4℃の銀座晴海通り店はクリスマス商戦でにぎわう(編集部撮影)

ジュエリー業界を代表する上場企業である4℃ホールディングス(ヨンドシーHD、以下4℃)の売り上げが、低迷から一向に抜け出せない。全国に200店以上ある既存店の売り上げは、足元の2018年11月も前年同月比4.5%減となり、7カ月連続で前年割れとなった。

4℃の既存店売り上げは、2016年8月に前年割れとなって以来、2018年3月まで何と20カ月連続で前年割れ。2018年4月にはかろうじて前年同月を上回ったものの、その後は再び11月まで前年割れが続いている。これだけ長く低迷が続くのは、リーマンショックや百貨店不況に見舞われた2000年代後半以来のことだ。

「あなたの大切な人は誰ですか」。4℃では年間利益の3〜4割を稼ぐとされるクリスマス商戦に向け、11月末から大人の雰囲気たっぷりのテレビCMを流している。経費削減で昨年の同時期には停止したテレビCM再開に加え、商品在庫を積み増し、クリスマス限定商品も再び投入するなど、低迷する売り上げの回復へ総力戦を展開中だ。

長期低落する国内ジュエリー市場

国内ジュエリーの小売市場規模は、ピーク時の1991年には3兆円を超えていた。しかし、その後は長期低落傾向が続き、現在は1兆円以下まで減少している。

As-meエステール(現エステールホールディングス)、ツツミ、ベリテといったジュエリーのライバル各社が業績低迷に苦しむのを横目に、4℃は“最後の勝ち組”と言われ、2017年2月期まで9期連続の増益を達成。営業利益や純利益は5期連続で過去最高を更新した。

4℃の主要な顧客層は20代の若い層で、シルバーなど比較的低価格で値頃感のある商品が人気を得たことが好業績につながった。ところが、前述のように2016年後半から売り上げが停滞し始め、上向く気配がなかなかみえない。この結果、2018年2月期は、10期ぶりの営業減益となり、2019年2月期の業績見通しも、当初の営業増益計画から連続営業減益見通しへと下方修正された。

売り上げ低迷の要因としては、第1に中核商品であるブライダルジュエリーの苦戦が挙げられる。

少子化・非婚化で市場が漸減傾向にあるブライダル商品の競争は激しい。4℃では、百貨店内店舗と独立型専門店の2つの販路でブライダル商品を販売している。2016年5月には、売れ筋商品を中心に効率よく販売する目的で、百貨店と専門店で共通の商品を増やすなど品ぞろえを絞り込んだが、本来、ブライダル商品は「一生に一度の買い物」であり、顧客は多くの選択肢に迷いながら、自分に合う商品を選びたい願望が強い。このため、品ぞろえを絞り込んだことが逆効果になってしまった。


4℃のリング(写真:4℃ホールディングス)

低迷の第2の要因は、ここ数年、メルカリなどの売買仲介サイトが台頭していることだ。売買仲介サイトへのジュエリーの出品は多く、特に若い女性に人気で、値頃感のある4℃商品は出品が目立つ。店舗に行く手間が省け、定価より安く買えるケースも多いため、利用する人が増えているのだ。

百貨店のブライダルフェアも再開

ジュエリー大手各社も、自社サイトなどでのネット販売には力を入れ、売り上げも伸ばしている。市場全体が停滞する中、売買仲介サイトを含め堅調なネット販売が実店舗での売り上げを食っている可能性はある。

低迷する状況を打破するため、4℃でも対策は打っている。まずブライダル商品では、2017年から再び品ぞろえを増やし、中断していた百貨店でのブライダルフェアにも今秋から参加している。加えて、生産態勢を見直してオーダー商品の納期短縮を図った。

最大のテコ入れ策は、ブランドイメージの高級化だ。4℃では、今期からブライダルを除いたファッションジュエリーを、価格帯別に3万円以下のファーストライン、3万〜7万円のセカンドライン、7万円以上のサードラインと3つに分け、きめ細かな商品開発・販売を行っている。そして、セカンドとサードを合わせた中高価格帯の売り上げ構成比の引き上げを目指している。

従来、4℃では客数で75%に達するファーストの売り上げ構成比が5割近くを占め、セカンドとサードを合わせても5割強にすぎなかった。このセカンド、サード合計の売り上げ構成比を6割に高めるのが目標だ。


そのため、ファーストの価格帯の在庫や展示量を減らす一方、セカンド以上のそれを増やした。具体的には「大人化、上質化」のキーワードを掲げ、比較的低価格のシルバーよりも、プラチナやゴールドを使った中高価格帯商品を拡充している。

目指すは「和製ティファニー」

4℃の瀧口昭弘社長は、「当社はシルバーがヒットしてから顧客が若くなり、上の年齢層が離れてしまった。大学生が最初に買って25、26歳で卒業してしまう。学生のブランドだよね、安っぽいねというイメージがある。2〜3年かけて子どものブランドではなく、大人のブランドにしたい。目指すのは“和製ティファニー”」と言う。

ジュエリーを売買仲介サイトで購入したり、出品することに抵抗が少ないのは若い層だ。また、ネットで売買されるジュエリーは、3万円以下の低価格帯が圧倒的に多い。4℃では、中高価格帯商品を強化し、高級ブランド化することで、これまでの20代中心から、30代、さらに40代以上へと客層を広げ、売買仲介サイトの広がりによる悪影響を防ぎたい、という狙いもあるようだ。

中高価格帯商品を拡充している結果、客数は減少傾向が続いているものの、客単価は上昇。既存店の月次売り上げはこのところ、マイナス幅が徐々に小さくなっている。

はたして、4℃の高級ブランド化戦略は成功するのか。4℃は1年前のクリスマス商戦で大苦戦し、2017年12月の月次売り上げは前年同月比で12%近く落ち込んだ。当面の焦点は今年12月の月次売り上げが、ひとまずプラスに転換するかどうか。今後の行方を占ううえでの試金石となりそうだ。