ふるさと納税=お得さが売り!」というイメージが強いのでは? でも、本来「ふるさと納税」は、気軽にできる“社会貢献”。税金の使い道を自分で自由に決められる、優れた制度です。「賢い始め方」をお教えします――。

■お礼の品で、楽しく地方を応援できる

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利用率NO.1 ふるさとチョイス
●https://www.furusato-tax.jp/
ふるさと納税総合サイトの元祖。全国の自治体のふるさと納税情報を網羅し、お礼の品の掲載品数は同種のサイトの中でトップ。初心者向けに寄付の仕方や注意点なども掲載。

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ふるさと納税は、応援したい自治体に納税(寄付)ができる制度。

「実際の故郷に限らず好きな自治体を選べて、寄付額から2000円を引いた残りの金額については、所定の手続きをすると、所得税・住民税から還付や控除が受けられます」(トラストバンク・須永珠代さん)

自治体によっては、ふるさと納税した人に特産品などのお礼の品を送ってくれる。だが、ブームの過熱により、一部でお礼の品を過剰に豪華にする自治体が出てきたことから、このほど総務省が規制を実施。お礼の品を地場産品に限定し、調達価格を寄付額の3割以下にとどめることなどが通達され、2018年11月現在、各自治体が対応を進める状況だ。

この規制によりブームが下火になることを懸念する向きもあるが、須永さんは「むしろいい傾向」と話す。

寄付したら確定申告する必要があるが、ふるさと納税先が5自治体以内で、もともと確定申告が不要な給与所得者などは、「ワンストップ特例」の申請により確定申告が不要に。(イラスト=ヤマグチカヨ)

ふるさと納税は、もともと地方創生のための制度。お礼の品は、自治体が地元企業や生産者から品物を買い上げたうえで寄付した人に送る仕組みなので、私たちが寄付をし、お礼の品を楽しむことは、地方の応援につながります。しかし、返礼割合が高い自治体があると、そこに寄付が集中し、ほかの自治体の努力が報われなくなる可能性もある。ふるさと納税で地方を応援し、社会貢献するという趣旨に賛同するなら、規制は悪いことではありません」

イラスト=ヤマグチカヨ

さらに、ふるさと納税では、寄付した人が寄付金の使い道を指定することもできる。自治体によって少しずつ異なるが、「被災地支援」「環境保護」「子ども・教育の支援」など、いくつかの項目から選択するのが一般的。

ご存じのとおり、私たちが普段納めている税金は、個々に使い道を指定することができないので、ふるさと納税は税金に自分の意思を反映させられる稀有(けう)な制度と言える。

「また、最近はクラウドファンディングが注目されていますが、自治体がふるさと納税を活用してさまざまな問題解決のための資金を募る『ガバメントクラウドファンディング(GCF)』も増加。GCFは通常のふるさと納税より集めたお金の使い道が明確で、賛同する地域の取り組みを支援でき、税金の控除も受けられます。気になる社会問題がある方は、GCFの形で貢献することも視野に入れてみてください」

ふるさと納税の5つのメリット
(1)寄付する自治体を選べる
ふるさと納税は全国すべての自治体で受け入れている(お礼の品については用意していない自治体もある)。好きな自治体を選んだり、お礼の品の内容から寄付先を選んだりできる。
(2)税金の使い道を指定できる
寄付するタイミングで、寄付金の使い道を指定できる。自治体にお任せもできるが、せっかくならどんなことに税金を使ってほしいか、よく考えたうえで寄付をするようにしたい。
(3)お礼の品がもらえる
各自治体で野菜や米、果物、肉、魚介類、酒類など、さまざまなお礼の品を用意。最近はモノだけでなく、「地元のマラソン大会の出場枠」など、体験型のお礼の品も増えている。
(4)税金の還付や控除がある
確定申告した場合は、所得税から還付、翌年度の住民税から控除が受けられる。控除される寄付金の上限額は、収入や家族構成などによって異なるため、事前に確認が必要。
(5)クレジットカード決済が可能
寄付方法は自治体により異なるが、多くの自治体でカードによる寄付が可能になっている。カードは寄付者名義のものを使う必要があるので、家族が代わりに寄付するときは注意。

ふるさと納税の進化系!?
「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」とは
・使い道がより具体的に提示される・所得税や住民税の控除が受けられる・運営者が自治体なので安心感がある

ふるさと納税&GCFでできる社会貢献とは?
以下は、ふるさと納税やGCFでできる、おもな社会貢献。お礼の品をもらって楽しみながら貢献したい人はふるさと納税、使い道に共感するプロジェクトがあればGCFを選ぼう!
●被災地を支援
ふるさと納税なら、地震や津波、台風などの被災地に復興・復旧のための寄付を簡単に送ることができる。プロジェクトによっては、お礼の品がないものも。被災地を支援するGCFも多い。

【たとえばこんなGCFも】岡山県矢掛町
「5人に1人。大雨で突然日常を失った高校生を笑顔に変えたい」(募集期間:2019年1月14日まで)

2018年の西日本豪雨で被災し、避難生活を送る高校生へのプロジェクト。学習の機会格差をなくすため、スクールバスの運行や学校生活のサポート、心のケアなどの資金を募る。
●子どもを応援する活動を支援
ふるさと納税の使い道として、子育て・教育関連事業に寄付金を回すよう指定できる自治体は多い。ほか、GCFでも関連プロジェクトは複数あり。内容は、海外留学支援や貧困対策など、多岐にわたる。

【たとえばこんなGCFも】東京都文京区
「命をつなぐ『こども宅食』で、1000世帯の家族の未来を変えたい!」(募集期間:2019年3月31日まで)

文京区と5つの非営利団体が共同で運営。生活の厳しい一人親家庭など1000世帯に定期的に食品を届け、子どもの貧困問題を解決するセーフティーネットをつくるのが目的。
●動物愛護の活動を支援
GCFには犬や猫の殺処分をゼロにする活動や、保護動物を収容する施設の維持費用などを募る、動物愛護のプロジェクトが複数ある。日本がドイツなどの動物愛護先進国に追いつくことを願う人に。

【たとえばこんなGCFも】和歌山県和歌山市
「殺処分“ゼロ”を目指して!猫たちの『不妊去勢手術』の実現にご協力ください!」(募集期間:2018年12月31日まで)

動物の殺処分をなくし、共生することを目指して、まもなく業務開始予定の和歌山市の動物愛護センター。動物の不妊去勢手術や治療に必要な薬品などを購入する資金を募る。
●地方の産業振興を支援
ふるさと納税のお礼の品は、自治体が生産者などから買い取るので、ふるさと納税して返礼品をもらうだけで産業振興のサポートに。実際、寄付金により事業を拡大できた地方の生産者や企業は多い。
●文化財を保護する活動を支援
ふるさと納税やGCFによって、有形・無形の文化財保護の資金を集める自治体は多い。資金は文化財の修復費用や、地元の民芸品を制作する後継者の育成費用、伝統的な祭りの開催費用などに充てられる。
●環境保護活動を支援
森林保全、育林、海・湖・川の水質管理や景観の保護といった環境保護活動に寄付金を使ってもらう。ふるさと納税の使い道として指定できるほか、GCFも。愛する土地の環境を守りたい人向け。

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須永珠代(すなが・たまよ)
トラストバンク代表取締役
ITベンチャーなどを経て現職。ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営。著書に『1000億円のブームを生んだ 考えぬく力』(日経BP社)がある。
 

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(元山 夏香 イラスト=ヤマグチカヨ)