、やがて人間にも応用されることを期待しているとWang氏は述べています。



by Emilio Labrador