日本における初期のクリスマスケーキ(1910年のケーキを復元、不二家提供)

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 きょう12月24日はクリスマスイブ。家族や恋人、友人とケーキを囲む人も多いのではないでしょうか。現在では「クリスマスといえばケーキ」と当たり前のように思っていますが、そもそも、クリスマスになぜケーキを食べるのでしょうか。また、日本でこの習慣はいつごろ、どのようにして広まったのでしょうか。取材しました。

欧州土着の宗教行事にクリスマスの要素

 まず、クリスマスケーキを食べる理由について、日本洋菓子協会連合会(東京都世田谷区)に聞きました。

Q.なぜ、クリスマスケーキを食べるのでしょうか。

担当者「欧州では紀元前から、12月下旬に冬至を祝うパーティーや土着の宗教行事が開かれていました。そのような、クリスマス以前から行われていた行事に、クリスマスの要素、つまり、イエス・キリストの誕生を祝う要素が加わり、そのクリスマスパーティーの料理の中から生まれた菓子などがクリスマスケーキのおこりではないかと考えられます」

Q.外国のクリスマスケーキについて教えてください。

担当者「ドイツの『シュトーレン』、フランスの『ブッシュドノエル』、英国の『クリスマス・プディング』、イタリアの『パネトーネ』など、地域ごとにさまざまなクリスマス菓子があります。ただし、日本のクリスマスケーキのような位置づけのものというよりも、『主にクリスマス時期に食べるお菓子』という扱いのものが多いです」

 次に、日本でいち早くクリスマスケーキを発売した不二家(東京都文京区)広報室の担当者に聞きました。

Q.最初のクリスマスケーキはいつ発売され、どのようなものだったのですか。

担当者「不二家は横浜市元町で1910(明治43)年11月に創業し、その年からクリスマスケーキを販売していました。最初のクリスマスケーキは、ドライフルーツと洋酒を使って焼き上げたプラムケーキに、お砂糖の衣をかけたシンプルなものでした。販売数量は分かりかねますが、当初から大変好評だったそうです」

Q.クリスマスケーキを食べるという習慣は、日本ではいつごろから、どのようにして広がったのでしょうか。

担当者「始まりは、はっきりとは分かりかねますが、冷蔵庫の普及(1960〜70年ごろ)とともに広がっていったと考えられます。不二家では1952(昭和27)年からクリスマスセールを始め、積極的に販促活動を行ってきました。そうしたこともあり、日本でも『クリスマスケーキを食べる』という文化が広まり、定着していったと考えられます」

Q.クリスマスケーキといえば、スポンジケーキに生クリームとイチゴがのったものが主流です。どのようにして定着したのでしょうか。

担当者「大正時代から昭和期にかけ、バタークリームのデコレーションケーキ全盛の時期がありました。その後、冷蔵庫の普及とともにシャンテリークリーム(泡立てた生クリーム)のショートケーキが普及し始めました。

シャンテリークリームは温度管理が難しく、昔は、冬場や設備の整った場所など限定的にしか使うことができませんでしたが、店舗や家庭で冷蔵庫の利用が増えるにつれ、より手軽に食べられるようになり、シャンテリークリームのクリスマスケーキが定着したと考えられます」

 なお、不二家広報室からは、「クリスマスケーキを不二家が日本でいち早く発売したことは確かですが、一番最初に始めたと弊社からは明言できません。他の洋菓子店で販売されていた可能性もゼロではありませんので」とのお断りもありました。

 それでも、クリスマスケーキが、日本で100年以上前に作られていたことが分かりました。今年はその歴史に思いをはせながら、クリスマスケーキを味わってはいかがでしょうか。