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自転車に乗りながら「当たり屋」行為をして現金をだまし取ったとして、愛知県内の男性が詐欺容疑で11月29日に再逮捕されたことが報じられた。この男性が当事者となっている事故の届け出が70件以上あり、愛知県警は余罪があるとみて調べているという。

TBSが報じたところによると、男性は11月4日、自宅近くの路上を自転車で走っている際にすれ違う乗用車のサイドミラーにわざと体をあてて事故を装い、示談金として現金1万5000円をだまし取った疑いがある。男性は「本当の事故だ」と容疑を否認しているという。

実際、車を運転中に近くをすれ違ったりすり抜けたりする自転車もあり、こうした事案は他人事とは言えなさそうだ。当たり屋行為に遭ったと疑われる場合、車の運転手や同乗者はどのような行動をとるべきだろうか。交通問題に詳しい五十嵐亮弁護士に聞いた。

●警察に通報しないのは危険

ーー当たり屋行為が疑われる自転車から、示談金を払えなどと因縁をつけられた場合、車側はどのような対応をとるべきでしょうか

「まず交通事故が生じた場合、運転者には、道路交通法上、負傷者の救護義務と警察への報告義務があります。

仮に当たり屋行為が疑われる場合であっても、警察に通報しなかったり、負傷者がいるのにその場を立ち去ってしまったりすると、報告義務違反・救護義務違反として処罰される場合がありますので、注意が必要です。

むしろ、当たり屋行為が疑われる場合には、警察に通報したほうがよいといえるでしょう。警察に来てもらった方が、当たり屋からの無理な示談金の要求や詐欺・脅迫等を抑止できるからです」

ーー「警察を呼ぶと面倒だからこの場で済まそう」などと、その場で示談金を求められることもありそうです

「はい、当たり屋の常習犯の場合は、警察を呼ばないように仕向ける人もいると思います。

ただ、本当に事故の被害にあったのであれば、警察に通報した上で、所定の手続きに基づいて保険金の請求をすればよいだけですので、警察に通報しない理由がありません。なので、警察への通報をためらう人は要注意といえるでしょう」

●弁護士を代理人にするのも一手

ーー「保険会社にも言うな」と迫られたらどうしたらいいでしょうか

「警察の場合と同様に、当たり屋と疑われる場合であっても保険会社には連絡しましょう。間違っても、警察にも保険会社にも連絡しないままにその場で示談金を支払ったり、示談金の支払いの約束をしたりしないようにしてください。

保険会社も当たり屋のような保険金詐欺事案には注意を払っていますので、詐欺行為が疑われたり、怪我の治療費や車の修理費を過大に要求してきたりする場合には、適切に対処してくれるはずです。

また、弁護士を代理人にするのもおすすめです。交渉の窓口になってもらうほか、悪質な相手方(大声を出したり、家に押しかけて来たり、会社に連絡するぞと脅して来たり)の場合には、内容証明郵便で、悪質な行為を止めるよう強めに通告することができます」

●強要罪や脅迫罪にあたる可能性も

ーー今回は詐欺罪での逮捕ですが、犯行の態様によっては、こうした当たり屋行為は他にどのような罪に問われる可能性があるでしょうか

「こちらが保険会社を通して示談交渉をすることを求めているにもかかわらず、当たり屋が、保険会社を通さずに直接金銭を要求したり、直接会って話をすることを要求したりする場合には、強要罪に該当する可能性があります。

またその際に、大声をあげたり、『会社に連絡するぞ』などと言ってくる場合には、脅迫罪に該当する可能性もあります。

さらには、相手方が勝手に、交通事故や示談に応じてもらえない等あることないことをSNS等に投稿して不特定多数の人が見ることができるように拡散した場合には、名誉棄損罪に該当する可能性もあります」

●ターゲットにされない安全運転を

ーードライバーにはどのような対策がおすすめでしょうか

当たり屋行為にあってしまった場合は、上で述べたような対応をすることが必要ですが、当たり屋行為の証明は、事故当時の映像等の客観的な証拠がないと難しい場合もあります。

当たり屋行為に限らず、一般の交通事故にもあてはまりますが、対策としては(1)自動車保険に加入する(2)ドライブレコーダーを設置する(3)安全運転を心がける、がおすすめです」

ーーどういうことでしょうか

「自動車保険に加入していないと、弁護士などを代理人として立てない限り、当たり屋行為が疑われる人と直接やり取りすることになりますし、ドライブレコーダーは客観的な証拠として役立ちます。

また、当たり屋行為のターゲットにされないために、適度な車間距離をとりスマホ操作等よそ見運転をしないことはもちろん、見通しの悪い交差点では特に注意し、狭い道はなるべく避けることなど安全運転を心がけることがポイントです」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
五十嵐 亮(いからし・りょう)弁護士
同志社大学法科大学院を修了後、2009年に弁護士登録。新潟県内に5か所と長野・東京に拠点を有する一新総合法律事務所に所属し、企業向けの労務問題や、交通事故をはじめとした事故賠償案件に注力している。
事務所名:弁護士法人一新総合法律事務所 長岡事務所
事務所URL:http://www.n-daiichi-law.gr.jp/