iPhone関税率25%増までアップルは中国生産を止めない? もはや生産拠点移転は難しいとの報道
米中貿易戦争の着地点が見えないなか、動静が注目される企業の一社となっているアップルですが、同社はiPhoneなどに課される関税が25%まで引き上げられれば、中国外への生産拠点のシフトを検討する。しかし逆に、それ以下の関税率であれば中国生産を維持し続けるだろう――との観測が報じられています。

11月末に米ドナルド・トランプ大統領が中国から輸入されるiPhoneやノートPCにも関税を課す可能性があると指摘し、「例えば10%の関税なら、消費者は十分耐えられるだろう」と発言していました。今回この観測を紹介した米Bloombergの報道によれば、アップルには中国から生産拠点を移転しにくい事情がある、と分析しています。アップルは長年に渡り、iPhoneからiPad、Macにいたるまで中国を生産拠点として利用しています。同社のサプライチェーンは現在、何百もの企業に及んでおり、iPhoneの組み立てもFoxconnやPegatronといった中国に工場を持つ企業に大部分が任されています。

アップルが今回の問題に対して慎重なのは、こうした企業を支えている広い生産ネットワークの一部を中国の外に移すのは難しく、それゆえに様子見をしているとのこと。Bloombergの情報筋によれば、同社のパートナー企業側は、iPhone以外の製品については他の地域での生産を打診しているものの、しかしアップル側は今のところ「そうした動きをする必要がない」と指示していると伝えられています。

しかしBloombergは、米中貿易交渉が激化してアップル製品に課される関税率が高まれば、方針が変更される可能性があると指摘。すでにiPhoneの最新モデルが消費者を惹き付けることができなかった兆候が見られるなかで、関税の大幅な引き上げの直撃を耐える余裕がないからとされています。

市場調査会社RBCのアナリストによれば、もしもアップルが10%の関税コストを(製品価格に転嫁せず)吸収すれば、EPS(1株あたりの利益)が1ドル低下する可能性があるとのこと。さらに関税が25%になれば、EPSが約2.50ドル下落するかもしれないと分析しています。

Bloombergのデータによるとアップルの平均EPSは13.32ドルであり、この点では相当なダメージになると予想されます。

合わせて米9to5Macは、アップル側はiPhoneの組み立て拠点の一部をインドなどに移しているものの、その全てを中国外に移すことは難題だ、と解説しています。

たとえば中国にて生産拠点となっている深センは中国最初の経済特区として設立され、ゆるやかな規制と寛大な税制優遇措置によって現地企業への国外からの投資を促進してきました。こうした法的・税制的な環境の整備は、地理的な利点と同じぐらい重みを持っています。

そして深セン特区は1980年に設立されてから、既に30数年が経過しています。つまり、巨大なサプライヤーと下請けのネットワークが成長するために、それほどの歳月がかかったということ。それらの大部分は深センと直結しており、それゆえに組み立てのための部品を運搬する物流も簡単となっている......といった事情から、一朝一夕に拠点は移動できないと述べられています。

トランプ大統領はアップルに対して「関税をゼロにしたいならアメリカに工場を作れ」とツイートしていましたが、ことはそう簡単には運ばないようです。