別に、結婚だけが女の幸せではない。

自ら望んで独身を貫くのなら、何も問題はない。

しかし実際には「結婚したいのに、結婚できない」と嘆く女たちが数多く存在し、彼女たちは今日も、東京の熾烈な婚活市場で戦っているのである。

これまで、自分にも相手にも厳しい“ストイックな36歳独身女”や、アイドルに恋する女、3人の男をキープする女、場末感漂う35歳、家が好きすぎる女、独身貴族の女社長、胸キュン希望の38歳、ペットを飼う女などを紹介した。

さて、今週は…?




【今週の結婚できない女】

名前:真那
年齢:38歳
職業:外資系コンサルティングファーム
住居:南麻布


“許されない恋”にハマった女・真那


振り返ってみれば、一体私は彼の何を信じていたのか…疑問でしかないですね。

あの頃の私は完全に、“許されない恋”とやらに酔っていたのでしょう。醒めた今となれば失笑ものです。バカな女だって言われても仕方ない。

だって…結果だけを言えば23歳から30歳まで、若い肉体と色香が共存する、女にとって最高の時期を7年間も無駄にしたんですから。

それも妻子のある、18歳も年上の男に。

しかもね、何が恐ろしいかって…一度手を出してしまったら、その中毒性にハマってしまうこと。

不倫ってどうやらクセになるみたい。

私はさすがに同じ過ちを繰り返すことはしないけれど、30歳でようやくきっぱり関係を清算したあとも結局、38歳の今までまともに恋愛できていません。

正直、このまま一生彼を超える人には出会えない気がしてる。

…自業自得?ええ、その通りね。

でもそうやって切り捨てる前に、ぜひ私の話を聞いてほしい。

-私は絶対、不倫なんてしない-

そんな風に思っているあなたこそ危ないの。私だって、不倫にハマるなんて常識のない、弱くて流されやすい女だけだと思ってた。

だけど人生に絶対なんてない。予期せぬ「まさか」が起きてしまうのが、恋愛なの。


“許されない恋”にハマり7年を無駄にした女・真那の言い分とは?


私が道を踏み外した、些細な理由


妻子持ちの男・藤田との出会いはいわゆるお食事会でした。

それほど親しくもなかった同期に、当日急に声をかけられて参加したのを覚えてる。まあ、確実に人数合わせでしょうね。

当時23歳だった私には1歳年上の彼氏がいましたが、ザ・日系企業の電子部品メーカーで働く彼とは価値観やライフスタイルがどんどん合わなくなっていて。ただ良くも悪くも平和な付き合いで、別れを決意するような事件が起きないものだからずるずると関係を続けていた…というような状態でした。

確か4-4のお食事会で、幹事の子の趣味だったのか男性は全員、かなり年上。

藤田が最年長の41歳でしたが、他の3人も同年代だったはずです。

その場では皆独身だと言っていましたが、真偽は不明。…実際、藤田も妻子持ちでしたしね。

とはいえ彼も場に合わせて嘘をついていただけで、すぐに事実を話してくれました。

お食事会のあとすぐ個別に食事に誘われたんですが、その時にはっきり言われたんです。「実は結婚していて、もう中学生の娘がいる」と。

それを聞いた時の気持ち…?

