同棲中の彼女が部屋でこっそり……

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へたれ所長・ゆうこ(32)都内某所にある「恋愛研究所」の所長。男女の恋愛話を集め、恋愛心理を研究するのが仕事。生意気なエリカにいつも振り回されて疲弊している。オススメの本は、時短料理のレシピ本。

キラキラ助手・エリカ(25)「恋愛研究所」でゆうこの助手を務めている。ルブタンのハイヒールを履いて港区を闊歩するのが日課。夢は年収1,000万円以上の男と結婚して玉の輿に乗ること。オススメの本は、憧れているモデルのスタイルブック。

今回のゲスト・白田(30)出版社で働く編集者。雑誌編集を経て、現在はライトノベルの部署に所属。オススメの本は、異世界転生モノのライトノベル。

ここは都内某所にある「恋愛研究所」。現代に生きる男女の恋愛話をかき集め、恋愛心理を日々分析・調査している。

街はすっかりクリスマスムード。そんな中やって来たのは、出版社勤務の白田。活字中毒だという白田が「ブックカバーをし忘れたのに気づかず、電車内で官能小説を読んでしまったこと」よりも怖いと話す出来事とは……。

はあ、もうすぐクリスマスね。ねえエリカ、今年のクリスマスは独り身同士で一緒に映画でも……あ、そうだ所長。冒頭からなんですが、大事な報告が。え?

私、彼氏できました。

!!!?

エリカってば、いつの間に彼氏できたのよ!? 前の合コンもハロウィンも空振りだったのに……!所長、「私の日課」忘れていませんか?(※上記プロフィール参照)まさか……港区闊歩で?その通り。痛みや寒さに耐えながら、毎日ヒールを履いて港区を闊歩した甲斐があり、ハイスペ男子と運命の出会いを果たしたんです!まさに執念ね。相手はどんな人なの?経営コンサル会社の社長です。どんなプレゼントをくれるのか、今からクリスマスが楽しみですよ。フフフ。結局そこかよ!大事ですよ。「どんなプレゼントを選ぶか」で、その人の価値観やセンスがわかりますし。そこで自分との相性を見極めて、あとは結婚まっしぐら!エリカが言うと説得力がないのはなぜだろう……。とにかく、クリスマスは彼氏と過ごすので『ファンタビ』はひとりで観てください。くっ、彼氏ができたからって……。いいわ、私は4D映画で魔法を体感してくるんだから!(ちょっとうらやましい)

#13 同棲中の彼女が部屋でこっそり……

それじゃあ「本当にあった怖い恋愛」第13回のゲストを紹介するわね。大手出版社で働く白田さんです。白田さんは雑誌編集を経て、今はライトノベルの編集を担当しているそうよ。よろしくお願いします! ところで、お2人はライトノベルを読んだことがありますか?私はモデルのスタイルブックかセレブ雑誌しか読まないですね。てか、ラノベってオタク向けですよね?ちょっ、エリカ!(笑)。まぁ、独特のタイトルと萌え絵カバーでそう思われがちですが、ライトノベルならではの現実では起こりえない超展開が、砂漠のように乾いたエリカさんの心を潤してくれると思いますよ。えっ、砂漠?何気に私のことディスってる……?それから、難しい言葉や表現をあまり使わないところもポイントですね。週5日働いて土日は干物と化しているエリカさんでも、ライトに読めるのでオススメですよ。絶対「オタク向け」って言ったこと怒ってますよね!?まだ構想段階なんですけど、『とある魔王が異世界に転生したら美少女になっていて人生がイージーモードになった件』というタイトルの作品を作ろうかなと、作家さんと一緒に考えています。タイトル長っ!そして、ここぞとばかりにラノベにありがちな単語を盛り込んでいる!タイトルですでにネタバレしているので、「結婚するのか・しないのか」の結論を急ぎがちなエリカさんにぴったりですよね?オタク向けって言ったこと謝りますから、これ以上私をディスるのやめて!はは、白田流ブラックジョークですよ。おもしろいので、作品化した際にはぜひ読んでくださいね。絶対読まない……。さて、そろそろ本題に入ってもいいですか?あっ、そうですね。お願いします。白田さんの身に起きた怖い恋愛話ですか?いえ、僕の同僚であるK太の話です。K太には、同棲して3年目になる彼女がいたんですけど……。同棲といっても別々の部屋で寝ていたそうですが、特に大きな喧嘩もなく、1年目までは順調に同棲をしていたそうです。なぜ2人は寝室を分けていたのかしら?彼女が保育士でK太と休日がなかなか合わないのと、K太も仕事で帰宅時間が遅くなることが多いので、お互いの睡眠を邪魔しないようにと分けていたそうです。ふ〜ん。編集者だと、校了前は朝方に帰宅もザラですもんね。しかし、順調そうだった2人に異変が……。同棲2年目に入って、彼女が“隠し事”をすることが増えていったそうです。

