今や憧れの職業にもランクインするユーチューバーなどの動画投稿者ですが、果たして彼らは10年後どうなっているのでしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では、編集長の柴田忠男さんが、オタク文化を世間に広めることに注力し「オタキング」とも呼ばれる岡田斗司夫氏が未来予想を語った一冊をレビューしています。

『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』

岡田斗司夫 著・PHP研究所

孫2号が小学生の頃、ボクはゆうちゅーばーになるんだ、と言っていた。ソニー生命保険の2017調査では「男子中学生が将来なりたい職業」の第3位が「ユーチューバーなどの動画投稿者」となっている。わたしはSNS系には殆ど近寄らないが、岡田斗司夫『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』は興味深く読んだ。この本は、中学生になった彼にも読ませないと。

ネットのメディアにはブログ、ツイッター、ユーチューブなどがある。ブログは新聞、ツイッターはラジオ、ユーチューブはテレビといえる。テレビ番組の制作はテレビ局に独占されていたが、一般大衆に開放されたものこそユーチューブである。20世紀型オールドメディアである新聞、ラジオ、テレビは「終わった」とまではいえないが、新しい情報を提供するメディアではなくなった。

テレビの進化形であるユーチューブで、テレビタレントのようなポジションを目指しているのがユーチューバーだ。しかし、10年後、日本で活躍しているユーチューバーは誰一人生き残っていないかもしれない。彼らが金銭的に、知名度的に、大成功する可能性は限りなく低くなっている。なぜか。10年後には一部の人を除いて、外国語を勉強する必要はなくなると考えられるからだ。

スマートスピーカーは言語データーを蓄積し、機械翻訳や音声認識の精度はさらに高まる。機械翻訳によって言語の壁は次第に溶けてなくなる。日本にはアニメ、マンガ、アイドルといった豊富で強いコンテンツがあるから、機械翻訳の日本語対応は早い。そうなると、ユーチューバーたちはどうなるのか?

日本のユーチューバーは、必然的に海外のユーチューバーとの競争に放り込まれる。海外のユーチューバー自身が、キャラクターに応じた流暢な日本語で話しているように見える。そんな世界で、日本人のユーチューバーにどの程度のアドバンテージがあるのか。10年後の世界では「日本だけ」の商品やコンテンツはどんどん少なくなっていく。1億3,400万人が対象では中途半端過ぎる。

ユーチューブは、グローバルでの熾烈な競争が展開される競技場になる。ハリウッド俳優やセレブに荒らされる。それより前の日本では、既にある程度知名度を得ている人たちがユーチューブに流れてくる。日本人ユーチューバーの市場は、これから2、3年でアイドルや芸人に荒されることになる。そして、面白いものをパクろうと待ち構えている世界中の人々……レッドオーシャンだ!

そして10年後、人間ユーチューバーはAIユーチューバーに淘汰される。彼らの武器は「面白さ」「可愛らしさ」「毎日100回更新するマメさ」などであり、人類の日常生活における興味関心を占有してしまう。人工知能が支配する、のではなく、人工知能が人間のフォロワーを独占する、ということになるのだ。

著者は断言する。「今の僕たちは過去の映像コンテンツなんてどうでもよくなっているんです」「次から次へと新しいコンテンツを生み出し、配信できるサービスに人が引き寄せられていく」「僕たちが関心を持っているのは『最新』『今』だけなんです」「その時点での『今』をいかにうまく提供できるかでしょう」。人間ユーチューバーはAIユーチューバーに殺される……。

編集長 柴田忠男

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