もう昔のことで記憶があやふやですが、「そうなんだ」くらいの感想だった気がします。

既婚者がお食事会に紛れていることなんてよくある話だし、いちいち目くじらを立てるまでもない。

マンネリ彼氏に飽きている私が刺激を求めるのと同じで、藤田は若い私で息抜きしてるんだなー、くらいにしか思いませんでした。

それから定期的に食事に誘われるようになったのですが、某外資系投資銀行でやり手と噂される彼が連れていってくれるのは、当時の私にとってかなり高級で気分の上がる店。

20歳そこそこの私がわかりやすく憧れるような『ジョエル・ロブション』『ロオジエ』『トゥールダルジャン』など有名なグランメゾンは一通り彼と制覇しました。

紳士的な立ち居振る舞いで手慣れたエスコートをされるのは、自分がまるで“極上の女”にでもなったようで気分がよく、断る理由が見当たらなかった。

「彼氏がいるのに」と言われるかもしれませんが、たまに美味しいご飯をご馳走になるくらい別にいいじゃないですか。

実際、最初の数ヶ月、藤田は私に一切の手出しをしてきませんでした。…今から思えば、これこそ既婚者の余裕だったのかもしれませんが。

誤解されないように…私は別に、高級ディナーにつられていたわけではないんです。私自身もそれなりに稼いでいますし、何も贅沢がしたくて誘いに乗ったわけじゃない。

藤田とデートを重ねたのは、彼の話はいつも面白く私の好奇心を刺激したし、度々くれる仕事へのアドバイスがとにかく的確だったから。

様々な相談ごとを打ち明けるうち、同年代の前だとどうしても自分を大きく見せようと肩肘張ってしまう私も、藤田の前では素直に弱みを見せられるようになっていました。

よくある不倫ドラマみたいに強引に押されてついとか、稲妻に打たれたように恋に落ちたとか、淋しさや欲望に負けて、とか。そういう激情に流されたわけじゃないんです。

まるで父親のような安心感に、つい気を抜いてしまった。

誰だって、雨予報を知っているのに傘を忘れてしまう日があるでしょう。まさにそんな感じ。

責め立てられるような経緯も理由もない。強いて言えば、魔が差したとでもいうのでしょうか。

いつも通り食事を共にしたある夜。ちょっとした気の緩みとほんの些細な判断ミスで、私は妻子持ちの男と関係を持ってしまったんです。


些細なきっかけで道を踏み外した真那が、7年もの月日を無駄にしてしまった理由とは?


長すぎた白昼夢


7年もの長い月日の間に、もちろん私だって何度も別れようとしました。「もう終わりにしましょう」と何度口にしたことか。

けれども結局は私の方が1ヶ月と離れていられなくて、気づけばまた彼とホテルで待ち合わせてしまう。

思うに、私のようにずるずると不倫関係を続けてしまう女って、おそらくプライドが高いんです。自分にかなり自信もあって、これまでの人生、欲しいものは大体サクッと手に入れてきた。

だから諦めきれないんですよね。自分が1番じゃないことを認められない。

愛されているのは自分だ。離婚してくれないのは子どものためで、決して私より奥さんを優先しているわけではない。負けたくないから、そんな風に必死で思い込んでしまうの。

「離婚するつもりだから、娘が成人するまで待って欲しい」

確か29歳の時だったと思います。次々に結婚していく友人たちへの焦りから、私がこれまでになく感情を爆発させたとき…藤田はついにそんなセリフまで口にしました。

笑っちゃうほどありきたりな不倫男の常套句なのに、私ってば、何を考えたと思います?

彼の娘は、当時19歳。…あと1年なら待てる。そう思ったの。

もはや正常な思考回路を失っていたとしか考えられない。

だいたい、男が女を最も強く欲するのは最初に関係を持つまでと決まっている。その本能的な欲求は、回数と月日が経つほど薄れていくものでしょう。

そういう欲望とは別に、例えば藤田が私との絆を大切に思い、未来を共にしたいと本気で考えていたとしても...それなら決断に5年も6年も時間をかけるわけがない。仕事のできる、切れ者の彼が。

冷静に考えればこんなにも簡単にわかるのに、私ってば、催眠術にでもかかっていたのかもしれないわ。

結局その翌年、娘が成人をしたあとも彼が離婚することはありませんでした。それでようやく、私も長い白昼夢から目が覚めたわけですが…。




そんな私ももう、今年38歳。

藤田と縁を切ってから早いもので8年が経ち、その間に何人かの男性とお付き合いもしましたが、藤田ほど頼り甲斐があり包容力のある男性には出会えていません。

…当たり前ですね。

藤田には家庭があったから、私に弱いところも汚いところも見せる必要がなかった。だらしないところやかっこ悪いところは本妻の前で発散し、私の前では常にかっこいい俺を演じていられた。

そう、頭ではわかっているんです。

ただ20代のほとんどを藤田のような男性と過ごしてしまった私の目には、他のどの男も頼りなく、子どもっぽく映る。そればっかりはもう、どうしようもないんです。

…だからこそ、言わせてください。

もしずるずると何年も不倫に溺れている若いお嬢さんがいるならば…悪いことは言わない、クセになる前に今すぐ別れなさい。

略奪愛をする覚悟があるというならば止めはしませんけど、どうか私の二の舞を演じることだけはないように。

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