「2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したボルボのXC40(筆者撮影)

マツダ → VW → マツダ → マツダ → スバル → ボルボ → ボルボ。

この並びが何を意味しているかおわかりだろうか。最近、日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)を受賞した自動車ブランドを並べたものだ。第33回(2012-2013)から第36回(2015-2016)までの4回中、実に3回マツダが頂点に輝き(CX-5、デミオ、ロードスター)、昨年発表された第38回(2017-2018)では「XC60」、先週発表された第39回(2018-2019)は「XC40」とボルボが2年連続で獲得している。

ボルボとマツダの強さの理由は?

COTYの採点は各選考委員に25の持ち点が与えられ、最も優れたクルマに10点を投じ、残る15点を4車に配分する。


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筆者も選考委員を15年近く務めているが、最初に紹介した7回で、10点を与えた車両が頂点に輝いたのは第35回のマツダ「デミオ」だけであり、残りはすべて他車が受賞している。

他人と意見が異なるのは当たり前のことだし、多数派になることが良いこととは思っていないので、結果は妥当だと考えている。点数そのものは上記の7台すべてに入れていたことも、その理由かもしれない。

有力車種がメーカーの不祥事でCOTYを辞退した例がいくつかあったことを考慮しても、ボルボとマツダの強さは際立っている。その理由として筆者は両ブランドともに、クルマづくりを一度リセットして、すべての車種をゼロから開発していくプロセスを取ったことが大きいと思っている。これに限らず、ボルボとマツダの最近の歩みには、共通する部分が多い。

両者が以前、ともにフォード・グループに属していたことは知っている人も多いだろう。マツダは1979年にフォードが株式の24.5%を取得する資本提携を結び、1996年には出資比率を33.4%まで拡大した。ボルボはその3年後に乗用車部門を同じフォードに売却。すでにフォード・グループにいた英国アストンマーティン、ジャガー、ランドローバーとともにプレミア・オートモーティブ・グループを結成した。

ところが21世紀に入ると、フォードは自身の業績不振に加えてリーマンショックもあって、2008年から段階的にマツダへの出資を減らし、2015年に提携を解消。ボルボの株式は2010年に中国の浙江吉利控股集団(ジーリーホールディングス)に売却している。なおマツダはその後2017年にトヨタ自動車と資本提携を結んでいる。

つまり1999年から2008年までの10年は、ボルボとマツダは同じ傘の下にいた。共同開発も行った。その結果生まれたのが初代「アクセラ」であり、ボルボ、フォードとプラットフォームを共用していた。また初代「アテンザ」に積まれたマツダ開発の直列4気筒エンジンは、フォードやボルボにも積まれた。

ボルボでアクセラとプラットフォームを共有していたのはセダンの「S40」、ワゴンの「V50」、ハッチバックの「C30」と「V40」、クーペカブリオレの「C70」だった。つまり現行ボルボで最もキャリアの長いV40は、マツダと血のつながりがある。

5年で乗用車全車種を新世代商品に切り替えたマツダ

しかしフォード・グループから離れたことで、両者は自前でプラットフォームやパワートレインを生み出す必要が生じた。ここでマツダは守りに入らなかった。「スカイアクティブ・テクノロジー」と「魂動(こどう)デザイン」を投入したのだ。

スカイアクティブは2011年にまず、当時のデミオと「アクセラ」のマイナーチェンジで一部を導入し、翌年発表の初代「CX-5」で全面的に採用。同時に2010年発表のコンセプトカー「靭(シナリ)」で提案し好評を博した魂動デザインを市販車として初めて盛り込んだ。この2つの要素を盛り込んだ車種をマツダは新世代商品群と呼び、それ以前の車種と明確に分けた。

その後は2017年発表の現行「ロードスター」まで立て続けにモデルチェンジを繰り返し、5年間で自社開発の乗用車全車種を新世代商品に切り替えてしまった。


マツダの現行ロードスター(筆者撮影)