ごくり。

具体的には、K太に聞こえないよう部屋にこもって誰かとヒソヒソ声で電話をしていたり、飲み会から帰宅した彼女に誰と飲んでいたのか聞いても「記憶がない」とはぐらかしたり、お味噌汁やカレーが急においしくなったり……。最後のは隠し事というか“隠し味”!だけどK太は彼女が好きだったので、問い詰めたりはしなかったそうです。そして同棲3年目が近づいたころ、K太は彼女にプロポーズし、めでたく結婚することに。両家顔合わせや挙式の準備などで忙しく過ごしていたある日、事件が起きたそうです。ついに彼女の“隠し事”が判明するのね……。ある夜、彼女の部屋からスマホのLINE通知音が絶えず鳴って、うるさかったそうです。あいにく彼女は入浴中。そこでK太は、悪いと思いながらも普段は入らない彼女の部屋に入って、通知音を止めようとしました。嫌な予感。スマホに手を伸ばすと、画面には「飯田」の名前が。もちろんK太は飯田なんて彼女の知り合いを知りません。そうこうしている間も飯田からのLINEが何通も届くので、気になったK太は通知に表示されているメッセージを読んでしまいました。するとそこには、「また食事行こうね」「早く会いたいな」など、浮気と思えるようなやりとりがずらりとあったそうです。完全に浮気!!彼女も、部屋を別にしているからって脇が甘すぎ!さすがのK太も彼女に問い詰めたそうですが、「飯田はただの友だち」と言って認めなかったそうです。そこでK太は、彼女の部屋に監視カメラをつけて証拠を得ることに。大胆な方法をとったわね。それ、プライバシーの侵害にならないんですか!?K太はこの監視カメラのデータを証拠にして、彼女から慰謝料をとろうとしていたんです。そして1週間後、監視カメラを確認すると、そこにはばっちり映っていたそうです。彼女の浮気現場が。結婚を控えている身で、よく浮気できるわね。こちとら結婚したくてもできないっていうのに、許すまじ!怒りの矛先そこ!?彼女の“隠し事”はここからです。浮気が隠し事じゃないんですか?ちがいます。彼女が隠していたのは“人数”だったんです。彼女は日替わりで男を部屋に連れ込んでいたんです。その数、なんと9人……!9人って、野球チームでも作る気だったの!?もしかして、浮気相手の「飯田」の正体はひとりじゃなくて9人?そうです。浮気相手全員を「飯田」という名前で登録していたので、LINEの通知音が鳴り止まなかったみたいです。婚約中の彼女が浮気していた事実だけでもつらいのに、相手が9人もいたなんて、立ち直れない……。全員同じ名前で登録して、どうやって会話を成立させていたんでしょうね。たしかに……。ちなみに、その後の2人は?K太は弁護士をつけて、婚約を解消したそうです。それから仕事に身が入らず、出版社を辞めてしばらく落ち込んでいましたが、彼女との話をライトノベル化したら予想外に大ヒットして、今は人気ライトノベル作家として活躍しています。すごい、それこそまさにライトノベルのような超展開。彼のデビュー作は浮気や婚約解消の物語なので、人の結婚や出産話を素直に喜べないエリカさんにオススメです。冒頭でオタクって言ったこと、まだ怒ってるんですか!? 謝るからもう許してください(泣)。な〜んて、白田流ブラックジョークですよ。この人、今日イチで怖い! ジョークが黒すぎて笑えない!!エリカをここまで怖がらせるなんて……。じゃあ、用事も済んだので僕は帰ります。失礼します。お話ありがとうございました(ほっ、嵐が去った……)。イヤアアアアアア!!どうしたの、エリカ!?あの人、玄関にオススメのライトノベルを山ほど置いていってる! もうラノベはこりごりなのに〜!書きかけのプロットも置いてあるわね。なになに、『とある港区女子が異世界に転生したら現世の悪行のせいで呪われた件』……これ、もしかしてエリカのこと?

勝手に呪うな!!

本当にあった怖い恋愛・13「同棲中の彼女が部屋でこっそり……」
恐怖レベル★★★☆☆

▼今までの「本当にあった怖い恋愛」
・同棲中の彼氏が夜な夜な……
・入籍前夜、突然の事件
・浮気がバレた彼女のとった行動とは……

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(文:パンジー薫、イラスト:あべさん)

※登場人物の設定はすべてフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません