「脚本は小林靖子」の7文字に衝撃を受けた人へ。本人が語る『映画刀剣乱舞』創作秘話

『映画刀剣乱舞』特集第4弾は、クリエイター陣から、脚本家の小林靖子にインタビュー! “靖子にゃん”の愛称で特撮界隈を中心に、ドラマやアニメでも熱い支持を得ている実力派ストーリーテラーが、初めて対峙した『刀剣乱舞』の世界。2.5次元舞台やアニメ作品など幅広く展開されている『刀剣乱舞-ONLINE-』から、“ここにしかない本丸”を導き出した。その創作の過程を語ってもらった。

撮影/渡部俊介 取材・文/横澤由香 制作/アンファン

「映画刀剣乱舞」特集一覧

初見の人でも世界観がわかるよう、本能寺の変を題材にした

『刀剣乱舞』という作品はご存知でしたか?
タイトルぐらいは知っていた、というくらいで…脚本を書くにあたって改めて原案のゲームをやりました。あと、舞台も拝見しました。
舞台はストレートプレイ(舞台『刀剣乱舞』)ですか?
ストレートプレイとミュージカル、どちらもです。ミュージカルはみなさんペンライトを持っていて、客席の盛り上がりが「スゴいなあ」っていう、その熱気が印象的でした。
ストレートプレイのほうは鈴木拡樹くんの三日月宗近がどういう感じなのかを観たいと思っていたんですが、まずもう設定が面白いなと。
明智光秀が出ていた本能寺のお話でしたが、普通は「歴史を守るために歴史上の人物を守る」のが主人公たちの役目だと思うんですけど、舞台『刀剣乱舞』はそうじゃない。「歴史を守るために歴史上の人物をちゃんと殺す」っていうのがね、面白いなと思いました。
では最初に「脚本を」とお話をいただいたときの心境は?
「実写映画やるんだ」っていう驚きが少し。でも題材的に自分の好きな時代劇っぽいチャンバラができるので、素直に「面白そうだなあ」と思いました。
小林さんは時代劇をとても愛されていて、脚本家としての原点もドラマ『必殺』シリーズだとうかがっています。今、時代劇のドラマは以前よりも少なくなってしまいましたが、ゲームやアニメ、2.5次元作品ではむしろ時代劇は人気のジャンルである気がします。
たしかに最近のゲームやアニメには時代ものが多いかもしれませんね。でも昔私が大好きだった頃の“チャンバラ時代劇”とはちょっと違ってて…“ニュー時代劇”というか“ネオ時代劇”というか。髷(まげ)も月代のあるようなちゃんとした髷じゃなくて、ざんばら髪でいろんなスタイルですし、衣裳も言葉遣いも身のこなしも、あまり時代劇のルールにはのっとっていないものが多いですよね。
スタイリッシュにアレンジされてますよね。そうした新しい面白さと、王道をいくところ、両方を入れていきたいというお気持ちが…。
ありました。刀剣男士は確固たるキャラクターとして存在しているので変えることはできませんけど、そこに歴史上の人物が出るのなら、彼らの言葉遣いや所作や考え方…周辺のいろいろなものはなるべく昔の時代劇っぽくするとバランスがいいな、と。
『刀剣乱舞』はPCブラウザゲームから始まりアニメが2種類、舞台もストレートプレイとミュージカルの2種類があります。ストーリーの差別化には骨が折れたことと思いますが、物語の舞台となる時代や登場する刀剣は、どうやって決めたのですか?
まず鈴木くんの出演が決まっていました。それに伴って「舞台版キャストのみなさんを」という大まかな括りが決まっていて。あとはストーリーを固めていくうえで必要な男士たちを決めていきました。
本能寺指定、とかではなかったんですね。
なかったです。ホントにまず「じゃあどこに行くか」っていうところから…幕末の設定にするとか、アイデアはいろいろあったんですよ。でもやっぱり『刀剣乱舞』初見の人でも世界観がわかるようにとか、ライトなユーザーでも観れることを一番に考えました。
ゲームをプレイしているからといって、歴史に詳しい方ばかりではないでしょうしね。だからあまりにマイナーな歴史は…それはそれで面白いんですけど(笑)、でもそうするとそこからの説明が必要になってしまうので。
楽しむまでの“前提”が増えてしまう。
はい。あと実写ということはロケが必要になってきますし、エキストラを使うなら当時の人たちの衣裳も必要になってくる…とかいろんなことを考えると、やっぱり有名どころ、あまり労を多くせずに「バン!」と持ってこれるのは本能寺だよねっていう発想です。
この映画の本能寺がまたスカッとする展開で、観ていてとても気持ちがよかったです。「いつかこういうことをやりたい」と温めていらしたんですか?
いや、それはさすがになくて(笑)、あくまでも創っていくなかでいろいろ考えていった結果です。歴史もので、しかもタイムパトロールものなので…歴史の定説をどう変えていくかと、そこでの物語上の仕掛けと。いろいろ話し合いを重ねて、だんだん形になっていきました。
あと、私は書くときにテーマは決めないんです。とりあえず観ていて面白いものにするのみ。私自身も大好きなカッコいいチャンバラ、刀剣男士たちがカッコよくアクションできる殺陣シーンがたくさんあるといいなとは、ずっと考えてましたけど。

