競技に真剣に挑む女性アスリートの中には、無月経や摂食障害、疲労骨折に苦しめられている人もいるようです(写真はイメージです) Photo:PIXTA

写真拡大

元女子マラソン選手の万引き
「摂食障害」が背景に

 執行猶予中にスーパーでお菓子を盗み、窃盗の罪に問われていた元女子マラソン選手・原裕美子被告に対して12月3日、前橋地裁太田支部で「懲役1年、執行猶予4年(保護観察付き)」の判決が言い渡された。

 万引きの背景に<摂食障害>があり、それがクレプトマニア(窃盗症、病的窃盗)と呼ばれる精神疾患を引き起こす要因となっていた。クレプトマニアは、「お金がないから盗む」のではなく、「買うお金があるのに盗む」「盗む品物に興味がないのに盗む」といった特徴があるという。

 摂食障害は、ここ数年、女子スポーツ選手の間でようやく問題視され、理解の普及・啓蒙、そして対策が始まっているが、まだ十分とはいえない。

 体重が増えると競技力に影響が出ると信じられている競技では、「太ったら負ける」「やせなければ勝てない」という思い込みや強迫観念が常識になっている。監督やコーチは厳しく減量を求め、節制できない選手には罵詈雑言を浴びせる光景が珍しくない。

 今年はスポーツ界のパワハラが多数告発されたが、暴力とはまた別の意味で、人間の尊厳に関わる次元のものでありながら、平気で食事制限を強要する、深刻なパワーハラスメントのひとつと理解すべきだろう。

 この問題を30年以上前から認識し、いち早く改善に取り組んできたのは、至学館大学の谷岡郁子学長とスタッフたちだ。

「体脂肪率8%を切れば生理が止まる」
レスリングの強豪・至学館大学の対策

「私が大学に赴任したとき、スポーツの強い女子大だと聞いてきましたが、来てみるとケガ人と生理の止まった学生がたくさんいました。およそ健全とはいえない。勝つためなら、選手のその後の人生など深く考えない古いタイプの指導者が、時には手を上げることもいとわず、高圧的に自分の考えを強いる体制が当たり前でした。私はその状況をなんとか改善して、女性の健康に配慮した新しいスポーツの常識や環境を日本に定着させたいと取り組んできました。その実証のために創った新しい部活動が女子レスリングでした」

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)