「最近は、少し改善したのですが、それでも突発的な業務が入るので、残業時間が減らないのです」

 とあるチェーンの運営部長さんの一言です。

 そこで、「残業が多くて人時生産性が上がらない会社の共通点は どこも『帰りなさい』と言わない企業です」とハッキリと申し上げました。

 こうしたことを申し上げると、「そんなことないですよ。うちは帰るように言っていますよ」という声が聞こえてきそうですが、私は経営者が残業問題を終結させる覚悟で、「なぜ帰ることができないのか」と質問していないということを申し上げているのです。

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原因と対処法が分からないから残業が発生

 厳しい言い方をすると、そもそも、残業は原因と対処法が分かっていれば、発生しなかったはずです。ところが、残業時間が減らない企業には混沌とした期限の切れた多くの業務があり、それを顕在化させ「帰れる」仕組み作りを経営者がしようとしていないということです。

 労働人口が多かった時代、出来る人材に仕事を任せておけば回った時代とは大きく変わり、今は仕事に求められる専門度も精度も変わってきています。

 その責務を担っているのが、店長をはじめとした管理職なのですが、今、最も残業が多いのが、こうした残業の付かない管理職やその直増部下となる代行のポジションの人たち。日に何十通と本部からのメールによる指示に目を通し、パートナーやアルバイトにそれを指示徹底させるだけでも、2、3日はかかるもの。特に、人手のかかるチラシ準備などは、集中的に大量の人手が必要となりますが、働き手が少なくなっているのにチラシ本数の増加で、業務量が増え、残業が発生するといったことも現に起っています。

 こうした、売上拡大だけを狙った施策は、その業務量について考慮されていないものがほとんどで、それが指示として垂れ流されれば、店舗業務は増えていくのは当然のことです。

 それを、経営者が「なぜ早く帰れないのか」と問い掛けることで、この増え続ける本部指示に歯止めをかけ、既存の利益にならない業務の見直しの突破口につなげていくわけです。

 例えば、本部から出された指示が「店舗の人時売上高にプラスになるのか?」「マイナスなのか?」という指標を持って業務改革を進めると、本部は店舗の業務量を意識するようになります。

 言い方を変えると、これは「売上げが上がりにくい昨今、収入が増えなくても利益がプラスとなるように、店舗で人時生産性を引き上げやすい仕組みをつくり、変えていくということ」です。

ポイントは「簡単にできるようにすること」

「そんなことが、簡単にできれば苦労しないですよ」という声が聞こえてきそうですが、実は、これはそんなに難しいことではありません。「簡単にできるようにする」ことにポイントを絞って、『作業指示書で店舗業務の流れを可視化し、本部からの指示をどこに落とし込んでいくべきかを明らか』にしていけばよいのです。

 ここで重要なのは、人手がかからない方法で、無駄なく店舗を動かせるようにすることです。

 ただ、こうして文字で書けばわずか数行で終わってしまうのですが、実際に「さあ、始めよう」となるとどこから手をつければいいのか見当がつかないという方もいるでしょう。

 この業務改革を進めるためにこそ、人時売上高を使えばよいのです。

 人時売上高とは 店舗の売上高を総人時で割ったものですが、これからは、本部で何か新しい取り組みをするときには、この指標を使って店舗へ指示を出すようにしましょう。

 先の例でいえば、チラシ本数を増やし売上げを上げようとすれば、人時を増やさなくてはなりませんが、むやみに人時を増やすと人時売上高はがた落ちしてします。かといって売上げはコントロールできませんから、そうなると『少ない人時で売上げをキープする戦略』を練り上げ、それに基づく指示を出していくことになります。

 チラシ本数を増やすと販売する商品数量が増えるので、その商品の荷受け、陳列時間、POPや価格変更チェック、承り体制を含めた新たにかかる必要人時が変わってきます。

 つまり、チラシ本数増にあたり、本部から店舗へ出されるメールに「どのタイミングで、どれくらいの人時が必要だから、それを作業指示書に組み入れてください」という一文が記載されていなくてはならないことになります。

 これなしにチラシを増やせば 目先の売上げはとれても、突発的な人件費は増え、期を締めてみたら、減益といったことになりかねません!

年に何回も行う棚卸し「本当に必要ですか?」

 人時売上高を使えば、既存業務の見直しも可能になります。

 例えば、商品棚卸し業務などもその1つ。今まで商品ロスを、棚卸し回数を増やすことで是正してきた企業があるとします。そうした企業がPOSの発達で単品管理ができるようになった今でも本当に、年に何回も商品棚卸しをする必要があるのか?

 こうした話をすると、「回数を削減し、棚不足が増えたらどうするのか?」という意見が必ず出てきますが、冷静に考えれば分かることですが、そもそも棚卸し回数を増やしたところで、棚不足は減るものではありません。

 なぜなら、棚不足の要因は、盗難か帳票入力ミスのいずれかによるもので、これを定期的に点検し修正していく仕組みをつくることで、解決できるからです。

 仮に棚卸しを年間4回やっていたとすればそれを1回にすることで、人時は75%減り、その半分を棚卸し専門会社に業務委託しても、十分にお釣りがくる計算となります。

「チラシ準備や棚卸しも、ベテランがいるからそんなに時間はかかりませんよ」という声も聞こえてきそうですが、「そのベテランの方が休みのときはどうするのですか? あるいはその人が人事異動や退職された場合はどうするのですか?」と伺うと、皆さん「うーん」と言葉に詰ります。

 このように、人に仕事が付いた状態を放置すると、真っ先に、影響を受けるのが、お客さまということになります。お客さまへの対応が最優先であるのはいうまでもありません。同じ水準のサービスを提供できることが企業への評価となるわけですが、担当者がいないから分からないというようなことがあっては、顧客離れが起こり、企業として存続の危機を招くことになりかねません。

管理職が納得できる仕組みを経営者はつくろう!

 しかし、現実問題として、こうした顧客対応や利益にならない業務が混沌とする中、「早く帰りなさい」と上辺だけの言い方をしても、店長や管理職は「ハイ」と返事して、無言で残業をし続け、問題は先送りされてしまいます。

 大事なことは、これらを一つ一つの問題として顕在化させていくことであり、そのためには「なぜ帰れないのか?」という質問を経営者と業務改革部が手を組んで発し、問題を解決し続けていくことです。

 そして、残業問題をプラスに変換させる足掛かりとして、誰もが分かる指標で、全ての業務が最も簡単にできる仕組みを作っていくことになります。

 店長や管理職の長時間労働が続くのは、この仕組みがないからに他なりません。

 詳しくは セミナーでお伝えしていますが、人時と売上げを連鎖させ、チェーン各店の収益力を高めるには、店長や管理職が納得できる仕組みを経営として、時間をかけずに新たに構築することが必要になります。

 さあ、貴社におかれましても人時売上高を活用し、顧客満足度と従業員満足度を劇的に改善し、業界トップへの道を突き進んでみませんか?