三日月宗近役は鈴木拡樹。「だったらもう安心だな」

物語の中心を担う三日月宗近役の鈴木拡樹さん。役者としての印象はいかがでしたか?
鈴木さんは…ホントにたまたまなんですけど、以前、『刀剣乱舞』以外の舞台でも2度ほど拝見したことがあったんです。『三人吉三』(少年社中『三人どころじゃない吉三』)とか…。
少年社中の主宰の毛利(亘宏)さんとは特撮繋がりのご縁があって、あと知ってる役者さんも出てらしたので観に行って。「わ、腰の座った立ち回りとか、いい動きのできる若い役者さんがいらっしゃるな」と思ってすごく印象に残ってたんです。それが鈴木さん。
殺陣に魅了されていたんですね。
頭身も昔と今では全然違うので、今の若い役者さんはどうしても海外風のアクションになってしまいますよね。足は長いし、背は高いし、全然チャンバラ向きではない体型で。
そういう現状の中、鈴木さんは今の若者でありながらきっちりと本格的な殺陣をこなしていた。それで余計印象に残っていたのかもしれません。だから映画化のお話の中で「三日月宗近を演じているのは鈴木さん」だとお聞きしたとき、「ああ」って。だったらもう安心だな、という気持ちになったのを覚えてます。
当て書きとまではいかないと思いますが、その鈴木さんの存在感からなにかインスパイアされて役を膨らませたり、話を動かしたりなどは?
キャラとしては決まっていることが多いのであまりないんですけど、芝居場は作りたいなって思いました。鈴木さんならこういうお芝居もちゃんとやってくれるんじゃないかなあっていうようなシーンを書きましたね。
鈴木さんの三日月宗近と山本耕史さんの信長が対峙する場面などはヒリヒリとしびれるような空気で、時代劇ならではのスリリングさ、重厚さがほとばしっていました。
芝居はお互いの掛け合いでどんどんいいものが出るっていうのは、ああいうことかなとすごく思いましたね。山本さんのお芝居で、鈴木くんのお芝居も立っていくっていう駆け引き。
映像のお芝居と舞台のお芝居は違うので…その両方で同じキャラクターを演じる鈴木さんはいろいろ難しいところだと思うんですが、でも、やっぱり山本さんとか映像の素晴らしい役者さんと一緒にお芝居すると、ちゃんとその空気が際立ってくるんだな、おのずと違う表現になるんだなと、改めて感じさせてもらいました。
舞台のシリーズを見慣れている目にも、同じ役者の同じキャラクターなのに舞台版と映画では全然違う表情の刀剣男士がいる、と確信できました。
舞台の三日月宗近は感情をあまりたくさん出さないんだなと思って、どうやったら三日月宗近の感情が動いているさまを描けるかは、ずっと自分にとっての課題でしたね。
とはいえあまりそんなに激しいことはできなかったんですけど、でもちょっとは怒ってるふうとか、ちょっとは笑ってるふうとか、優しさとか、そういうところをちょこちょこ挟んで。感情の動きとか、見せ場とかはなるべく意識して作りました。
キャラクターの縛りの中で実力を発揮した刀剣男士と、戦国の世の漢をパワフルに演じた人間組。そのコントラストと融合の度合いも印象的でした。
人間と刀剣男士との差がすごくはっきり見える。まずそこがこの映画に確実にリアリティを与えてくれてると思います。刀剣男士は刀剣として昔を生きていたといえ、人の身としては未来で生き返った存在。
それとは異なる“その時代に生きている”信長や秀吉を、山本さんと八嶋(智人)さんに重厚な芝居で作っていただいた。台詞回しとか所作とか、そこだけはまさに時代劇っていう雰囲気があって。

