12月8日、中国が月の裏側着陸のための月面探査機打ち上げに世界で初めて成功した。国家戦略「中国製造2025」の一環で、資源開発を名目に月面基地を創り、軍事的に拡張して、宇宙制覇の根拠地にすることが狙いだ。

中国が世界で初めて月の裏側に月面探査機を軟着陸

12月8日、北京時間午前2時23分(日本時間午前3時23分)、四川省にある西昌人工衛星発射センターから、運搬用ロケットである長征3号乙による嫦娥(じょうが)4号(月面探査機)を打ち上げた。月の裏側を探査するための探査機としては、世界初めてとなる。
 
打ち上げから26日後には月の裏側に軟着陸する予定だ。
 
地球からは月の片面だけしか見えていなくて、それを「表側」と称すれば、反対側の「裏側」には地球から直接信号を送ることができないため、中国は今年5月、通信を中継するための人工衛星「鵲(しゃく)橋号」を打ち上げている。
 
これらの計画は中国の国家戦略「中国製造2025」とともに出された「2016中国宇宙白書」に則って実行されたものであり、中国は着々と月面基地を作ることに向けて動いてきた。
 
月の裏側は、独特の電磁場環境にあり、低周波無線の実験などに適している。中国の政府系メディアは、人類未踏の宇宙の神秘を解明する事業に入ったと報道している。
 
中国の国家国防科技工業局と国家航天局(宇宙局)は、嫦娥4号の使命には、以下の二つがあると述べている。
  
1.月・中継通信衛星を発射することによって、世界で最初の「地球と月」の「ラグランジュ点L2」における測定と中継通信を試みること。(筆者注:「ラグランジュ点L2」というのは二つの天体があった時の力の相互作用で、引力などにより一般に楕円に近い形を描く。二体問題として計算したときに「L2」と称する。実際には「地球と月」以外に他の天体があるので、多体問題として計算するしかないが、多体問題の解答は出せないので、二体問題として漸近的解答を求めるべく測定を試みるのだろう。今年5月に打ち上げられた中継通信衛星「鵲橋号」は、すでに地球と月のラグランジュ点の軌道を回っている。)
  
2.月面軟着陸機や「ローバー」の実験をすること。(筆者注:「ローバー」というのは、月面を動き回る車のことで、軟着陸に成功したとしても、一か所にいたのでは観測範囲が限られ、特に今回は無人探査機なので、宇宙飛行士が月面を歩き回る段階ではない。そこで中国語では「巡視器」と呼ばれているローバーを用いて、中性子輻射量など、さまざまな観測をする。)
 
オランダ、ドイツ、スウェーデン、サウジアラビアなどが、探査実験に参加している。

遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)