国内女子ツアーの来季日程が発表され、2試合減、賞金総額も7年ぶりに前年割れとなることがわかった。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)は各大会主催者に対して放映権を一括管理すると通告していたが、その交渉がまとまらずにいたのは否めない。これまで一貫して本件に関して口を閉ざしてきた小林浩美会長がついに重い口を開き、放映権問題について言及。その中身を全文公開する。
【写真】最終戦でLPGA隆盛を熱弁する小林会長
以下、小林会長が20分に渡って話した内容。
まず、LPGAツアーにおける放映権につきまして、このたびはですね、本当に会員の皆さま、ゴルフファンの皆さま、そしてここにいらっしゃる皆さま、多くの方々に多大なるご心配とご迷惑をおかけしました。本当にそのことを心よりお詫び申し上げます。
これまでこの件に関して、詳しいお話ができなかった理由でございますけど、LPGAツアーにおける放映権の問題は、主催者様と当協会とのあいだで交渉を行っていたためで、守秘性が高かったからでございます。
この話は20分とりたいと思います。
このたび放映権に関する交渉は終わりまして、皆さまに素晴らしいご報告ができることを大変うれしく思います。それとですね、放映権に関する交渉経緯、放映権の意味、今後の方針については説明させていただきます。
今回の主催者様との交渉の結果、各主催者様と当協会のあいだにて、LPGAツアーにおける放映権の考え方を確認することができました。これはゴルフ界にとって、画期的な第一歩となりました。
放映権に関する交渉を行うことに至った経緯でございますけれども、皆さんもご存じかと存じますが、プロ選手の権利を管理するプロスポーツ団体として、もっとも重要な権利といわれている放映権について、当協会は、初期のトーナメントがテレビコンテンツ事業として始まったことに大きく起因し、そして長らくお世話になった理由から、今まで十分な権利を主張してきませんでした。
しかしながら、昨今のインターネットの普及から、スポーツコンテンツが世界中に配信される時代になりました。世界の女子プロゴルフ団体は、放映権をすでに持っており、放映権料で選手や会員への投資、トーナメント価値向上のための原資としています。当協会としても放映権料を得て、その資金を選手や会員への投資、トーナメント価値向上のために用いればと考えました。
また近年は、多くのファンの皆さまから、現状の地上波放送はインターネットで結果が出たあとに録画放送されるため、あまり魅力的でないとか、生放送でLPGAツアーを観戦したいとの意見をたくさんいただくことが多くなっていました。そこで当協会は、インターネットでLPGAツアーを国内外に生放送し、多くのゴルフファンに生の醍醐味を提供するとともに、ゴルフ関心の薄い10代から40代の人にゴルフを訴求し、将来のゴルフファンになっていただきたいと考えました。
そのためには、当協会においてLPGAツアーの競技について、適法にインターネットで配信することができるようにする必要がありました。しかしながら、日本の女子プロゴルフトーナメントについての放映権については、内容および所在について明確でなく、それについて明記した文書も契約を存在しない状況でした。
LPGAツアーについての放映権とは、LPGAトーナメントをテレビ放送、ラジオ放送、インターネット配信、その他いっさいの公衆送信を行う権利を指します。LPGAツアーにおける放映権は、1967年、協会創立以来、その定義と所在が曖昧なまま、51年間過ぎて参りました。
それをこのたびの交渉の結果、トーナメント開催規定の改定を行い、放映権について明確にすることができました。放映権に関する成文法ができたのは、日本のゴルフ界にとって、画期的な第一歩といえます。これもひとえに選手や会員の皆さまが、トーナメントに出場された際、日々努力して、卓越された技術を披露し、多くのゴルフファンを魅了してきたこと、また、プロアマ大会等で主催者のお客様に対して素晴らしいホスピタリティを発揮し、主催者の皆さまから大きな信頼を勝ち得てきたからこそ、です。
協会創立以来51年間、これまで多くの選手や会員の皆さまの努力の上に、この放映権の考え方が確立されました。もちろん、この大きな変革には最初から熱烈に応援や支援をくださる大会主催者、大会関係者がいらっしゃいました。また、幾度も交渉を繰り返し、当協会と一緒になって前向きに取り組んでいただいた主催者様もおられ、当協会にとりまして大きな力となり、支えとなってくださいました。