強く印象づけるために、時間遡行軍の立ち位置を工夫

撮影は見学されましたか?
一日だけ行きました。そのときは大勢のアクションシーンの撮影をしていて、兵士や時間遡行軍のエキストラさんがワラワラ出てくるとやっぱり盛り上がるな〜って感じました。
役者の方々ともお話されましたか?
刀剣男士のみなさんとはほとんど初対面だったので、ごあいさつだけして。日本号役の岩永(洋昭)さんだけはいつもどおりの岩永さんでした(笑)。
岩永さんは『仮面ライダー オーズ/OOO』(テレビ朝日系)でご一緒した顔なじみ。
なので、鈴木くんとお話するときもあいだに立ってコミュニケーションをとってくれましたよ。
キャストインタビューではみなさん、小林さんが書く作品に出られる喜びを語ってくださっています。それぞれが映画での違いを脚本から明確に感じ取っていたみたいで。
やっぱりそうなんですね。キャラはもう役者さんたちのほうが長くやってらっしゃるので、逆になにかあったらきっと直してくださるだろうなと思って、私は安心して委ねていました。
作品の世界観で言うと、先ほど出てきた時間遡行軍も『刀剣乱舞』ならではの存在です。映画ではどのような捉え方を?
アクション映画ですから、歴史上の人物との物語だけでなく、やっぱり遡行軍ともガンガン戦ってほしい。なので、「敵」だというのをある程度強く印象づけるためにも、時間遡行軍が明確な目的を持って裏で動いているというふうに位置づけました。

刀剣男士と審神者の、ちょっと踏み込んだ関係を描けた

今回の8振り、改めてその並びを見ていかがでしょう?
いい感じだな、と思います。人数も役者さんもいいバランスで。ここにいない刀剣男士はみんな遠征に行っていると思っていただければ(笑)。
この本丸、刀剣男士と審神者との信頼関係もとても体温を感じる描写になっていますよね。
耶雲(哉治)監督に「ここはきちんとやりましょう」と言っていただけたので。ちょっとひとつ踏み込んだ関係が描けたのかなと思ってます。
“映画の本丸”を描いたことで、小林さんご自身が改めて見出した『刀剣乱舞』の魅力というと。
私個人としては最初に舞台を観たときの、「設定が面白い」っていうところに尽きるのかな。
やっぱりファンのみなさんは個性的なキャラクターたちが好きなんだと思うんですよね。そこはもうスタッフの方たちがユーザーが喜ぶポイントをちゃんと知っていて、思いを持って創っているな、というのを強く感じますよ。
映画化発表時のコメントでも「特撮アクション畑の人間なので、《萌え》はないかもしれませんが、《燃え》はきっとあります」とおっしゃっていましたね。
やっぱり“男士”とつく限りは、その“男士”の部分が…萌えが欲しいとは思うんです。でもそこはファンの方々の中にはもうできあがってるものがあるので、映画を観たときにそこからまた想像を膨らませて楽しんでいただければ、と。
おそらくみなさんもう楽しみ方のベテランなので、映画版は映画版で自分たちが面白いと思うものを自信を持ってお届けして、そこから先はお任せしますっていう感じですね。
映像で通してご覧になった感想もぜひお聞きしたいです。
最初はあの髪型や衣裳でのデイシーン、陽の光のもとで彼らはどう見えるんだろうかって、ちょっと心配もあったんです。でも刀剣男士と戦国時代の人々が一緒にいるところも全然浮いてないですし、むしろあのロケにぴったり。色彩ももちろんそうですけど、監督とかみなさんの刀剣男士への合わせ方もさすがでしたね。「映像で観る刀剣男士、いいな」って思いました。
やりきったぞ、と。
時代劇好きとして、やっぱりチャンバラが嬉しかったので。いちいち刀剣がアップになってるところとか、ああいうこだわりも大好きですし(笑)、信長と秀吉のおふたりともホントによくて。刀剣男士の映画ですが、彼ら“おじさん”たちのシーンも輝いてます。
だからもうホントに「観てください」っていうのが一番です。劇場で、あの大画面で楽しめるのって、このチャンスを逃したらたぶんないと思んですよ。ぜひスクリーンで何度でも、刀剣男士たちとあの素晴らしいアクションを楽しんでいただけたらなと思います。
小林靖子(こばやし・やすこ)
1965年4月7日生まれ。東京都出身。1993年、『特捜ロボ ジャンパーソン』(テレビ朝日系)40話でデビュー。1998年、『星獣戦隊ギンガマン』(テレビ朝日系)で初めてメインライターを務める。主な作品に、ドラマ『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)、『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日系)、『仮面ライダーオーズ/OOO』(テレビ朝日系)、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、『進撃の巨人』など。2019年1月からシリーズ構成・脚本を手掛けるアニメ『どろろ』が放送される。

作品情報

『映画刀剣乱舞』
2019年1月18日(金)全国ロードショー
配給:東宝映像事業部
監督:耶雲哉治
脚本:小林靖子
キャスト:
三日月宗近:鈴木拡樹
山姥切国広:荒牧慶彦 薬研藤四郎:北村 諒 へし切長谷部:和田雅成
日本号:岩永洋昭 骨喰藤四郎:定本楓馬 不動行光:椎名鯛造
鶯丸:廣瀬智紀
羽柴秀吉:八嶋智人/織田信長:山本耕史
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© 2019「映画刀剣乱舞」製作委員会
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