広島・緒方監督【写真:荒川祐史】

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丸がFA流失する中、4連覇を目指す広島の戦力を分析すると…

 プロ野球もオフシーズンに入り、各球団は来季に向けて戦力を整えている。1軍の試合に出場できる支配下登録選手の枠は上限70人。シーズン中の補強、育成選手の支配下への昇格も想定して、65〜68人ほどで開幕を迎える球団が多い。

 70人の枠の中で、どのように戦力編成を行っていくかは、当然ながら球団の方針によって違う。ここでは各球団の現在の支配下登録枠の状況を見て、その球団の補強ポイントを探ってみたい。今回は広島編。

 現時点での広島の支配下登録の状況は以下のようになっている。

支配下登録:67人(58人+新人7人+新外国人2人)
・投手35人(新人2人、右投手25人左投手10人)
・捕手7人(新人0人、右打者6人左打者1人)
・内野手15人(新人4人、右打者5人左打者9人両打1人)
・外野手10人(新人1人、右打者7人左打者3人)

○投手

 オフにトレードで楽天の菊池保則、ドラフト2位で即戦力候補の島内颯太郎を獲得。2018年に主に先発した大瀬良大地、岡田明丈、野村祐輔、ジョンソン、九里亜蓮は大きな怪我でもない限り来季の開幕ローテに収まりそう。年齢も20代中盤から後半の選手が多く、今年から大きく成績を落とすことは考えにくい。残りの枠を薮田和樹、中村祐太、加藤拓也らが争う形が予想される。

 リリーフでは今シーズンに続き中崎翔太が抑えを務める可能性が高い。一岡竜司、フランスアの勝ちパターンも継続されるだろう。48試合に登板したジャクソンの穴を今季途中に加入したヘルウェグがうまく埋められるかがポイントとなる。

 先発、リリーフともに不安なのは、指摘され続けている左腕不足だ。支配下登録されている投手35人の中で左投手は10人。現状、先発ではジョンソン、リリーフではフランスア以外に計算できる左投手がいない。また、35歳を迎えるジョンソンにはケガのリスクもあるため、無理はさせられない。もっとも、広島には高橋昂也、床田寛樹、塹江敦哉、高橋樹也といった20代前半の若手が多く、今後、彼らが台頭してくると手薄な左腕が強みになる可能性も秘めている。

○捕手

 捕手陣は12球団でも屈指の充実度を誇る。今季ベストナインの會澤翼、経験豊富な石原慶幸が主力として健在であり、2017年ドラフト1位の中村奨成や、ファームでOPS(出塁率+長打率).916を記録した坂倉将吾をはじめ、若手にも有望株がそろっている。會澤は来季中にFA権取得濃厚だが、捕手には困らなそうだ。

まだ大きな戦力補強はなし、丸の人的補償もポイントに

○内野手

 内野の中で、二塁手の菊池涼介、遊撃手の田中広輔は安泰。残る一、三塁手を安部友裕、堂林翔太、西川龍馬、メヒアらが争う。外野手の松山竜平とバティスタも一塁手を兼任できるため、ここのポジション争いは激化するだろう。ドラフトで小園海斗を含む4人の内野手を指名、全員高卒で素材型の選手中心の指名となった。20代終盤の選手が多く、次の世代の20代前半〜中盤の選手が不足しているため、意外と世代交代に苦労する可能性もある。FA権取得が迫っている選手もいるため、若手を育てる必要がありそうだ。

○外野手

 2年連続MVPの丸佳浩がFA移籍。出塁率リーグトップだった丸の移籍はあまりにも痛い流失となってしまった。外野の中で右翼手の鈴木誠也のレギュラーは確定。4連覇を目指すうえで主砲が健康を保つことは必要不可欠になる。丸のいた中堅手の後継者は今季初の規定打席到達を果たした野間峻祥が筆頭だろう。残った左翼手を松山、バティスタらが争う形になる。ベテランが多く、若手が少ないポジションのため、2012年ドラフト1位の高橋大樹や、ドラフトで加入した正随優弥といった若手の飛躍で丸の穴を埋めたいところだ。

 セ・リーグ3連覇を果たした広島だが、FAで主力の丸が同一リーグの巨人に移籍。ドラフト以外には大きな戦力補強もまだなく、丸の人的補償で誰を獲得するかにも注目が集まる。外国人も現時点で7選手在籍しているため、補強は現実的でない。4連覇を果たすには丸の穴をどう埋めるかが最大のカギになってくる。さらに、長年の課題である左腕、そして、数年後を見据えた内野手の強化も必要か。ただ、巨人からの人的補償選手も加えれば支配下登録は68人となる見込みで、枠はほぼ埋まっているというのが現状だ。

 菊池、會澤に加え今村、野村も順調にいけば来季中にFA権を取得し、松山もFA権を持っている。若手の育成で主力の流出を補ってきた広島だが、今後も常に「もしも」に備えていくことになる。(Full-Count編集部)