交渉の経緯ですけども、2017年8月以降、当協会は各大会主催者の皆さまと交渉を個別に開始し、2018年度は1月、3月、5月の3回にわたり、全体会の主催者の皆さまと合同ミーティングを行いました。また、これとは別に5月に各テレビ局様との合同会合も開催いたしました。さらにそれ以降も各大会主催者様と個別交渉をして参りました。そのあいだの主催者様からの手紙による質問事項においても、すべて回答して参りました。
その後、2019年度LPGAツアー開催締め切り締結日を今年の9月25日としましたが、さらに時間が必要と判断し、締め切り日を2カ月延長して11月28日としました。ここでほとんどの主催者の皆さまとの開催締結が完了しました。
しかしながら、一部の主催者の方々は、施設関係を持つもの、つまり主催者だけが放映権を持つとか、出場選手の肖像権はトーナメントの中継映像に及ばないなどと主張し、当協会の放映権の考え方そのものに一貫して難色を示されました。
当協会としては、日々努力して卓越した技術をトーナメントで披露している選手の肖像に価値がないとの一部の主催の方々による主張は、到底受け入れられるものではありませんでした。
そこで再度、その一部の主催者の方々に、当協会の考え方を受け入れていただきたく、最終締結日を12月13日としました。その結果が本日、発表させていただいた2019年度LPGAツアー開催日程となりました。
放映権に関する今後の方針ですけれども、LPGAツアーの放映権を一括管理することにより、個別に売るよりも、全体をまとめて売ることで大きな価値を生むことがほかのスポーツを見てもわかります。それを、有料で動画配信を行う業者に販売することで対価を得て、その対価により、当協会の持続的な財務基盤を整え、選手や会員に投資して、さらにLPGAツアーの価値を高める所存でございます。
さらに当協会は、放映権により得た対価から、管理費等を引いた上で、施設管理権を有する主催者の皆さまに対して、分配金という形で還元したいと考えています。当協会は、テレビ放映権料を請求することは、現状では考えておりません。
これまで長いあいだ、LPGAツアーを大きく支え、育てていただいた公認競技の主催者さまには、これまでどおり地上波放送、BS放送、CS放送においては、無料のままとさせていただき、当分、放映権料をとるつもりはありません、と最初からご説明しています。したがって、どこから当協会が主催者様に対してテレビ放映権料を請求する予定であるとの憶測が出てきたのかはわかりません。
すでに多くの大会では、放映権を当協会に帰属させることを認めてくださっています。他方、テレビ局様はじめ、一部の主催者様とのあいだでは、これまでの歴史に鑑みまして、2020年まで継続審議となっております。
そもそも、なぜ放映権のことを明確にする必要があったのか。その理由と経緯を説明させていただきます。
当協会は、グローバル競争がますます激しくなるなか、一つ、国内外で選手が活躍すること、二、数あるスポーツのなかで、多くの方にゴルフのファンになっていただくこと、三、組織自体が強くなることが、ツアーの価値を高めることになると確信しております。
日本女子プロゴルフツアーも、グローバルにおける体制作りは必至です。そのために当協会の組織力強化に鋭意取り組んでおり、このたび、放映権を含むトーナメント開催規定の改定の決断に至りました。
まず当協会は、公益社団、公益法人制度改革に伴い、2013年1月8日付けで、それまで守られていた社団法人から一般社団法人に移行しました。また、それにより、それまで税率が19%程度だったものが、一気に40%前後に跳ね上がり、これまでと同じことをやっていたのでは、当協会そのものの存続が危ぶまれる財務状況となりました。
これを受け私たちは、日本の女子プロゴルフ界を代表する唯一無二の存在となるために、LPGAツアーがさらに、さらなる価値を高めて価値を向上させることを目指すとともに、これまで以上に当協会の組織力強化を推進することといたしました。
私はLPGAツアーの価値を高め、協会の組織力強化には、一つ、持続可能な財政基盤の確立。二つ目、ツアーの環境整備の両者が不可欠と考えております。
環境整備につきましては、すでに成功しつつあります。持続可能な財政基盤の確立においては、達成するにはほど遠い状況となっています。放映権の定義とその所在を含むトーナメント規定の改定は、持続可能な財政基盤を確立し、私たち協会の組織力強化を達成し、LPGAツアーの価値向上のために行ったものです。