ボルボも新体制下でプラットフォームを一新した。まず2014年に「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」を現行「XC90」とともに登場させると、「S90」「V90」「XC60」「S60」「V60」へ立て続けに採用。今回COTYを受賞したXC40には小型車用の「CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)」を与えた。こちらはボルボと吉利が共同で設立した新ブランド「Lynk & Co(リンク・アンド・コー)」にも使われる。


ボルボの現行XC90(筆者撮影)

デザインについては2013年の「コンセプト・クーペ」を皮切りに「コンセプト・XCクーペ」「コンセプト・エステート」を立て続けに発表。SPAを先行採用していたこの3台のコンセプトカーが、S90/XC90/V90のデザインを示唆するものだった。さらに2016年にはSUVの「コンセプト40.1」とセダンの「コンセプト40.2」を発表。説明するまでもなく前者はXC40のプロトタイプだった。

共用ではなくなったことで自由な発想が可能に

両者の新世代プラットフォームは、前輪駆動でありながらフロントタイヤとキャビンが離れていることも共通している。マツダではその理由として、エンジンの吸排気系の効率を高められること、理想的なドライビングポジションを取れることを挙げているが、流麗なプロポーションを描けることも理由にあったはずだ。

一方のボルボはコンセプト・クーペのデザインについて、プラットフォームがほかのブランドとの共用ではなくなったことで、自由な発想が可能になったと表明しており、スカンジナビアのモダンなライフスタイルやデザインと、1960年代のボルボの象徴的なデザイン要素を融合することができたとしている。

もう1つ、プラットフォームの一新と同時にエンジンを直列4気筒以下に絞ったことも、新世代ボルボとマツダに共通している。欧州を中心とするダウンサイジングのトレンドを受けたとも言えるが、マツダはV型6気筒、ボルボは直列6気筒という手持ちの多気筒型の高性能エンジンをラインナップから落とし、4気筒ターボエンジンのチューニングを変えることで対処した。

スポーツモデルには6気筒以上のエンジンを引き続き用意するドイツのプレミアムブランドとは一線を画した形になったが、この決断もまた理想的なデザインを生み出す要因になったはずだ。

もっともこれ以外のエンジン戦略については、マツダとボルボでは違いがある。

マツダは高い評価を得ているディーゼルエンジンや、ロサンゼルス・モーターショーで先日発表した新型マツダ3に搭載した「夢のエンジン」スカイアクティブXが象徴するように、エンジンの進化を主眼に置いている。


新型マツダ 3(写真:マツダ)

対するボルボは、2019年にすべての車種を電動化するというアナウンスをいち早く行ったことで話題になった。一部のメディアはこれを勘違いし、すべてを電気自動車にすると誤報したりもしたが、実際はプラグインハイブリッド車(PHV)を含めた電動化車両を設定するというもので、日本仕様ではXC90、V90、XC60、V60に設定を完了している。

逆にディーゼルについては、最近導入されたXC40やV60ではわが国への導入を見送るなど、フォルクスワーゲンの排出ガス不正事件以来、欧州で急速に勢力を減らしている現状を反映しつつある。逆にマツダの電動化は最近の技術説明会で、2030年時点で生産する全車両に電動化技術を搭載すると公表しており、得意のロータリーエンジンを発電に使うレンジエクステンダーEVも用意すると明らかにしている。

攻めのクルマづくりという共通点

このようにパワートレインの方針には違いがあるものの、ボルボとマツダが体制変更に合わせて全車をゼロからつくり直し、理想のデザインやエンジニアリングを積極的に投入するという、攻めのクルマづくりを行ったことは共通している。それが多くのユーザーに支持され、COTYなどの賞を相次いで獲得する結果につながっているのではないだろうか。

メルセデス・ベンツやBMWのように、確固たるブランドイメージを築いており、それを成功に結び付けているブランドは、このような刷新はしにくいだろう。トヨタ自動車やフォルクスワーゲンのような膨大なラインナップを誇るメーカーも、また難しいだろう。ボルボやマツダぐらいの規模だからこそ実現できたのかもしれないが、モノづくり改革の成功例として他業種の参考にもなるのではないかと思っている。