では、ツアーの環境整備とは、どのようことなのかといいますと、当協会は2013年度にはじめて中期経営計画をつくりました。それがLPGA2016ビジョン、日本女子プロゴルフ協会のブランド確立です。その計画の策定においては、ゴルフ専門団体ならではの安心、信頼、クオリティの高さを目指した仕事内容に重点をおきました。
特にトーナメント部門では、ツアー強化を重点テーマとし、レギュラーツアーでは4日間競技の推奨、練習場環境の充実、ステップ・アップ・ツアーの試合数増加。仕事の精査と効率化に対して、具体的な目標数値を掲げ、その達成に励んで参り、かなりの成果を出しつつあります。
また、二期目の中期経営計画、LPGA2019年ビジョン〜変革そして成果へ〜では、TPD事業部は引き続きツアー強化を掲げ、スタッツの充実やリランキング制度、コースセッティング多様化など、さらなる環境整備を図り、選手の持てる力を引き出し、国内はもちろん、2020年東京オリンピックをはじめ、世界での活躍を見据えた取り組みに邁進(まいしん)しているところでございます。
そして、持続可能な財政基盤確立のための放映権の定義とその所在を含むトーナメント規定改定を行いました。
それについては中期経営計画LPGA2019ビジョン、変革そして成果へ、のなか、ゴルフのスポーツビジネスの基盤構築に重点をおきました。
皆さんご存じの通り、プロスポーツの一般的な収入源として、一、入場料収入。二、放映権。三、グッズ等含むその他の収入源があります。私たち協会においては、公認競技と一部主催競技において、その入場料収入と放映権を得ておらず、その収入源は非常に限られたものでした。
特に放映権料は、プロスポーツ団体の収入の大きな部分を占め、スポーツビジネスの核となっております。すでに、米国、欧州、韓国、中国において、各女子プロツアー団体が、放映権を保持しております。しかしながら、日本女子プロゴルフ界においては、放映権料は、協会創立以来51年間、その定義と所在が明確でない状況が続いていました。
協会内部でも確認しておりますが、この件につきましては、これまでどの主催者様とも合意などといったことはありません。
日本において協会が放映権を取得すれば、それは私たち協会の持続可能な財務基盤の確立に大いに役立つことになると考えています。
持続可能な財務基盤を確立することによって、長年選手の皆さまが望んでいるフィットネスカーの導入や託児所の設置等に投資したり、選手の年金制度を確立したり、会員から長年要望されています、会費削減等に充当することができます。そのほかにも会員や、環境整備等に還元することで、トーナメントそのものの価値を向上させることにつながります。
これらの変革により、当協会が持続可能な財政基盤が確立できれば、当協会におけるスポーツビジネスの核となり、当協会そのものの存続を心配することなく、成長し発展する機会が増えていくと信じています。
また、LPGAツアーの価値をさらに高めていくことで、長年トーナメントを開催してくださっています主催者の皆さまをはじめ、多くのゴルフファンの皆さまにもさらなる応援とご支援もいただけると確信しております。
このたび、大会主催者の皆さまと放映権の考えが合意できたことで、出場選手の肖像権がトーナメントの中継映像に及ぶ、すなわちトーナメントに出場する選手の肖像に価値がある、ということが形になり、証になりました。
会員、LPGAツアー、そして当協会にとりまして、その点において世界の女子プロゴルフ団体とやっと肩を並べられる環境が整いました。
2019年度LPGAツアーで当協会と一緒に歩んでくださいます、このたびのたくさんの大会主催者の皆さまには、心より感謝申し上げます。そして、迎える2020年東京オリンピックでの金メダル獲得を見据えて、さらなる国内外のLPGAツアーと当協会の発展を目指して、さらに鋭意努力して参りたいと思っています。
このたびは本当に多くの皆さまがたに多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを重ねて深くお詫び申し上げます。
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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